ポカミス・ヒューマンエラーの再発を防ぐ正しい対策手順とは?管理監督者が取り組むべき製造業の作業ミス防止対策

ヒューマンエラー要因と再発防止策について体系的にまとめたものです。

ヒューマンエラー(ポカミス)が発生したら、その不良は二度と発生しない
ように是正し、再発を防止しなければなりません。ミスを犯した作業者を
注意することは必要ですが、それだけで終わらせてはいけません。


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不良原因解析2段階なぜなぜ分析法」は工場で発生するヒューマンエラーを
はじめとする様々な問題の再発防止を図るための解析手法です。

ヒューマンエラーは、下の絵の様に氷山に例えられます。
ミスとして現れるのは、表面に出ている氷山の一角であり、その背後にある
個人を取り巻く環境や置かれた状況に注目する必要があります。
氷山モデル.jpg


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1.ヒューマンエラーの分類
ヒューマンエラーは認知ミス、判断ミス、行動ミスは、スキル不足、過失、故意
によって引き起こされます。しかしこれは、表面上の現象であって氷山の一角です。
この人間の行動におけるミスを誘発する背景として

 ①現場の状況(作業環境、プレッシャー、焦り、スキル)
 ②管理の構造・体制(しくみ、情報の質、コミュニケーション、役割・権限)
 ③文化・風土(社内価値観、トップの考え、暗黙のルール)
があります。

この分類方法は、ミスの直接の原因を対策するだけでなく、ミスを誘発した
背景に潜む「管理の問題」を明らかにするために採用します。

2.ヒューマンエラーの原因調査
ヒューマンエラーの原因を調査するには、まず事実の確認を行います。

①5W1H;現場に足を運ぶ、エラーの状態を現物で確認する、変化点を確認する
②因果関係:そのエラー発生の直接原因と結果を、現場・現物・現実で確認する

事実を正しく捉えたら、次に「品質管理の観点」から原因を特定します。
品質管理の観点とは、品質管理のしくみを中心に捉えるということです。
しくみがあるのか?ないのか?、しくみを知っているか?守っているか?
その事実を調査します。

ヒューマンエラーの原因となる要因の分類は下図の通りです。

 ①情報要因
 ②人:経験・スキル要因
 ③PSF(外的・内的)要因
 ④組織風土要因

ヒューマンエラー要因.jpg

①情報要因
 ・作業者に対する情報提供はタイムリーに行われているか?
 ・指示を出す監督者が決まっているか?
 ・指示を出す監督者が複数いないか?
 ・情報の見える化がされているか?
 ・コミュニケーション手段(機能的なミーティング等)はあるか?

②人:経験・スキル要因
 ・その作業は、必要とするスキルの教育を受けた作業者が実施したか?
 ・作業の難易度に応じて作業者のスキルを規定しているか?(作業者認定制度)
 ・新人に対する教育訓練手順はあるか?(内容、期間、合否判定)
 ・基本作業の教育訓練実施手順はあるか?
 ・定期的にスキルを確認し、合否判定を行う手順はあるか?
 ・ルールを知らずに作業している作業者はいないか?

③PSF(外的/内的)要因
(外的:ハード要因)
 ・チョコ亭、設備トラブルで、作業のペースが乱されていないか?
 ・機械、設備、治具などの不具合が放置されていないか?
 ・暫定的、臨時的な方法がそのまま定着化していないか?
 ・温度・湿度・騒音・照明など作業を乱す要因はないか?
 ・作業台、椅子の高さなどは適切に調節されているか?
 ・部品や工具など整理整頓され、近くに配置されているか?
 ・仕掛品、完成品などの置き場、表示は明確になっているか?
 ・身体の姿勢、力、足場などにムリがかかる作業はないか?
 ・細かい作業は拡大鏡を使用しているか?
 ・ポカミス治具、工具を必要に応じて製作しているか?

(外的:ソフト要因)
 ・作業手順書・共通基本ルールは整備されているか? 
 ・ルールが、実態と合っているか?
  (作業手順書、規格書、操作マニュアルの改版作業)
 ・自工程検査の手順はあるか?
 ・作業中断時、再開時の手順は決められているか?
 ・基本作業を定義し訓練ているか
  (例;ねじ締め作業、プレス作業、カシメ作業・・)
 ・特殊工程の作業手順書は整備されているか?
  (例:溶接作業、半田付け作業・・)
 ・その製品固有の作業手順書は整備されているか?
 ・治具、補助具が正しく使われているか?
 ・複数のことを同時に行う作業はないか?
 ・異常発生時の報告、処置方法の手順は決められているか?
 ・設計変更、工程変更など発生時の手順は明確になっているか?
 ・準備、工程を流して確認、判定、正式に生産開始の手順が確立しているか?
 ・日常の管理項目、点検項目を明確にして確認を行っているか?
 ・問題が発生したら、放置せず、すぐに対策を講じているか?
 ・作業方法、作業環境などの改善を日常的に実施しているか?
 ・作業者、作業状況の問題を見える化しているか?

 (内的)
 ・身体・精神的健康は保たれているか?
 ・プレッシャーや焦りを感じているか?
 ・体調は悪くないか?
 ・上司や同僚と信頼関係が構築されているか?
 ・人の配置、健康状態管理、残業時間管理を行っているか?

④組織風土要因
 ・現場の日常管理がルールに沿って適切に行われているか?
 ・ルールをいつも守らない人がいないか?
 ・監督者がいつも現場から離れており、作業が野放しになっていないか?
 ・監督者が、ルール違反に対して厳しい姿勢で臨んでいるか?
 ・監督者自ら、作業に没頭していないか?

3.ヒューマンエラーの原因究明と対策
  (不良原因解析2段階法による)
ヒューマンエラー対策は、ミスを犯した作業者に注意することは必要だが、
それだけで済ませてはいけません。
 ①「因果関係」とミスを誘発した「現場ルールの原因」を究明し、それを
  取り除くこと。
 ②なぜミスの発生・流出を防げなかったのか?「共通ルールの原因」を究明
  し是正すること。
再発を止めるには、この2段階の対策が必要になります。
2段階法.jpg

●一段階目・・事実の把握・因果関係/ミスを誘発した現場ルールの原因と対策  
 ①情報要因:伝達手段、会議(朝礼、現場ミーティング)のルール見直し 
 ②人の要因:熟練度不足、教育不足に対する再教育実施(教育訓練ルール見直し)
 ③ハード要因:設備・治工具、作業環境の対策(管理ルール見直し)
 ④ソフト要因:作業指示書の見直し、順守徹底(職場巡回ルール)
   
  (注)内的要因については、労働安全衛生問題として別途対策します。  

●二段階目・・ミス発生・流出を防げなかった共通ルールの原因と対策
 ①工程設計・・・予防対策組み込みのルール、過去不具合フィードバックルール
 ②4M管理・・・異常検出・処置ルール、情報伝達ルール、初期流動管理ルール
 ③検査・・・検査方式設計ルール
 ④組織風土・・・社内価値観、暗黙のルール

現状のルール(規定)を基に、その内容の不備、欠陥を洗い出して、修正、改版
配付し、周知のための教育、啓蒙を実施する。

対策のレベルは、下記の様になります。
 ①不具合現象の除去(廃棄、修正、その他物理的な処置)
 ②人に対する再教育
 ③作業指示書などの現場ルールの改訂
 ④指示書に基づく再教育と実施確認(是正と再発防止)
 ⑤二度と発生、流出させないための共通ルール改訂(水平展開・類似問題の予防)

①または②だけでは、同じ不具合が再発します。
③、④、⑤まで実施することによって再発防止が図られます。

大切なことは、「しくみ」の不備や欠陥を是正し、2度と発生しない
「しくみ」の強化を図って行くことです。

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 合同会社高崎ものづくり技術研究所代表の濱田です。
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 設計、製造、品質管理、海外工場管理などの実務経験45年
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