多品種少量生産工場の多能工化につて考えてみます。
工場では、準備作業や運搬作業、問い合わせなどの直接作業以外の作業が
増加しています。それらの意作業についても多能工化する必要があります。
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日本では、1人1人が長時間働き、沢山の仕事をこなして評価される文化が
まだ根強く残っています。
しかし、最近の職場はサービスの多様化や、多品種少量生産により仕事量
の変動が大きく、また間接作業が増える傾向にあります。
■ 一部の社員だけなぜ忙しいのか?
ところで、仕事が特定の人に集中するのはなぜでしょうか?
限られた時間のなかで、後輩をじっくり育てる余裕も無いため、先輩たち
は「自分でやった方が早い」と考えてしまい、若手のスキルは伸び悩んで
います。
「スキルがない若手には任せられない」と、中堅層はさらに仕事を抱え
込み学びのチャンスがない若手は効率的な仕事の方法が分からず、結局
みんなでダラダラ残業。そんな悪循環が、職場の「生産性」を低下させて
います。
一部の社員だけが仕事を抱え込む理由は、これだけでは有りません。組織
チームとして仕事を分担する、「組織の力で仕事をする」という意識が
薄いためです。
他人に初めての仕事を委ねるのは、時間もかかるし、面倒なことです。
それでもチーム内に「自分と同じ仕事ができる人」を増やすことは、長期的
にみれば全体の経験値を上げることにつながり、さらに、「自分でやった
方が」と仕事を抱え込んでいては、今後も同じような仕事を全部自分で
やらなければならず、組織としての能力を十分に発揮できない事になり
生産性も向上しません。
■ 多能工化の目的
そこで、多能工の対象業務として
(1)製造ラインの直接業務
(2)製造ラインの間接業務
(3)間接職場の業務
多能工のしくみは、トヨタ生産システムのなかで工作機械の“多台持ち”
さらに1人が複数の異なる工程を受け持つ“多工程持ち”化を進めたこと
が始まりとされています。現在では、多台持ち、多工程持ちの考え方を
間接業務へも適用する必要性が生じています。
「基本業務の洗い出し」と「業務の見える化」を行うことによって、隠れ
た問題が浮かび上がってきます。いままで、個人の裁量で行っていた業務
を明らかにすることは、作業者自信の意識改革にもつながります。
この考え方は製造業にとどまらず、サービス業にも適用が可能です。
分かり易い例では、スーパーマーケットは、時間帯によって各職場の繁閑
が大きく異なる業態です。また戦力の大部分はパート従業員です。そこで
売場やレジだけでなく、総菜の調理、仕込みまでいろいろな仕事をこなせる
多能工として教育します。
各業務を全員がローテーションで体験するなど、一人ひとりが複数のスキル
を覚えて互いにカバーしあうことで、人員を大幅に削減すると同時に、全体
としての効率アップ、サービスの質の向上が期待できます。
■ 多能工化手順
多能工化の手順は以下の通りです。
(1)必要技能の明確化
必要な作業と技能の明確化
標準作業の設定:数種類の製品を指定し、標準作業の内訳をリストアップ
(2)多能工の現状の把握
各作業者の多能工化の現状を把握する(スキルマップ作成)
現状の作業者の習熟状況を記入し、それを基に、訓練すべき作業を把握
する
(3)目標を立てる
工程の難易度と、指導者の時間的制約を配慮し訓練のスケジュール、
到達レベルを決定する
(4)訓練のための環境整備
・訓練時間と工数を確保する・・・余力人員、残業時間活用
・トレーニング専用ラインを設ける・・・作業台、設備・治工具
・必要なツール類の準備・・・作業標準、現物見本
・指導員を指名し、公式化する・・・多能工優秀者
・訓練方法のルール化を行う・・・標準化、Know-Why教育
(5)訓練の実施
作業のレベルを、「指導できる」「自立して作業できる」「指導を受け
ながら作業できる」の三段階に設定する
訓練のステップは
①基本技能訓練
②現物見本によるKnow-Why訓練
③指導員による実作業での説明と訓練(特にカン、コツ部分)
④指導員とペアで実作業訓練
⑤習熟作業者によりサポート
(6)注意点
・一定期間後、進捗の評価を実施し、結果をスキルマップ表に記入
する。
・作業標準・作業手順書は必要最小限の内容にとどめ、OJT主体で
進めて行く
・「自分がやって見せて」次に「実際にやらせてみる」、また口では
表現できないポイントも理解させる
・OFF-JTでの理論面の補足、ビデオ復習など、教育メニューを組み
合わせて行う