トレーサビリティー管理と4M管理:事例・進め方の紹介・製造業の体系的4M変化点管理

4M管理は、特に多品種少量受注生産工場において、管理の重要ポイントとなっています。
トレーサビリティ(追跡可能性)管理について、4M管理をどのように取り入れるのかを
解説します。





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1.トレーサビリティー管理とは
不良が起こった時だけではなく、過去の管理表を見れば「どんな変化点がいつ
発生したか」をすぐに把握できる管理方法です。

トレーサビリティ管理は、製品製造における原材料使用実績、製造工程実績
検査実績等を蓄積し、その製品の原材料ロット、工程の処理実績を追跡し、
同じ原材料の使用または同じ時期に工程処理された製品の把握を可能とする
ことです。

最近の品質意識の高まりにより、トレーサビリティー管理の要求が増しています。
自動車部品、医薬品、医療機器、加工食品など、人の健康や命に係わる製品や
部品において、一つ一つ異常がないか検査を行ったり、部品一つ一つにロット
番号を付与し、記録する管理が行われています。

トレーサビリティー管理は、実際の作業を行っている担当者にとって、かなり
面倒な作業となります。

大手においては、大掛かりなトレーサビリティー管理システムや自動化設備を
導入して機械がこの役目を担っていますが、中小企業では、人手に頼っている
ために、ポカミスも起きやすく、人件費も掛かります。

いかにお金を掛けずに、管理するか?が大きな課題となっており、中小ならでは
の管理体制確立が望まれます。

2.トレーサビリティー管理システム構築手順
まず受け入れから出荷までの「ものの流れ」を整理します。そして、「識別
と対応づけの原則」を満たすルールを具体的に考えていきます。

(1)ものの流れの整理
トレーサビリティを確立しようとする範囲において、受け入れから出荷に至る
ものの流れをまず図示してみます。これにより、その流れに投入されたものと
産出されるものとの関係を把握することができます。
この図にもとづいて、各段階で、
・どのような単位で製品を識別するのがよいか
・どの単位とどの単位とを対応づけるように工程をコントロールするのがよいか
・対応づけの記録がしやすいか
を検討します。

(2)識別単位の定義
製品や材料の識別単位は、工場で1回の操業により大量の製品が生産される
ときは、その1回の操業によって産出される製品全体を1つのロットとし、
全ての製品に同一の「ロット番号」を与えることが考えられます。
1回の操業のなかでも、ラインや時間の単位で区切って、別のロットにする
こともできます。場合によっては、同じ製品であっても、1つ1つの製品に
固有の記号を与えることもあります。

識別単位の大きさは追跡の精度に関係するため、識別単位が適切に設定され
ていることによって、効果的な追跡が可能になります。

ロットを小さくすれば、事故が生じたときに回収する製品の範囲を絞ることが
でき、原因究明も容易になります。しかし、ロットを小さくするほど、分別
管理のための費用は高まります。そこで、費用と効果のバランスを考えて、
ロット(識別単位)を定義することが必要です。

(3)識別記号を付与する
識別単位を特定する記号を「識別記号」といい、識別単位1つ1つに対して
割り当てる識別記号のルールを定めます。識別記号は、重複しないことが重
要です。

複数の取引先から製品を受け入れる場合は、各取引先の製品の識別記号のル
ールが統一されていれば、受け入れた製品の識別記号の記録や管理がしやす
くなります。そこで、関係者間での合意が得られるならば、識別記号のルー
ルを統一することが望まれます。

(4)分別管理
意図しないものの混合や混入が発生しないよう、工程のコントロールの仕方
を定めます。
具体的な分別管理の方法としては、ラインを用いた連続生産の場合、複数の
ラインがあるならば製品によって別々のラインを使ったり、ラインを使う時
間帯を分けたり、仕切り棒で識別単位が切り替わるところを分けるなどの
方法があります。 あまり大きく現状を変えずに、対応できるよう工夫する
ことが大切です。

(5)川上~川下工程との関連づけ
原材料が入荷したら、その識別記号と、その仕入先と仕入日時を記録します。
これにより、一歩川上へ遡及できるようになります。
同様に、製品を発送する際に、その製品の識別記号と、その販売先と発送日
時を記録します。これにより、一歩川下へ追跡できるようになります。
この両方が適切に記録されるように、対応づける方法(ルール)と、それを
記録する様式を定めることが必要です。

(6)内部トレーサビリティーの確保
内部トレーサビリティとは、工場内のトレーサビリティです。
加工業者であれば、「どの原料を使って、どの製品をつくったか」が、工程
の記録によってわかるようにします。あらかじめ、原料の識別単位とそれか
らできる半製品、さらに半製品と最終製品の識別単位とを対応づける方法
(ルール)を決めておきます。そして、それらを記録する様式を決めておき
ます。

対応づけの方法は、製品の仕様や、生産方法(連続生産、バッチ生産など)に
よっても異なります。あまり大きく現状を変えずに、必要な改善によって原則
に沿えるように工夫することが望まれます。

(7)識別企業の付与方法
対象製品に識別記号を添付する方法を決めます。
たとえば、スタンプで番号を印す、ラベルに文字を書いて貼り付ける、インク
を噴きつけて印字する、電子タグをつけるなど、さまざまな方法がありますが
そのなかから適した添付方法を決める必要があります。

(8)情報の記録・伝達媒体
ものを受け取ったり、原料として用いたりする際、また製品を製造して新しい
識別単位を形成したり、製品を出荷する際に、識別記号を、読みとって記録す
ることが必要になります。それをどの媒体に記録するのかを決めます。

たとえば、原料の現品に表示された識別記号を目視し、手書きで記録したり、
付与されたバーコードをハンディターミナルで読みとって、パソコンに転送し
保存したりするなどさまざまな方法があります。

また、企業の内部情報として、その製品が製造工程でどのような履歴をもって
いるのか、たとえば、修理履歴、検査を強化して実施したなどが後で追跡可能と
なるよう事実を記録しておきます。(4M変更の記録)

(9)手順の確立
ものの流れの整理とともに、記録され、伝達される情報の流れを整理します。
そのうえで、ものに付与された情報の読みとりや記録、新しく生まれた情報の
記録、それらのラベルや送り状への出力・印刷の方法と手順を検討します。

ラベルや送り状・帳票書類は現状のものを活かすことができれば、コストア
ップを抑えることにつながります。そして、上記の検討し定めた方法や様式を
実現する手順を定めます。

手順書においては、いつ、どこで、だれが、どのような作業を行うかを明確に
します。具体的には、原料や製品の識別と対応づけのための一連の作業、記
録すべき情報項目、記録の方法、記録する媒体、保存方法と保存期間などの項
目を記した手順書を作成することになります。


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 合同会社高崎ものづくり技術研究所代表の濱田です。
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