品質管理用語解説:製造業の品質管理 改善の進め方事例

以下、品質に関する用語解説集です。
【品質管理とは】【品質保証とは】【品質問題とは】【クレームとは】
【不良とは】【慢性不良とは】【故障/故障モードとは】
【ヒューマンエラー(ポカミス)】【ポカヨケ】【原因と要因】
【因果関係と真の原因とは】【暫定対策】【恒久対策】【固有技術と管理技術】
【是正処置と予防処置】【5W1H】【4M/5M】【三現主義】【なぜなぜ分析】
【特性要因図】【QC工程表】【FMEA】【工程FMEA】【FTA】
【品質工学(タグチメソッド)】【機能設計と信頼性設計】

● 品質管理とは?
品質管理とは、顧客の要求に合った品質の商品およびサービスを経済的に作り
出すための企業の一連の活動体系であり、トラブルが起きないようにプロセス
を設計し、実行すること。
しかし、人間は最初から完璧なプロセスは設計できない。またすでに出来上
がったプロセスは、改善する以外にないため、永遠に改善活動を続けること
になる。

当初、製品の品質を一定のものに安定させ,かつ向上させるための管理を意味
したがTQM、ISO9000などの導入によって、QCDを含む、会社全体としての
品質をマネジメントする意味合いに広がっている。

● 品質保証とは?
品質保証とは、上記の品質管理が適切に行われ、かつ製品およびサービスの
品質が顧客要求通り適切に保たれていることを保証する活動のこと。

品質管理は、QCDの作り込み活動だが、品質保証はもっぱら品質だけの適合性
を保証する活動を言う。

● 品質問題とは?
2015年前半、大きく話題になったのはタカタのエアバック問題、東洋ゴムの
免振ゴム問題、ペヤングのカップ麺異物混入問題など、いづれの問題も、健康
や生命に影響を及ぼす危険があり、会社そのものの品質管理体制や、事故後の
対応の仕方が問われ、社会的信用を失墜するばかりか、企業の存続まで影響
しかねない重大な問題となっている。

社会全体の安全や健康に対する意識の向上や、ネット社会での情報伝達の
スピードの速さなど、20年、30年前の価値観とは大きく異なってきているにも
関わらず、企業側やお役所の考え方や体制が時代の流れに追従できない状況に
なっている。

●クレームとは?
クレームとは、購入した商品・ サービスに意見や不満をもつ顧客が、それを
提供した企業に対して問題点を指摘したり 、苦情を述べたり、損害賠償を要求
したりする行為。または、その内容のことを言う。

クレームの原因として
1.最初から機能そのものが満たされない
2.使い方によって機能が満たされない、けがや災害が発生する
3.使っているうちに機能が満たされなくなる
など。

●不良とは?
不良とは設計段階や製造・輸送過程の不都合により、機能上の欠陥ないし動作
不良を起こすこと。工業製品では、消費者の手元に渡った際に、仕様通りに
動作する事が求められる。これが消費者の期待を裏切って動作しない物がいわゆる
「不良品」である。

これは消費者が期待するレベルで判断されるため、外装上のキズ・汚れなど、
機能に影響を与えないものに対しても、不良品扱いするケースが見られる。

精密機器などでは、例えば音質など、ある一定の性能許容内で機能する物のみ
を良品としその基準以下であるものを不良品として扱うなど、ややその判断が
難しい部分も見られる。

●慢性不良とは?
慢性的な品質不良は、長期間に渡って発生し続ける不良であり、大きな問題に
はならないがゆえに、放置されがちな不良であるが、積もり積もって大きな損失
(品質ロス・コスト)を招いていることが多い。

一般には材料を含む製造のばらつきがある程度大きく、工程能力が低い状態で
発生する。慢性不良を解決するには、一担当技術者の力では難しく、全社ぐるみの
プロジェクトを組んで解決に当たらなければならない。


●故障/故障モードとは?
ある機器を買って使い始めてから数年過ぎてから、「断線」という事象と「機器が
動かない」という事象が把握される。前者を故障モード、後者を故障と呼び分ける。
つまり、停止、チョコ停、油漏れ、騒音・振動~というような機能障害が故障であり
ひび割れ、欠け、腐食、磨耗、曲がり、折れ、断線~などの物理・化学的な変化、
構造の破壊を故障モードと呼ぶ。

「構造の破壊」は部品の場合に限らない。組立品の故障モードも、「剥離、抜け、
緩み、詰まり、外れ」などの結合の破壊であり、「動かない、回転しない、伝わら
ない」などの機能障害は故障に分類される。

故障の原因は「製品の落下」や「経時変化」などのシステムに加えられる使用環境
を指し、これらの原因によって生じた破壊が故障モードであり、その影響が故障、
及び災害となる。



● ヒューマンエラー(ポカミス)
ヒューマンエラー(ポカミス)とは、人間が機械を使って作業する場合などで、
人間が行うべき作業を適切に行わない事により生じるエラーを言う。ヒューマン
ラーは多くの場合、「意図しないうっかりミス(ポカミス)」で、システムと
「人間の認知、行動」のミスマッチで起きる。

人間は、「認知」して「判断」し「行動」を起こし、そのいづれのステップでも
ヒューマンエラーは発生する。
① 認知ミス:誤認識/無知・理解不足
② 判断ミス:先入観/複雑処理/先入観
③ 行動ミス:故意/できない/習慣化/やりにくい


● ポカよけ
ヒューマンエラーは、人間はもともとミスを起こす生き物なので、いくら注意
してもある確率で発生する。そのことを念頭に、認知ミス、判断ミス、行動ミス
が起きにくい作業工程を構築しなければならない。

ポカよけ機構、治具の製作、機械化、自働化などでミスを防ぐ工夫をする事、
またどうしても人の作業で行う場合は、ミスの起きにくい作業方法や機械・
工具などの工夫を現場作業の実態をよく見ながら対策していかなければならない。


● 要因/原因とは?
要因とは、結果に対して影響が認められ、あるいは影響力があると疑われる事項
事。要因のうち、影響力の強いもの、つまり管理する必要のあるものを主要因
という。

原因とは、主要因のうち、適切に管理されていないために不具合を引き起こしたも
のを言う。


● 因果関係と真の原因とは?

真の原因とは、不具合の結果と因果関係にある出来事の事であり、事実(データ)
に基づいて推定され、検証された因果関係を指す。つまり、その専門分野の固有
技術的な原因をいう。

管理原因とは、その不具合を招いた管理の欠陥を指し、人材の不足、設計審査の
未実施などで、これらの原因を放置すると、再び類似の不具合が発生する。つまり
どの不具合発生にも耐えられる汎用性のあるシステムを想定した場合の欠陥を言う。


● 暫定対策
お客様に迷惑を掛けないために、とにかくどんな手段を使っても不良を外に出さ
ないようにする目的で行う対策のこと。例えば、検査員を増やして検査を何重に
も行うことが一番手っ取り早い対策と言える。

● 恒久対策
二度と再発しないように根本原因に対して打つ対策のことを恒久対策と言う。
問題を三現主義で捉え、真の原因に対策を打つことで、その不良はなくなる。
例えば機械の故障は、機械を修理すれば良い。
ところが、なぜ機械が故障したのか?根本原因を突き止めなければ、また故障
が発生する。

故障の原因は、定期的に摩耗部品を交換する必要があったのに交換しなかった
とすると、定期メンテナンスのマニュアルの有無、担当部署、責任者は明確にな
っているか?などの仕組みに不備があった、など「仕組み」の不備が根本原因と
なり、この原因を問のどかなければ、同様の故障がまた発生することになる。

●固有技術と管理技術
問題の原因を究明し対策する場合、固有技術とは、原因を調査して処置を講じて
問題を解消する技術のこと。例えば、機械が故障したときは、原因を調べて、
処置をして、継続的に使用できるように修理すること。

管理技術とは、管理システムの欠陥を調査して、根本原因を追究し、再発防止
を図ること。その故障が設計、購買、保全などのプロセスの欠陥に由来する、
えば、設計基準のチェックシートに抜けがないか、FMEAは行われているか、
設計審査は行われているか等、二度と同様な問題が起きないようにすること。

●是正処置/予防処置
是正処置とは、既に起こってしまった不具合に対して原因を追究し2度と同じこ
とがおこらないようにすること、再発防止を図ることをいう。
実際に行われる是正処置は、不適合を取り除くだけ、つまり「誤ったことを正し
く改めること」だけの処置で終わりにしている場合が多い。

予防処置とは、生産が始まる前にあらゆる不具合を想定し、対策を講じることを
一般的に言うが、これを行うことは困難が伴う。しかしながら防災活動や、品質
管理ではこの種の予防活動を目指している。
ところが、ISO9000では、必ずしもそうではない。何らかのトラブルが起きる兆
候が現れた場合に、その対策を講ずることを指し、プロセスの監視・測定を通じ
得られた危険情報に基づいて対策を講ずる活動を言う。

5W1H
物事が進まない、内容が不十分など業務の実行が徹底しないのは、誰が最後まで
責任を持って実行するのか、また具体的に何をどのように対策するのか不明確にな
っている場合が多い。

そして、本当に対策が終わって、その効果が出ているかどうかを、いつ誰がどの
ような方法で確認するかを明確になっていないために、次のアクションが取れな
い。いわゆる「やりっぱなし状態」に陥る。
PDCAのサイクルのそれぞれのステップで常に、5W1Hを明確にしながら進めるこ
とが必要。


● 4M/5M
機械加工による生産の4要素で、 Man(人)、Machine(機械)、Material(材料)
Method(方法)を言う。
4Mの投入に対して、より高いアウトプットを得ることが製造業の目標となり、4M
に基づいた品質管理を4M管理と呼ぶ。不具合が発生した場合、この4Mのいずれか
が変化している事が多い為、企業では、その管理は必須事項として求められる。

5Mとは、4Mに検査、測定(Measurement)をプラスしたものを言う。
測定機器の精度、測定条件、測定方法など、測定機器や、測定者の技能によって、
測定データに「ばらつき」が発生し、製品の品質に影響するため、4Mと並んで
管理の対象にしている。

●三現主義
現場、現物、現状の三つを指し、机上ではなく現場に足を運んで、原因追究や対
策を行うことが重要だ。
実際の原因追求が甘いのは、不良の現物を観ていない、現場の状況を自分の目で
良く確認していない場合が多い。頭で原因を創造してしまうと、ポイントがずれ
た対策になってしまう。

●なぜなぜ分析
品質管理で、不具合の原因を突き止め、対策する場合に使用する管理ツールをい
う。なぜなぜ5回繰り返すと言うが、5回の必要性の根拠は特にはない。管理シス
テムの欠陥を調査して、根本原因を追究し、再発防止を図る目的で使用する。
固有技術的な因果関係を探る場合には使用しない。


●特性要因図
特性要因図とは、特性(管理の成果)とそれに影響する要因(管理すべき条件)
またはトラブルの原因候補を系統的に並べたもの、またはツリー図、系統図に
表したものを指し、トラブルの予防目的、または実際に起きたトラブルの原因
追及に使用する。つまり予防活動用と、是正活動用の2種類が存在することに
なる。


●QC工程表
QC工程表とは、各工程ごとの要因の管理・点検、および特性の測定・検査手順
を詳細に規定したもので、事前にトラブルを予防するためのツールのこと。

QC工程表の各工程(作業)ごとに以下を規定する。
 管理・点検項目(作り込み):設備/人/材料/作業方法/点検方法
 品質確認(流出防止):特性値/検査方法/測定機/記録/検査者



●FMEA(Failure Mode and Effect Analysis)
FMEAは、もれなく故障や災害を抽出すための手法で、想定外が生じないよう
故障モード(構造破壊)を列挙して、そこから故障や災害を全て顕在化する
追跡法のこと。

新しい技術、製品、工程で起こる故障を予測することは容易でなく、「想定
外」の危険が常につきまとう。FMEAは、この「想定外」の故障や災害を抜け
漏れなく予測し、十分な対策が行われたかどうかを定量的に判定するための
手法ないし活動。

その「抜け漏れのない予測」を容易にするために採用されるのが、「故障モ
ード」の概念で、FMEAは故障モードと影響の解析であるから、例えば、ある
製品で使われている「ねじ」がもし緩んだら、その故障モードが、どんな結
果を招きかねないか?単に、ガタガタと音がするだけか、ガスが漏れて爆発
する危険があるか、操作中に怪我でも負う危険があるか~というような影響
を解析することである。

何故に「故障モード」の考え方を用いれば、故障の予測が容易になるか? 
それは、故障・災害が潜在的(予測困難)であるのに対し、故障モードが顕
在的であって抜け漏れなく予測できることにある。


●工程FMEA
工程FMEAとは、工程設計の信頼性を評価するための手法。
工程とは、設計工程、資材発注工程、製造工程など、全ての業務(手順、方法
、処置)を指し、十分な機能と信頼性を工程設計で付与しなければならない。

機能とは、工程が生み出す結果(品質Q、納期D、コストC、安全S、環境保全E)
を指し、信頼性とは工程が壊れないこと、つまり工程指示に対する違反がない
ことをいう。

工程の内容として定めた設備、条件の段取り、作業方法などの指示は全て構造
であり、指示違反は、全て故障モードとみなす。FMEAは故障モードと影響の解析
であるから、例えば、工程の指示違反(故障モード)が、どんな結果を招きかね
ないか?信頼性が十分かどうか、FMEAによって評価する。


●FTA
FTAとは、故障、または予防しなければならない重大事故について、その発
生頻度(ないし確率)を計算する手法をいう。

FTAの一般的な手順は以下の通り。
•起こしてはならない事象(トップ事象)を、FT図の最上位に置く
•第1次要因事象を列挙し、さらに第2次要因以下、因果関係を展開し、最下位に
 基本事象(直接に確率を見積る事象)を列挙し、それぞれの確率を見積もる
•そこから逆に確率を集計(加算、または、乗算)し、トップ事象の確率を求める
•下位事象A、Bなどが1つでも起きれば上位事象が起きる場合は、Aの確率とBの
 確率の加算値をもって上位事象の確率とする
•下位事象AとBが同時に起きるときに限って上位事象が起きる場合は、Aの確率と
 Bの確率の積をもって上位事象Xの確率とする
•下位事象Aが、条件事象Bが起きている時に起きれば上位事象が起きる場合は
 制約ゲートを用い、その横に条件事象を、下に下位事象を配置する
•トップ事象の確率が過大なら、確率が最大のルートに対して対策を講じ、トップ
 事象の確率が十分に小さくなるまで繰り返す。


●品質工学(田口メソッド)
品質工学は、田口玄一博士が構築したためタグチメソッドとも呼ばれ、世界的に
も高く認知されている。トヨタ、パナソニックなど名だたる企業が活用しており
その有効性が認知されている。ただ難解である欠点がある。

品質工学は、「ばらつき」に強い設計をするための手法で、様々なばらつき
原因に対してロバストな(頑健な、影響されにくい)技術/製品を最短期間で
能率よく開発・設計する手法が品質工学の根幹をなしています。

バラツキの原因を大別すると、
(1) 材料や部品のバラツキ、
(2) 製造工程での加工/組立のばらつき、
(3) 製品の経時変化、
(4) 顧客での使用条件の違い(ex.環境温度の変化)
がある。

製品の設計、製造はこれらのバラツキとの戦いです。 設計時に想定した典型的な
条件(設計中心値)でのみ製造、あるいは使用される製品は皆無といってよい。 
多くのトラブルは製造条件または使用条件が中心値を外れることによって生じる。
品質工学の目的は、製造条件や使用条件のバラツキがあっても、あるいは長期間の
稼動後も、なおかつ仕様どおりの性能を発揮する製品を実現することにある。

製造段階に適用される「オンライン品質工学」、開発/設計段階で適用される
「オフライン品質工学」、分野に限定されず多変量データに適用される
「MTシステム」の3つがある。


●機能設計と信頼性設計
設計は、カタログに書かれた、目的とする機能を実現するための機能設計と
故障しないための構造を設計する信頼性設計から成り立っている。
機能設計も信頼性設計も、新規に設計する際は、全範囲にわたるが、設計変更の
場合は、関連する範囲にとどめる。
設計は、製品にとどまらず工程設計にも適用され、工程の機能設計と工程が設計
通り維持されることを考慮した信頼性設計から成り立っている。


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 合同会社高崎ものづくり技術研究所代表の濱田です。
 日本が誇るものづくり技術にもっと磨きを掛けよう!!

 設計、製造、品質管理、海外工場管理などの実務経験45年
 製造業のあらゆる業務に精通!講演テーマも下記の通り
 多岐にわたります。  ★講演(セミナー)のご依頼は<こちらから
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