FMEA(DRBFM)解説書の8つの問題点!書籍/本/の間違いとは

FMEA(故障モードとその影響の解析)は、製品設計段階と、工程の設計
段階で実施されます。理論の理解は大切ですが、実務で使えなければ
意味がありません。

また従来の守りの品質管理から、攻めの品質管理への発想の転換が求め
られています。


   難しい理論よりも設計者が簡単に未然防止に取り組める手法(事例も豊富に紹介)

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1.FMEAとは
FMEAとは、製品の使用環境、使用方法において「発生し得る故障や事故
を想定し、そのリスクを軽減させるためのツール」」のことです。

自動車は、安全上の欠陥が問題となって、リコールを実施ことがあります。
これは、安全性・信頼性設計が不備であるために、市場で故障や事故が
起きるからです。最悪は人がけがをしたり生命にかかわる事故も発生します。

このような事を防ぐために、安全性・信頼性設計をしっかりやり、市場で
故障や事故を防ぐ対策を実施します。その一連のプロセスの中でFMEAの
考え方を適用するのです。
以下に、書籍等でよく見かけるFMEA手順における8つの問題点と対策
列挙します。

(1)要員の選定・招集
FMEAを実施するために4人から6人のその場限りのFMEA班を組織する。
要員は様々な分野から選抜し、また対象の製品(または工程)に対する
理解度も様々であることがよいとされる。

<問題点1>
但し、メンバーはそれぞれの技術のプロでなければならない。
自動車メーカーでは、「設計」に加えて「製造」「生産技術」「品質
保証」「検査」のメンバーを確保して実施すべきとあるが、大企業では
多くのメンバーで時間を掛けて実施可能だが、小規模な設計チームでは
実質的に不可能に近い。

そこで小規模チームでは「FMEA手法を設計手順に組み入れる方法」で
述べているように、セルフFMEAとFMEAレビューの2段階に分けて実施
することが望ましいと考えられる。

(2)システムの構造・機能の把握
本来、ある機能を実現する為に製品が設計されるのであるから、設計
段階ですでにシステムの構造・機能の設計は完了しているはずである。

ただ、必ずしも設計した当人だけでFMEAを行うわけではないため、
図面やフローチャートなどの設計資料や製品のプロトタイプ、工程を
チーム全員で検分し、FMEAの対象(製品・工程)について共通の正しい
理解をメンバーに持ってもらう。

<問題点2>
やはり小規模チームにとっては(1)と同様に、メンバー数や時間に
限りがあるため理解が不十分のまま加わることになる。
また、故障モードを列挙し、その影響を評価するわけであるから、機能
構造の浅い理解だけでは、故障モードを漏れなく洗い出す作業は困難
な作業となる

やはり問題点1で指摘した通り、セルフFMEAとFMEAレビューの2段階
に分けて行うことが望ましい。



(3)対象部位の選定
例えば自動車を考えてみれば、製品や工程全体に対して一度にFMEAを
行うことは現実的ではない。特に新規点・変更点の設計部分に漏れが
生じ易いため、そこに着目しFMEAを実施する。

<問題点3>
自動車のように何万点もの部品やユニットで構成される製品は、1社だけ
で設計することはあり得ない。また部品メーカーは故障モードはリスト
アップできてもその故障モードによって完成品としての機能に影響する
故障や事故は把握できない。
完成品メーカーから二次、三次下請けの部品メーカーまで含めたFMEA
実施は困難を極めることになる。

製品設計が部門にまたがる、あるいは複数の協力企業によって行われる
場合はFMEAを同期させることは困難である為、各部門内、各企業内で
クローズせざるを得ない。

完成品に責任を追う部門は、各FMEAの実施結果をどのように扱うかを
あらかじめ決めておき、そこでリストアップされた故障モードの内容が
最終製品に対しどのような影響を及ぼすのかを判断しなければならない。

(4)故障モードの列挙
FMEAは故障モードを列挙することから始まる。基本的には故障モードは
典型的なものを含む。例えば、ボルトは折れるかもしれないし、配管は
詰まるかもしれない。ただしこの時、その故障モードが実際に起こるか
どうかはその使われるシーンや使用方法を想定しなければならない。

次に、故障モードを列挙する際、設計した状態に潜在する故障モードのみ
を列挙する。つまり、対象の製品は設計どおりの正しい部品を正しく組み
立てたという前提で考える。

また、工程FMEAを考えるときも設計は正しいという前提で故障モード
を列挙する。
例えば、「寸法公差が不適切で部品同士が合わない場合がある」などと
いうのは設計上のミスであって、工程FMEAで考慮すべき故障モード
ではない。

<問題点4>
故障モードの列挙は、各設計者が勝手に上げることは、時間が掛かり
漏れも発生する。故障モード一覧表、あるいは故障モードを引き出す
ためのキーワード集(故障モード抽出表:別途解説)を準備すること
が現実的である。


故障モードは、部品の破壊だけとは限らない。
ソフトウエアを含む組込み型の装置、ユニットの故障モードはどのように
考えたらいいだろうか?その解を示している書籍、論文等はどこにも見当
たらない。(当研究所では、SEM構造の破損と捉えることで論理的な説明
が可能としている)


更に、故障モードが列挙できても、その故障モードが発生する環境条件
使用条件が思い浮かばなければ、重大なリスクが見逃されてしまう。
例えば、「錆」はだれでも指摘できる故障モードだが、では、その錆が
なぜ発生するのか、使用環境が海岸に近い地域であったり、食品工場
である場合、錆の発生は問題視される。しかし、末端の部品設計者に
その情報が知らされていない場合、錆を考慮しない設計を行ってしまう。


(5)故障モードの影響
故障モードを列挙した後、それぞれの故障モードについてその影響を
考える。
もちろんひとつの故障モードが複数の影響をもたらすこともある。また
ある部品を考えている場合でも、この部品の中で起こる故障モードの影響
が、その部品を組み込む装置で出ることも考慮しなければならない。

例えば自動車のエンジンの部品で、自動車のボディに取り付けるための
部品が緩んだ、という故障モードの影響を考えるとする。エンジンという
部品にはほとんどなんの影響もないかもしれないが、エンジンが振動し
自動車全体では大きな影響をもたらすかもしれない。

故障モードの影響の評価はFMEAの結果に特に大きく影響するので、正し
く、または漏れなく考えあげることが重要である。

<問題点5>
それでは「影響」とは何を指しているだろうか?
①経時変化や環境による影響で、故障モードが発生する
②その故障モードによって製品の機能が失われ「故障」が発生する
③その「故障」が事故や災害に発展することを「影響」という
④一般的なRPN10点法による評価では、その影響の程度を正しく評価する
 ことは難しい。

リスクアセスメントは、市場において商品の故障により事故に発展し、
生命・財産にどの程度の被害を与えるか、影響度のランク付けを行う。
(ABCランク)



(6)影響の厳しさ・頻度・検出可能性の評価
FMEAは、影響の厳しさ・頻度・検出可能性という3つの指標で各故障
モードに点数をつけて評価を行う。点数は1から10の10段階で行う例が
多いが、4段階・5段階にすることもある。

それぞれの指標の点数は少ないほど好ましい評価である。(相対評価法)
評価は、現状の信頼性設計が十分かどうかの観点で行う。

影響の厳しさ」は故障モード発生した場合の被害の大きさである。
頻度」は故障モードの起こりやすさである。
検出可能性」は、設計FMEAの場合は設計期間中に故障モードを発見
できるかどうかという指標である。

アメリカの自動車会社の場合、製造業者はAIAGのFMEAマニュアルに
ある評価水準を使用するように求められる。

<問題点6>
評価水準は、製品ごとにその用途、使われ方によって独自に決定する必要
がある。その根拠、市場に於ける顧客の反応、社会的な要求の程度で決まる。
近年、ネットから情報が拡散し、顧客の価値観が急速に変化する可能性が
あり注意が必要である。

従って、評価水準は、企業ごと、製品ごとに決める必要があり、また市場
環境に適応させるため、時には変化させなければならないが、企業として
評価水準を独自に決めている例はごくわずかである。

(7)危険優先指数(RPN)の計算と対策の要請
危険優先指数とは、上記の影響の厳しさ・頻度・検出可能性の3つの指標
の評価点を全て掛け合わせたものである。10段階で評価すれば、1000点
が最高点となり、1点が最低点である。

全ての故障モードに対して対策をすることができれば理想的ではあるが
実際には、RPNの高いものを選んで対策する。
また、RPNが何点以上を対策の対象にするかということは任意に決める。
(例えば200点以上、100点以上など)

<問題点7>
RPNで並べると、影響の厳しさが大変高くても、頻度や検出可能性が低い
場合優先度が低くなる。つまり、どんなに頻度が低くても、検出が容易
だとしても、絶対に起こるべきではないという種類の故障モードが見逃
されてしまうことになる。
例えば、津波が500年に一度でも、一たび原発事故が起きれば、甚大な
被害が発生する。

これを、見逃さず指摘するのがリスクアセスメントにおける「リスク」
という指標である。

相対的な評価の問題点として
①評価が全部終わらないと対策を講ずべき対象が決まらず、設計業務が
停滞する。

②ランクを決めても、どこまで対策を必要とするか判断の基準がなく、
カンに頼る結果となる。その証拠に、対策必要基準をRPN=100とする
説、80とする説、125とする説など諸説紛々で全く統一性がない。
このことは、基準を決める根拠が不在であることを示す。

③ランクを決める考え方は、次のような誤った論拠に基づいている。
すなわち、「FMEAは対策すべき対象を絞るために用いる。すべて対策
を行うのなら採点は要だから要因すべて対策を取れば良いわけでFMEA
の登場場面はない。

限られたリソース(時間資金など)の中で問題解決する最大の効果を得る
には優先付けすることが必要であり、FMEAはそのためのツールであると
いう。

しかしセルフFMEAを用いた設計は、機能と同時に信頼性を確保しつつ行う
ので念のために行うFMEAレビューを実施しても少数の欠陥しか見つから
ないはずであり、そこで、信頼性設計が十分かどうかを検証すればいい
のである。RPNを指標とする相対評価FMEAは、完全に論拠を失っている。

 セルフFMEAを採用した「FMEA簡易評価法の特徴

(8)製造工程のFMEA
工程FMEAは、「作業及び管理のプロセス要素に着目して行うFMEA」で
ある。製造工程における故障発生の原因・仕組みを工程設計段階で追求し
工程の改善を行うために工程管理部門が用いる。

設計FMEAと違うところはまず、準備するものが、QC工程図・作業手順書
・設備仕様書など、工程の理解に必要な書類になること、次に、故障モード
の抽出の視点が製品そのものでなく製品を製造するための物(例えば、人、
材料、設備、方法、環境)に向くことである。例えば、人の作業を必要と
する工程では、ヒューマンエラーを考慮する必要がある。

<問題点8>
工程FMEAにおける「故障モード」とは、製品FMEAの場合と同様に
「設計アウトプット」の信頼性が十分となるよう、決められた仕様
(5M条件)から外れることすなわち、工程設計で決めた通りの作業
が行われないことである。
工程FMEAを実施する上でで多くの間違いは、故障モードではなく、
工程で発生する不良現象をリストアップして、不良対策を進めている
トップダウンの解析を行っている点である。

例えば、「寸法不良」は不良の現象であり、その寸法不良をひき起こした
要因「刃物の摩耗」「測定機の誤差」などが故障モードとなる。


FMEAは不良現象ではなく、故障モードによる、潜在不良が市場に流出
しないように予防処置が取られているかどうかを評価しなければならない。
ヒトのスキル不足により正しい手順で組み付けなかった場合に生じる
不良やトラブルは、この違反が導く影響、頻度、検出性を評価する点で
製品FMEAと変わりないが、唯一異なる点は、検出性の判断期間である。

製品FMEAでは設計管理中に欠陥を見つけることの困難性であるが、工程
FMEAでは工程を実施している間も検知期間に含まれる。

FMEAは、その目的を正しく捉え、正しい手順で実施することが求めら
れますが様々な誤解や、間違った使い方が横行しています。
また、FMEAには限界があることも理解する必要があります。

本サイトでは、正しいFMEAの理解と、正しいFMEAの手順の普及に努め
ています。

<参考文献>

 ・NewFMEA(DRBFM)/FTA実践マニュアル(実務編)(6000円)
 ・New製造工程FMEA実施手順(6000円)
 ・FMEAの効果的実践講座(基礎編)(6000円)

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