FMEA(DRBFM)導入時の問題点と検討事項:4つの問題点とその対策とは?

FMEA簡易評価法の一般的な実施手順の概要と実施上の問題点を整理し、実務
に落とし込むための条件と課題について考えてみます。

   難しい理論よりも設計者が簡単に未然防止に取り組める手法(事例も豊富に紹介)

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1.FMEA実施上の問題点
問題点1.
FMEAは、部品やコンポーネントの「故障モード」が、完成品に与える影響を
評価しなければならないのに、「設計ミス」「仕様漏れ」など、未熟な設計の
バグ探しが目的だったり、製品やシステムの故障の起こる原因を解析する目的
で、FMEAを実施している例が挙げられます。
「不良」と「故障モード」、「トップダウン」と「ボトムアップ」の意味を
はっきりと区別することが必要です。

問題点2.
10点法による評価基準については、各所で問題が指摘されています。
10点法は部品単体や、簡単なアッセンブリーの設計、製造を行っている企業に
とって現実に適合しない事は明らかです。厳密な信頼性データを持ちあわせな
い一般企業にとって、それが5点なのか6点なのかは判断に苦しみます。ただ、
それを理由に5点法に変更しても判断基準は主観に基づいて行われるため、問題
の根本は解決しません。

問題点3.
対策が必要かどうかの判断基準が曖昧であることも問題点の一つです。
つまり相対評価(RPN)が80点以上は対策が必要なのか、それとも120点以上
を対策するのかは、各々の判断に任されていますが、その根拠を理由付ける
データは持ち合わせていません。
また相対評価といいながら、絶対評価を行っており矛盾が生じています。

問題点4.
信頼性設計を評価するFMEAは信頼性設計を手抜きして実施しても意味が
ありません。初めから故障モードを意識した、顧客視点の設計を行う必要が
あります。
FMEAの時点で、初めて「故障モード」をリストアップしても、手戻りが多く
発生します。

2.FMEA導入時の検討事項
FMEA導入に当たって、企業が検討しなければならない項目を整理します。
FMEAは手法だけを、単独でそのままツールとして導入してもうまく機能
しません。
以下の6項目を社内の仕組みとして構築することによって、はじめて有効に
機能するのです。
(1)故障モードリストの作成と運用
(2)信頼性設計手法(ボトムアップ型の設計手法)の確立と仕組み化
(3)過去の不具合事例の蓄積と伝承の仕組み確立(故障モード抽出表)
(4)FMEA実施手順と評価基準の明確化
(5)設計の内容によってFTA/FMEAのどちらかをを選択する判断基準の
   明確化
(6)評価試験合格イコール信頼性に問題なしという考えを捨てること

2.1故障モードリストの作成と運用
製品の故障モードは、部品やコンポーネントの構造的な役割低下、もしくは
役割の喪失、物理的な破損をいいます。
各製品を構成する部品、部品の結合状態ごとに故障モードの基本形を事前に
洗い出しリストアップしておくことによって、信頼性設計、およびFMEAによ
る評価が効率よく実施されます。例えば以下のようになります。

【シャフト加工部品】
 折損・・・ねじり方向の応力による/軸と直角方向の応力による
 摩耗・・・回転による/振動による/衝撃による

【溶接部品】
 剥がれ・・・繰り返しストレスによる/衝撃による/振動による

【コネクタ接続】
 端子接触不良・・・端子の酸化による
 線材の断線・・・繰り返しストレスによる/過大な応力による 
 ショート・・・異物混入による/絶縁破壊による

【組込みソフトを含むコンポーネント】
 コンポーネントの機能を、入力⇒処理⇒出力 とした場合、入力の状態と
 処理の関係性が崩れ、正しく出力しない、出力が不安定、出力しないなど

2.2 信頼性設計手法の確立と仕組み化
いままで、個人のスキル、経験に頼っていた以下の信頼性設計手法を仕組み
として社内で共有可能とすることが求められます。
 ・信頼性の高い部品、材料の選定基準
 ・信頼性の高い部品加工形状、表面処理方法などの設計基準
 ・溶接、螺子などの信頼性の高い結合手段の設計基準
 ・繰り返し応力の掛かる部品の応力破壊防止設計基準
 ・ソフトウエアを含むシステムの信頼性設計技術
 ・安全性設計技術
 ・市場故障データの蓄積と共有
 ・其の他

2.3過去の不具合事例の蓄積と伝承の仕組み確立
同様に、過去の不具合事例を、上記の仕組みの中にフィードバックする手順
を組込み、検索可能とすることで二度と同様の不具合を発生させない
(再発防止)設計を行うようにします。

2.4 FMEA実施手順と評価基準の明確化
FMEAの正しい実施手順を社内で確立します。
FMEAの目的は、信頼性設計に抜けや漏れが無いかを社内の信頼性設計の基準に
照らし、確認することです。
そこで、もし、抜けや漏れが発見されたなら、設計基準通り設計されたのか、
または基準そのものに欠陥があるのかの原因追求を行い、是正します。

危険優先指数(RPN)の計算結果が100点なのか、200点なのかは、重要な問題
ではありません。自社の信頼性設計のしくみが、うまく機能しているかどうか
が問題なのです。

<参考文献>

 ・NewFMEA(DRBFM)/FTA実践マニュアル(実務編)(6000円)
 ・New製造工程FMEA実施手順(6000円)
 ・FMEAの効果的実践講座(基礎編)(6000円)

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 合同会社高崎ものづくり技術研究所代表の濱田です。
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