これからの時代、従来の外注関係からの脱皮を図り、パートナーとして「連携」
していくことが、儲かる工場の条件の一つとなっています。
工場監査・工程監査のポイント、新製品立ち上げ手順など、品質管理のポイントを詳しく解説します
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1.変化した外注の目的
従来からの発注側企業と受注側企業の下請け構造における問題は、とかく
価格を安くするため、ぎりぎりまで製品価格を安くすることで成り立って
来ました。これでは、二次、三次の下請け企業は成り立たなくなります。
また、生産量の変動、生産品種の変動を社内で吸収しきれない場合は
外注工場を上手に使って対応する手法が取られました。しかし今は、できる
だけ、外注に出さずに、中でできる仕事をできるだけ確保しようというのが
主流になって来ました。
そこで、製品の幅を広げる、あるいは専門性を追求するために、その優れた
技術を活用する目的で企業同士が連携し、パートナーとして協力関係を構築
する考え方が強まっています。
2.企業連携の課題
中小企業が活力を取り戻すためには、得意分野を持つ個々の中小企業が連携し
不足する経営資源を補い、競争力のある新たな製品・技術の開発やサービスの
提供を行うことが必要とされます。
しかし、日本の製造企業は、どうしても内部指向が強く、新製品開発・製造に
於いて自社技術を使い、内部で開発し、販売するなど自社内で完結する発想が
根強く残っており、外部に対しては従来通りの外注的な扱いで取引を行う方法
が取られています。
内部リソースだけでは開発が難しいにも関わらず自社技術や人材にこだわり
内部リソース中心に考えるために、おのずと実現可能の幅、レベルに制限が
加えられてしまうのです。
3.連携の形態
ただ、「連携」と一口で言っても実現はなかなか難しい問題もあります。
そこで、各種連携活動の事例のタイプとその特徴について、整理してみると
以下のようになります。
①開発・生産型企業間連携
このタイプは、主に新製品の開発段階及び生産段階までのプロセスにおいて、
他企業と連携しているケース。この開発・生産型企業間連携の特徴は、特に
企画・開発・試作・生産の段階において異業種交流や企業間提携によって
自社に不足している経営資源を補完している点にある。
②開発・試作型産学官連携
このタイプは、当面の活動として新分野を対象にした研究開発・試作を念頭に
おいた産学官連携であり、開発・試作面で外部資源を有効に活用しているケース
である。
この開発・試作型産学官連携の特徴は、企画・開発の段階において大学や研究
機関等との連携により、研究開発に重点をおいている点にある。
③ビジネス発展型産学官連携
このタイプは、活動当初の意図に関わりなく、連携活動が結果的に企画・開発・試作
・生産・販売の一連のビジネスプロセス全体を含む活動へと発展するケースであり、
その一連の活動が主に産学官連携によって実践されているような場合である。
このビジネス発展型産学官連携の特徴は、すべての事業段階において必要な連携を
行うことによって、連携活動がビジネスへとつながっている点にある。
④販売機能補完型連携
このタイプは、製品の販売段階で企業間連携や公的機関を活用しているケースである。
この販売機能補完型連携の特徴は、企画・開発・試作・生産の段階よりも販売段階
での外部資源活用に重点を置くといった点にある。
⑤国際ビジネス型連携
このタイプは、産学官連携や企業間連携を国際的に展開しているケースである。この
国際ビジネス型連携の特徴は、国内の外部資源だけでなく中国等の海外の大学及び
企業の資源を活用している点にあり、今回の事例では、海外の大学等との産学連携に
より市場がグローバルに展開するケース。
4.連携が成立する要件
中小製造業の活性化を目的する効果的な『連携』活動を実現するための基本要件
を整理すると以下のようになります。
①役割分担の明確化
連携活動が成功するためには、その活動プロセスにおいて、連携活動の構成員
すなわち、中小企業、大学、研究機関、支援機関等々が、フェーズ毎に対応した
役割分担を明確にすることが重要である。
②ネットワークビジネス・ネットワークインフラの存在
異業種交流や産学官連携といった連携活動を下支えするネットワークビジネス
やネットワークインフラが当該地域に存在しているか否かが重要である。
③キーパーソンの存在
外部資源のネットワークによる連携活動を成功させるためには、最終的には
その活動を担うキーパーソンの存在が重要となる。さらに、このキーパーソン
には、少なくとも以下のような2つのタイプのキーパーソンが必要である。
・クリエーター型キーパーソンの存在
多様なネットワークによる連携活動では、当初の企画(もくろみ)が予定
どおりに進むとは限らない。むしろ、予想もしなかったような事態が発生
する可能性が高い。よって、連携活動の様々な状況変化に対して果敢に挑戦
し、連携活動そのものに常にイノベーション(革新性)を促すような刺激
を与えてくれるクリエーター型キーパーソンソンの存在が重要となる。
・コーディネーター型キーパーソンの存在
多様なネットワークによる連携活動では、産学官連携に見られるように
「意識」「知識」「性格」等々の面で異なるタイプの人々や複数の組織が結び
つくことになる。その場合には、異なるが故に様々な衝突が発生する。この
衝突(発想の違い)を如何にプラスの方向に導くことができるかが、この
コーディネーター型キーパーソンの存在にかかっていると言える。
④初期段階での「市場性の組み込み」
連携活動が事業化に向けて成功して行くためには、その構成要素の中に「市場
を熟知した人・組織」あるいは「新たな市場を予感できそうな人・組織」を
組み込むことが必要である。さらに、このような「市場性の組み込み」は最も
初期の段階からであることが望ましい。
一般的にこれまでの連携活動の多くがなかなか成功に至らなかった背景には
この「市場性の組み込み」が不足していたこと、あるいは、その組み込みの
時期が非常に遅い段階で行われていたことを指摘することができる。
もっとも、将来の市場を的確に予言できる人・組織は存在しない。しかし、
何が必要とされているのか、あるいはいつの時期になればどんな変化が起きる
のかといった将来市場に対する“嗅覚”を持った人・組織は存在する。そうした
要素を連携活動の一連のネットワークに加えることが大切である。
⑤構成員間の「信頼」の構築
連携活動の基盤として重要な条件となるのが、構成員(人・組織)間の
「信頼」の構築である。この「信頼」が一度崩れるようなことがあれば、
連携活動自体が崩壊する可能性が非常に大きいと言わざるを得ない。
地域社会が常にこの「信頼」を基礎に運営されていることを考慮するならば
広域的な連携よりも寧ろ狭い地域の中での連携活動の方が「信頼の担保」
がある程度保証されていると言えるかも知れない。しかしながら、今後
ますます活発化する産業のグローバル化に対応するためには、広域的な
連携活動も視野に入れた「信頼」の構築が不可欠である。