成長過程にある中小企業の落とし穴が、業務の仕組みの未熟さによる非効率
そしてミスの多発です。
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これは、各組織や社員の業務範囲が不明確だったり、指示命令系統、情報ル
ートが曖昧なために、経営者と社員のベクトルが合わず、連携がうまく取れない
ために起こるのです。
社長は社員が少数の時は、全員に目が届き、適時、直接指示を与えたり、情報
収集できたものが、業務の拡大に伴って社員も増え、一人ではコントロールが
困難になってきます。
そこで、会社の業務システム(仕組み・ルール)が必要になってきます。
社長はこの仕組みをうまく使って、間接的に組織を効率よく動かすマネジメント
力が必要なのです。
仕組みは、目に見える形の「業務マニュアル」「業務フロー」に落とし込み、ま
た「生産管理システム」など、コンピュータシステムを構築して維持・管理され
なければなりません。
今回は、理論だけでなく実践に即した業務マニュアルの意義、体系、具体的な作
成方法、注意点について解説します。
1.業務マニュアル作成意義
(1)目的
業務マニュアルを作成する目的はなんでしょうか?
物事を始める場合は、必ず目的を明確にしなければなりません。
企業によって、様々な課題があり、それを一つ一つクリヤしていかなければなり
ません。ある会社では、新分野に進出したいが人材がいないとか、納期や品質問
題でいつも悩まされているとか、社長自身が忙しすぎて、社員一人ひとりのこと
には手が回らないとか・・・
つまるところ、社長自身が日ごろの雑用に忙殺されずに、次に打つ手を落ち着い
て考えたい、日常の業務は、阿吽の呼吸で通じ合うスタッフに任せたいと思って
いるのではないでしょうか?
今でも、社長は何も指示や判断をいちいちしなくとも、物事はある程度進んでい
きます。たとえ、一週間不在でも何となく業務は処理され、進んでいく。
でも、日ごろ思っている様々な課題は解決されずに残っている。これを速く何と
かしなければ?
これが、社長の本音ではないでしょうか?
このことに対する有力な解決策が社内業務システムの構築(仕組みづくり)なの
です。従って、仕組み作りの一番の目的は、社長が頭に描いていることが、いち
いち、一つ一つ指示を出さなくても、仕組みを運用することによって実現してい
くこと。
この目的に向かって、話を進めて行くことにします。
(2)業務マニュアルのメリット・デメリット
社内業務システム(仕組み)の目に見える形となったものが業務マニュアルです。
コンピュータのプログラム化された、ERPシステムのような総合パッケージも仕
組みと捉えられますが、プログラム化するに当たっては、人間がその仕組みを決
めなければなりません。
業務マニュアルを作成するに当たって、メリット・デメリットを良く理解してお
くことが必要です。何事も良い面があれば悪い面もあると言うのが世の中の法則
なので、欠点ばかりを強調してもいけません。かといって、絶対100%完ぺき
ということもありません。
メリットとしては
・もちろん、社長がいちいち指示や、判断をしなくても業務が進んでいくこと
・昨日入社した新入社員でも、ある程度間違えずに作業が出来ること
・品質や納期が安定すること
・マニュアルがあることで皆が統一された行動、作業が出来ること
そして、一番のメリットは「管理技術力が向上すること」なのです。
逆に管理技術が向上するように、業務マニュアルに仕組んでおくことが重要な作業
となります。
つまり、業務マニュアルは作って終わりではなくて、それを運用することによっ
て組織の能力が高まること、ノウハウが蓄積され「賢いシステム」に成長すること
を期待しているのです。(詳細は後述)
デメリットとしては
・マニュアルに頼りすぎて、何も考えない、工夫できない社員が出来上がること
・マニュアルがないと出来ませんと言う社員が出来上がること
・不測の事態が生じた場合に対応出来ない者があらわれること
・余りの細かく決めすぎて、それを守れなくなること
・業務の実態と離れて行ってしまうこと
業務マニュアル作成の目的が曖昧であったり、十分に社長の想いが反映されていない
場合は、デメリットがより顕著に表れてきます。
あらかじめ、メリットがより大きく、デメリットの影響をより小さくなるように工夫
することが大切な作業になります。
2.業務マニュアル作成の準備
業務マニュアルの体系をどう作成するか?一番の悩みどころです。
ここで頭に浮かぶのが、ISO9000の品質マネジメントシステムですね。
このシステムの体系は、非常に参考になるのですが、間違っても外部コンサルタン
トの言われるがままに作成してはいけません。
業務マニュアルの作成は、ISO9000の認証取得が目的ではありません。
目的の項を思い出してほしいのですが、あくまでも「社長が頭に描いていることが
いちいち一つ一つ指示を出さなくても、仕組みを運用することによって実現して
いくこと」です。
外部コンサルタントに助言を求める時も、「社長の想い」の通り、マネジメント
システムを動かす「業務マニュアル」でなければならない事を明確に伝えること
が最も重要になります。
ISOの要求事項に適合するしないの細かい技術的な内容はコンサルタントに任せ
社長はどのような管理システムにしたいか?どうしたら想いが実現できるか?の
構想を十分練ってから、システムの構築に取り掛かるべきです。
社長が頭に思い描いていること(理念、方針・目標)をトップダウンで示し、そ
の内容を具体的にシステムに取り入れます。
例えば
・優秀な人材の確保と育成(新人、管理層、技術者、後継者など)
・組織を活性化したい
・組織の役割を明確にし、責任権限を委譲したい
・日常の問題解決力をもっと高めたい
・業務の効率化を図り、原価を低減したい
・品質問題を解決したい
・技術ノウハウの蓄積と、後継者へ継承したい
・差別化技術をもっと磨きたい
・販路を新たに開拓したい
・新分野へ進出したい
・新商品を開発したい
まあ、いろいろと出てきます。
それだけ、課題を抱えていることになりますが、この内容を社長一人に力で何とか
しようと思ってもどうにもなりません。
だから、仕組みでこの課題を解決できるように持っていくしかないのです。
3.業務マニュアル作成(システム化)の手順
(1)業務の実態を調査し見える化する
課題を解決するには、まず現状がどうなっているか?社長の「想い」と現状とのギャ
ップはどれくらいなのか?現状に対して何が不足しているのか?一つ一つ明らかにし
ていかなければなりません。
それには、まず業務全体の流れが見えるフローを作成します。
基本的に企業活動は、各組織(プロセス)が連携してつながり、INPUTに付加価値を
加えてOUTPUTする活動と捉えられます。
・各業務において、何がINPUTされ、何がOUTPUTされるのか?
・プロセスにおいて、どんな付加価値が加えられるのか?
・プロセスの構成は何か?
これを一つ一つ明らかにします。例えば製造工場では
・INPUT:指定された材料
・OUTPUT:図面通り加工された部品
・PROCESS:材料の受入検査、加工、測定、梱包・・・
・PROCESSを構成するもの:測定器、加工機械・・・
また日常の改善活動では
・INPUT:納期遅れ・不良発生情報など
・OUTPUT:システムの改良案(業務マニュアル改訂)
・PROCESS:不良情報ルート、品質会議、対策案検討
・PROCESSを構成するもの:品質会議、生産会議、業務改善プロジェクト
この作業を一つ一つ洗い出し、現状の業務の内容を「見える化」していきます。
この業務の流れを見える化する手段として「業務フロー」を作成していきます。
この作業を業務の棚卸しと言い、各部門の主なメンバーが定期的に集まって、
一つ一つ業務を明確にしていきます。
(2)会社全体としての業務体系づくり
一つ一つの業務の洗い出しが終わったら、大きな模造紙のような紙に各業務を
並べ、関連する業務を線で結び付けます。
ある業務のOUTPUTは次の業務のINPUTになり、また次の業務につながっていく
というような具合です。
そうすると、会社全体の業務(事業)は、何と何がINPUTされて、何と何が
OUTPUTされているのかが見えてきます。
これが、会社の「業務システム図」なのです。
これは、あくまでも現状の業務システムであって、社長の想いとはかけ離れ
た機能しか果たさない、いわば欠陥システムであるかもしれません。
でも、それに落胆するする必要はさらさらありません。
社長の想いと現実とのギャップがどれくらいあるのかが明確になればあとは
ギャップを埋めるべく、弱いところを補強していけばいいわけですから、あま
り悩む必要はありません。
(3)ルールが不明確な業務の洗い出し
業務の棚卸を進めて行く中で、業務の手順や、どこの部署で責任を持って
実施するのかが曖昧な業務が出てきます。
特に、品質や価格、納期、そして安全にかかわる問題が起こる可能性がある
業務については、最優先で決める必要があります。いろいろある中で、何が
重要で、優先的にやらなければならないかを、重点思考で実施していきます。
4.業務マニュアルの具体的作成方法
ここからいよいよ具体的に、業務マニュアル体系および、各業務マニュアル
を作成する作業に入ります。
●業務マニュアル体系図
●マニュアルの種類と役割
●フォーマットの統一
●人材、組織力を強化するための仕掛けを埋め込む
●維持管理(発行、改版、配付)管理方法
●電子マニュアルの管理方法
●事例紹介
5.業務マニュアルの上手な運用方法
●意識づけ、教育
●マニュアルは作成して終わりではない
●マニュアル見直しの方法
●最終目的は、企業のノウハウの蓄積