マニュアル化すると言うことは、マニュアルを作成するだけでなく、運用する
ために、その内容や、マニュアルを守ることの社員教育、マニュアルの維持管理
までを含む、システムを構築しなければ意味がありません。
工場監査・工程監査のポイント、新製品立ち上げ手順など、品質管理のポイントを詳しく解説します
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中国でも、マックやケンタッキーが成り立っているのだから、マニュアル化は決して
不可能ではないのですが、いかに「システム化」を行うかがポイントになります。
(日本国内でも同じことが言えます)
しかし、日本人的な感覚で、曖昧な表現の記述は絶対に避けなければいけません。
日本で使用して実績のあるマニュアルをそのまま翻訳して現地で使用することは、やめる
べきです。
全く新しく作成するつもりで、見直しが必要です。
・作成は、現地採用の管理層レベルの協力を得ること
・現地作業者のレベルに合わせて、できる限り分かり易い表現にすること
・判断基準はできるだけ定量化すること
・できるだけ、写真、図表も用いて分かり易くすること
・理解度を定期的に確認すること(テスト実施)
1.業務マニュアルの意義
職場でマニュアルが必要な理由として
(1)業務を確実に行うための手順や内容を共有・標準化する
(2)誰でも業務を行えるよう手順を分かり易く説明する
(2)業務の重複やムダを省き効率化を図る
(3)トラブル、クレームの見える化、処理方法、責任者を明確にする
業務マニュアルの作成は、業務品質の向上やスピードアップ、頻度や難易度が
高い業務の内容をルール化することに大きな意義があります。
2.使いやすいマニュアルの6つのポイント
せっかく苦労して作成するマニュアルは、使いやすくなければなりません。
使いやすいマニュアルとは、以下の6つの要件を満たしたものと考えます。
(1)仕事の全体像が把握できること
作業を効率的に進めるためには、仕事の全体像を把握している必要があります。
仕事の全体像とは、
1.仕事の目的(仕事の位置づけ)
2.仕事全体の流れ
3.作業工程、作業手順
4.求められる水準(作成時間、達成度、品質)などです。
新人や若手でもわかるマニュアルにするために、全体像の記載が必要です。
新人や若手は仕事の意味を理解することにより、不安なく、前向きに行動する
ことができます。加えて、職場においても、大きく間違った行動を取り、周囲
に迷惑がかかることが少なくなります。
更に、ベテランに仕事が集中してしまうことを防ぐことができます。
(2)仕事の判断基準が示されていること
判断基準(判断のモノサシ)を業務マニュアルに示しておくと、新人や若手
でも判断に迷うことがありません。例えば、「整理整頓が重要な仕事」につ
いていえば、単に、この仕事には「整理整頓が重要」と記述するのは不十分
です。
このような場合の判断基準は、例えば「整理整頓;仕事を早く終わらせ、書
類紛失によるトラブルを防止する」というレベルで示すことが必要です。
こうすれば、具体的な行動として、「毎日帰る際は、机上だけでなく机の中
まで整理整頓する」が導かれやすくなります。
(3)到達目標が数値や明白な行動レベルで示されていること
「到達目標」を数値や行動レベルで示す理由は、仕事の品質を高いレベルで
一定に保つためです。長い時間をかければよいものでもないですし、「良い
仕事をしろ」と言っても、そもそも仕事を知らない人には、よく分かりません。
何をしたら良いのかを行動レベルで示して初めて、目標が理解されると考え
るべきです。
また、漠然としたものでなく、数値を使って目標を立てるとより効果的です。
具体的には、当該の仕事の流れを踏まえて書きます。すでにフロー図があれ
ば、それを活用して加筆します。
(4)実務の確認点が「チェックリスト」で示されていること
次は、ミス・トラブル削減を目的として、チェックリストを作成します。
チェックリストにより、仕事の手順を標準化すれば、業務品質を安定させる
ことが可能です。
ミス防止のため、チェック項目をうんざりするぐらい記載する事がありますが
不思議ですが、ミスは減らず、またさらなるミスを生む「ミスの悪循環」に
巻き込まれることが往々にして良くあります。チェック項目は、担当者の責任
項目として、「確実にチェックすること」とすべきです。
(5)ノウハウ・コツなども記載していること
ノウハウ・コツは、一人で考えるより、ペアワークやグループワークで話し合
いながら意見を交換したり、共有するのが有効です。また、例外処理や職務遂
行のためのノウハウ・コツなどもマニュアルには欠かせません。文字化しにく
い暗黙知を極力文字化しておきます。
暗黙知をマニュアルに記載し、積み重ねることによって、他社がまねできない
その企業独自のノウハウとして差別化につながるのです。
(6)クレーム・トラブルを「見える化」していること
クレーム・トラブル事例などは、「事例」を記載し、印象強く「見える化」
することで組織として共有します。できれば、「ヒヤリ・ハット」したもの
まで記載できれば、申し分ありません(最近半年間に表面化したトラブルや
クレームなど)。
3.業務マニュアル作成手順
以上の業務マニュアルですが、以下のような手順で作成すると良いでしょう。
(1)業務を洗い出す
マニュアルを整備するためには、会社の中で、どんな業務が行なわれている
かがわからない状況では作成はできません。そこで、まず業務調査を行ない
各部門でどんな業務が行なわれているかを確認します。
業務調査のやり方には、各部門の担当者に担当している業務を書き出してもら
う方法と、マニュアル作成担当者がヒアリングを実施する方法が考えられます。
(2)マニュアル化する業務を抽出する
業務調査を行い、業務一覧表にでまとめておきます。その中でトラブルや
ミスが頻発している業務であるとか、作業効率が悪い業務などから優先的に
マニュアル化を行います。
(3)マニュアルを体系的する
抽出し、優先度付けされた業務一覧表をもとに、マニュアル化すべき業務を
抽出し、これを体系的に整理します。どの業務に、どんなマニュアルを作成
するか、マニュアルの全体像を把握しやすくします。
そして、管理コードを付与し、管理を容易化します。このとき、コード化
するにあたってのルールを取り決めておきます。一般的に「マニュアルの
種別」「作成年月」「マニュアルの連番」などによってコード化すること
が多いといえます。
(4)フォーマットを標準化する
マニュアルの様式について一定のフォームを作成しておき、このフォームの
なかでレイアウトを行います。誰もが使いやすいマニュアルは、
①業務の全体像がわかること
②業務の目的がわかること
③何をこなせばよいのかがわかりやすい
④チェックリストで業務の確認ができる
⑤誰にでもわかる言葉で書かれていること
⑥トラブルの起こりやすい部分がわかりやすい
などが網羅されたものです。
(5)記載内容の検討
マニュアルは一般的に、以下の項目を記載します
①目的
②適用範囲
③用語の解説
④関連規格
⑤内容
各業務の項目、作業手順・方法について
・Plan(計画、目標)
・DO(5W1H、責任部門、実施時期)
・Check(実施結果の記録、評価)
・Action(改善、次回計画への反映)
⑥発行期日、改訂期日・内容、担当者、承認者
(6)教育・導入・定着化
完成したマニュアルは、印刷または電子化して共通ファイルに入れて閲覧が
容易にできるようにします。そして、導入に先立って関係部門に教育を実施
します。業務を行う上で、疑問が生じたら、すぐにマニュアルを見て、マニ
ュアル通りに業務を行うようにし、定着を図ります。
(7)運用・見直し
関係者がマニュアル通りに業務を行うことを徹底することが基本ですが、マ
ニュアル通りに作業すると効率が低下したり、品質上のトラブルが発生しやす
くなるようであれば、マニュアルを変更する必要があります。
このように、業務の効率化、品質向上につながるように、常にマニュアルを
見直し、業務内容と一致させておくことが重要な作業となります。
最後に
マニュアルづくりには、相当の労力が必要とされます。一所懸命に作り上げ
ても、できた時点から内容の陳腐化が始まります。そして
「マニュアル通り作業する ⇒ 不具合の発見 ⇒ マニュアルの修正 ⇒
マニュアル通り作業する」の繰り返しが重要になりますが、このサイクルを
定着させることこそ至難の業なのです。