2018年07月07日

FMEA解説書の8つの問題点!FMEA(DRBFM)/FTA/解析事例、実施手順

FMEA(故障モードとその影響の解析)は、製品設計段階と、工程の設計段階
で実施されます。理論の理解は大切ですが、実務で使えなければ意味があり
ません。

また従来の守りの品質管理から、攻めの品質管理への発想の転換が求められます。



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1.FMEAとは
FMEAとは、「市場で発生し得る故障や事故をすべて想定し、そのリスクを
検証するためのツール」」のことです。

自動車は、安全上の欠陥が問題となって、リコールを実施ことがあります。
これは、安全性・信頼性設計が不備であるために、市場で故障や事故が起きる
からです。最悪は人がけがをしたり生命にかかわる事故も発生します。

このような事を防ぐために、安全性・信頼性設計をしっかりやり、市場で故障
や事故を防ぐ対策を実施し、そのあとFMEAを実施するのです。
以下に、書籍等でよく見かけるFMEA手順における8つの問題点と対策を列挙
します。

(1)要員の選定・招集
FMEAを実施するために4人から6人のその場限りのFMEA班を組織する。要員は
様々な分野から選抜し、また対象の製品(または工程)に対する理解度も様々で
あることがよいとされる。

<問題点1>
但し、メンバーはそれぞれの技術のプロでなければならない。
自動車メーカーでは、「設計」に加えて「製造」「生産技術」「品質保証」「検査」
のメンバーを確保して実施すべきとあるが、大企業では多くのメンバーで時間を掛け
て実施可能だが、小規模な設計チームでは、実質的に不可能に近い。

そこで小規模チームでは「FMEA手法を設計手順に組み入れる方法」で述べている
ように、セルフFMEAとFMEAレビューの2段階に分けて実施することが望ましいと
考えられる。

(2)システムの構造・機能の把握
本来、ある機能を実現する為に製品が設計されるのであるから、設計段階ですで
にシステムの構造・機能の設計は完了しているはずである。

ただ、必ずしも設計した当人だけでFMEAを行うわけではないため、図面やフロー
チャートなどの設計資料や製品のプロトタイプ、工程をチーム全員で検分し、
FMEAの対象(製品・工程)について共通の正しい理解をメンバーに持ってもらう。

<問題点2>
やはり小規模チームにとっては(1)と同様に、メンバー数や時間に限りがある
ため理解が不十分のまま加わることになる。
また、故障モードを列挙し、その影響を評価するわけであるから、機能や構造を
理解しただけでは、故障モードを漏れなく洗い出す作業は困難な作業となる

やはり問題点1で指摘した通り、セルフFMEAとFMEAレビューの2段階に分けて
行うことが望ましい。



(3)対象部位の選定
例えば自動車を考えてみれば、製品や工程全体に対して一度にFMEAを行うことは
現実的ではない。適当な単位に分割し、複数の班で同時に行うか、ひとつの班が
何回かに分けてFMEAを行う。FMEA実施中の脱線を防ぐために、それぞれのFMEA
の対象は明確に、具体的に決める必要がある。

<問題点3>
自動車のように何万点もの部品やユニットで構成される製品は、1社だけで設計
することはあり得ない。また部品メーカーは故障モードはリストアップできても
その故障モードによって完成品としての機能に影響する故障や事故は把握できない。
完成品メーカーから二次、三次下請けの部品メーカーまで含めたFMEAの実施は
困難を極めることになる。

製品設計が部門にまたがる、あるいは複数の協力企業によって行われる場合は
FMEAを同期させることは困難である為、各部門内、各企業内でクローズせざる
を得ない。

完成品に責任を追う部門は、各FMEAの実施結果をよく吟味して、そこでリスト
アップされた故障モードによる不具合の内容が、最終製品に対しどのような影響
を及ぼすのかを判断しなければならない。

(4)故障モードの列挙
FMEAは故障モードを列挙することから始まる。基本的には故障モードは,典型的
なものを含む。例えば、ボルトは折れるかもしれないし、配管は詰まるかもしれ
ない。ただしこの時、その故障モードが実際に起こるかどうかは考えない。
次に、故障モードを列挙する際、設計した状態に潜在する故障モードのみを列挙
する。つまり、対象の製品は設計どおりの正しい部品を正しく組み立てたという
前提で考える。

また、工程FMEAを考えるときも設計は正しいという前提で故障モードを列挙する。
例えば、「寸法公差が不適切で部品同士が合わない場合がある」などというのは
設計上のミスであって、工程FMEAで考慮すべき故障モードではない。

<問題点4>
故障モードの列挙は、各設計者が勝手に上げることは、時間が掛かり、漏れも
発生する。故障モード一覧表、あるいは故障モードを引き出すためのキーワード
集を準備することが現実的である。


故障モードは、部品の構造的破壊だけとは限らない。
ソフトウエアを含む組込み型の装置、ユニットの故障モードはどのように
考えたらいいだろうか?その解を示している書籍、論文等はどこにも見当たらない。
(当研究所では、SEM構造の破壊と捉えることで論理的な説明が可能としている)



(5)故障モードの影響
故障モードを列挙した後、それぞれの故障モードについてその影響を考える。
もちろんひとつの故障モードが複数の影響をもたらすこともある。また、ある部品
を考えている場合でも、この部品の中で起こる故障モードの影響が、その部品を組
み込む装置で出ることも考慮しなければならない。

例えば自動車のエンジンの部品で、自動車のボディに取り付けるための部品が緩ん
だ、という故障モードの影響を考えるとする。エンジンという部品にはほとんどな
んの影響もないかもしれないが、エンジンが振動し自動車全体では大きな影響をも
たらすかもしれない。

故障モードの影響の評価はFMEAの結果に特に大きく影響するので、正しくまたは
漏れなく考えあげることが重要である。

<問題点5>
それでは「影響」とは何を指しているだろうか?
①経時変化や環境による影響で、故障モード(システムの破壊)が発生する。
②その故障モードによって製品の機能が失われ「故障」が発生する。
③その「故障」が事故や災害に発展することを「影響」という。

リスクアセスメントは、市場において商品の故障により事故に発展し、生命・財産
にどの程度の被害を与えるか、影響度のランク付けを行う。(ABCランク)



(6)影響の厳しさ・頻度・検出可能性の評価
FMEAは、影響の厳しさ・頻度・検出可能性という3つの指標で各故障モードに
点数をつけて評価を行う。点数は1から10の10段階で行う例が多いが、4段階
・5段階にすることもある。

それぞれの指標の点数は少ないほど好ましい評価である。(相対評価法)
評価は、現状の信頼性設計が十分かどうかの観点で行う。

影響の厳しさ」は故障モード発生した場合の被害の大きさである。
頻度」は故障モードの起こりやすさである。
検出可能性」は、設計FMEAの場合は設計期間中に故障モードを発見できる
 かどうかという指標である。

アメリカの自動車会社の場合、製造業者はAIAGのFMEAマニュアルにある
評価水準を使用するように求められる。

<問題点6>
評価水準は、製品ごとにその用途、使われ方によって独自に決定する必要がある。
その根拠、市場に於ける顧客の反応、社会的な要求の程度で決まる。
近年、ネットから情報が拡散し、顧客の価値観が急速に変化する可能性があり
注意が必要である。

従って、評価水準は、企業ごと、製品ごとに決める必要があり、また市場環境
にに適応させるため、時には変化させなければならないが、企業として評価
水準を独自に決めている例はごくわずかである。

(7)危険優先指数(RPN)の計算と対策の要請
危険優先指数とは、上記の影響の厳しさ・頻度・検出可能性の3つの指標の評価
点を全て掛け合わせたものである。10段階で評価すれば、1000点が最高点と
なり、1点が最低点である。

全ての故障モードに対して対策をすることができれば理想的ではあるが、実際
には、RPNの高いものを選んで対策する。
また、RPNが何点以上を対策の対象にするかということは任意に決める。
(例えば200点以上、100点以上など)

<問題点7>
RPNで並べると、影響の厳しさが大変高くても、頻度や検出可能性が低い場合
優先度が低くなる。つまり、どんなに頻度が低くても、検出が容易だとしても、
絶対に起こるべきではないという種類の故障モードが見逃されてしまうことになる。
例えば、津波が500年に一度でも、一たび原発事故が起きれば、甚大な被害が
発生する。

これを、見逃さず指摘するのがリスクアセスメントにおける「リスク」という
指標である。

相対的な評価の問題点として
①評価が全部終わらないと対策を講ずべき対象が決まらず、設計業務が停滞する。

②ランクを決めても、どこまで対策を必要とするか判断の基準がなく、カンに頼
 る結果となる。その証拠に、対策必要基準をRPN=100とする説、80とする説、
 125とする説など諸説紛々で全く統一性がない。
 このことは、基準を決める根拠が不在であることを示す。

③ランクを決める考え方は、次のような誤った論拠に基づいている。すなわち、
 「FMEAは対策すべき対象を絞るために用いる。すべて対策を行うのなら採点は
 不要だから要因すべて対策を取れば良いわけでFMEAの登場場面はない。

 限られたリソース(時間資金など)の中で問題解決する最大の効果を得るには
 優先付けすることが必要であり、FMEAはそのためのツールであるという。

 しかしセルフFMEAを用いた設計は、機能と同時に信頼性を確保しつつ行うので
 念のために行うFMEAレビューを実施しても少数の欠陥しか見つからないはず
 であり、そこで、信頼性設計が十分かどうかを検証すればいいのである。
 RPNを指標とする相対評価FMEAは、完全に論拠を失っている。

 セルフFMEAを採用した「FMEA簡易評価法の特徴

(8)製造工程のFMEA
工程FMEAは、「作業及び管理のプロセス要素に着目して行うFMEA」である。
製造工程における故障発生の原因・仕組みを工程設計段階で追求し、工程の改善
を行うために工程管理部門が用いる。

設計FMEAと違うところはまず、準備するものが、QC工程図・作業手順書・設備
仕様書など、工程の理解に必要な書類になること、次に、故障モードの抽出の視点
が製品そのものでなく、製品を製造するための物(例えば、人、材料、設備、方法
、環境)に向くことである。例えば、人の作業を必要とする工程では、ヒューマン
エラーを考慮する必要がある。

<問題点8>
工程FMEAにおける「故障モード」とは、製品FMEAの場合と同様に「システムの
破壊形式」すなわち、工程設計で決めたことに違反することである。
工程FMEAを実施する上でで多くの間違いは、故障モードではなく、工程で発生
する不良現象をリストアップして、不良対策を進めている点である。


FMEAは不良現象ではなく、故障モード(工程の指示違反)を出発点として、予防
処置が取られているかどうかを評価しなければならない。
故障モードは、部品をつけなかった、正しい手順でつけなかったというような、
その工程で行うべきと決められていることに違反することをいう。結果として生
ずる不良やトラブルは「影響」であって故障モードとは言わない。

この違反が導く影響、頻度、潜在性を評価する点で、製品FMEAと変わりないが、
唯一異なる点は、潜在性の判断期間である。製品FMEAでは設計管理中に欠陥を
見つけることの困難性であるが、工程FMEAでは工程を実施している間も検知期間
に含まれる。

FMEAは、その目的を正しく捉え、正しい手順で実施することが求められますが
様々な誤解や、間違った使い方が横行しています。
また、FMEAには限界があることも理解する必要があります。

本サイトでは、正しいFMEAの理解と、正しいFMEAの手順の普及に努めています。

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posted by k_hamada at 22:00| ★FMEA・DRBFM/FTAと市場リスク回避 | 更新情報をチェックする
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