雑用に追われる社長を解放する唯一の手段は、強力な助っ人を雇うことではなく
仕組みを作ること。基礎体力を付けること!
基礎体力とは、「人材」「組織の役割」「しくみ」「固有技術力」です。
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以下は、ある企業の社長の生の声です。
●A社長の本音(創業15年、社員数25名の自社製品開発設計、製造企業)
当社の現状は、業務拡大によって、人材の絶対的な不足を招いています。
営業は社長と営業マン1名、その他主要業務は、社長一人でこなしており経営
トップを支えるスタッフの育成が急務です。
生産管理能力向上、顧客フォロー、多くの引き合いに対応できる営業戦略
技術力向上など、社内の状況を総合的に把握し、その円滑かつ効率的な運営
体制を立案し、日常業務を推進してほしい。
社長の私は次の商品開発のアイデア、市場開拓等に専念したい。
●B社長の本音(創業40年、社員数18名の医療機器製造企業)
当社の課題は一言で言えば人材育成です。経営トップを支えるスタッフは
女性が大半を占め、大局的、戦略的視点も必要な今日的経営環境では、男性
スタッフの育成も重要と考えています。
今欲しい人材は、身近に相談できる経営スタッフです。日常の業務の「右か」
「左か」を相談できる人材、また今後の企業の進むべき方向(経営戦略の具体的
な構築)を行って、経営計画を推進したいと考えています。

以上は、実際に地元の小規模企業の社長さんからの相談内容です。
社長さんは、これから業績を伸ばしていく上で、このままではいけない、何か
手を打たなければと思っており、危機意識を相当強く持っています。
このままではいけないと感じていること自体は、大変素晴らしいことです。
現状を何とか変えたい、もっと会社を良くしたいという前向きな姿勢はとても
大切なことですね。
ただ、2人の社長さんの考えのまま進もうとすると実は、大きな落とし穴が
待っているのです。
1.小規模企業に必要な基礎体力作り
企業にも、幼年期、青年期、壮年期と呼ばれる成長過程があります。
売り上げがずっと低迷している企業は、幼年期からなかなか青年期を迎えられない
企業も多いのです。また、運よく売り上げを伸ばしている企業でも、体力が
十分備わらない幼年期のまま、規模のみが拡大し様々なひずみが生じている場合
も多く見ることができます。
では、各成長過程で企業はなにをなすべきかを考えてみましょう。
幼年期:職人時代で、売り上げを伸ばすことが優先。
青年期:社員を雇い組織へ飛躍、成長軌道へ
壮年期:事業そのものを売る発想(ビジネスモデルの確立)
(1)幼年期~青年期で基礎体力をつける
企業の基礎体力を養うためのやるべき項目を列挙します。
①人材育成の強化
②組織(組織図、職務分担・権限)の仕組み
③現場の日常管理のしくみ
④固有技術力の強化
社長は、自ら描いている夢や理念が将来実現できるように、社内の仕組みを整備し、
それをコントロールすることで経営を行います。いちいち、仕事の指示を社員に
しなくても、仕組みが自動的に指示してくれるようにするのです。
つまり、社長は仕組みを介して、組織や社員を動かし、自らの夢を実現させる
のです。

まさに「参謀」が2,3人いるような強力な会社を作ることも可能なのです。
もうお分かりと思いますが、最初に述べた社長さんのように、落とし穴に落ち
ない様に、今のうちにしっかりと「基礎体力」を養うことに専念しなければ
いけないのです。
2.「参謀」は求めてはいけない
二人の社長さんの発想は、「強力なスタッフが、日常業務を切り盛りしてくれた
らいいな~」という願望が込められているように思われます。
「参謀」、「軍師」と言われるような、優れた知恵者がいたら、今目の前に
降りかかっている問題もテキパキと解決し、会社はうまく回り、将来の経営
戦略も立てられると考えているのだろうと推測できます。
ところが、「参謀」を、望んでも、それは無いものねだりというものです。
社長の思うような都合の良いそんな人物は、おそらく1000人に1人もいない
でしょう。仮に優秀なスタッフをヘッドハンティングしたとしても組織に
馴染もうとしないかも知れませんし、きっと愛社精神などはなく、社長自らが
かつてそうであったように、自分の城を将来築こうと考えているでしょう。
優秀なスタッフを高い報酬で引き抜くことも可能ですが、更に規模が拡大
したら、また第二の「参謀」が必要になってきますね。
ですから決して、「参謀」型の人材を求めてはならないのです。
では、どうすれば「社長が望むような会社」を作ることができるでしょうか?
3.人材育成の重要性
企業における人材育成は、もっとも重要な共通課題です。
特に、中小企業では、限られた人材の中で、仕事をこなして行かなければ
ならず、一人が何役も仕事を受け持っていることも珍しくありません。
二人の社長さんが、人材の必要性を第一に考えているのも良く分かりますね。
少子高齢化で、ますます働く人が少なくなっていく中で、教育訓練制度を整備
して、有能な人材を育成したり、外から必要な人材を補充していくことが求め
られています。
さて、人材の重要性は理解できるとして、社長を補佐するために、自分の仕事
を代行してくれる「身代わり」が欲しいと言う考え方はとても危険です。
「社長の身代わり」は作ってはいけないのです。
優秀な「参謀」に頼るのではなく、現在在籍している社員の能力を引き出す
事が最も必要な事です。そのためには。社員一人ひとりの能力を引き出す
教育制度、人事制度が必要になります。
4.人依存から仕組み依存へ
中小企業に見られる特徴として、
・多品種少量生産への対応遅れ、生産性の低下、納期・品質トラブル発生
・高度な業務に対応できる人材の不足
・と言いつつ社員の教育もままならず、社員の能力発揮が不十分
・組織の役割が曖昧、仕事は個人に依存して、個人商店的な経営から脱皮できず
・企業の成長を促すPDCAの改善活動が停滞、又は全く実施されていない
・つまり、社長自らが職人体質から抜け出せず、現場を切り盛りしている
こんな様子が頭に浮かんできます。
つまり、仕事がすべて人について回って、人依存の仕事のやり方になっている
のです。会社組織としての潜在能力を持っているにもかかわらず、それが充分に
引き出せていないのです。
「もっと優秀な人がいれば・・・」「結局、俺が全部いちいち指示するしかない
のだ」となり、毎日の仕事に忙殺されている社長の頭は、ついつい「優秀な人
が欲しい」と考えてしまうのです。

個人商店的な経営でも、数十億円の売り上げ規模の会社も存在します。何とか
社長の頑張りで、そこまで会社を成長させ、この規模まで成長しましたが、
このままでは、おそらく100億円の売り上げ規模に成長することは難しいでしょう。
ここに個人商店経営の限界があります。
リーマンショック後、売り上げが半減し、立ち直れない企業が多く存在します。
環境に左右されない、強靭な「基礎体力」を、規模が小さいうちに十分に備えて
おくことが重要になります。
社長は、優秀な人がいなくても回る会社、優れた人材ではなく、優れた方法
(仕組み)を探すべきです。
人材志向から、優れた仕組み志向へ、優秀な人がいなくても回る会社を作る
方法を考えなければならないのです。人材はいつか去っていきますが、仕組み
は永遠に失われません。資産として蓄積していけるのです。人に仕事を付ける
のではなく、仕組み化された仕事に人を付けること。これを目指すべきです。
次回は基礎体力づくりのステップの詳細について解説します。