品質管理では、お客様の期待に応え、満足が得られる製品やサービスを提供することです。
しかし、この「お客様第一主義」には、意外な落とし穴があります。
「仕様書通り設計した図面」「図面通り作られた製品」「試験・検査に合格した製品」
を良品として市場に出荷してもトラブルを起こすということは、お客様第一主義
の品質管理ができていないことを示しています。

★まず正論を述べるとこのようになります。
お客様は、製品やサービスの「品質」が良いことを前提に購入します。
当然、企業でも、全員が「品質を第一」とした考え方で、品質管理を推進する
必要があります。
お客様を最重要視する考え方を「顧客志向」とか「マーケットイン」「お客様
第一主義」などと呼んでいます。
自分の担当している仕事について考えるとどうなるでしょうか。
自分の仕事の後の工程を引きついで行く人「後工程」が自分の「顧客」になり
ます。「後工程」の人に品質の良いものを渡すこと、喜んでもらえる仕事を
することが重要になります。
「後工程もお客様」という考え方で、皆が仕事をすればよい結果に結びつき
ます。
★次に、「お客様第一主義」の落とし穴について
ある調査によると、何らかの形で「お客様第一主義」を企業理念に盛り込んで
いる会社は日本企業の実に7割以上になるそうです。
しかし反面「お客様第一主義」を掲げている会社は、実際はそうなっていないか
経営者に問題があるということが多いのです。
小学校の廊下に「廊下は走らない!」というポスターが貼ってあるのと同じ
理屈です。単に「お客様第一主義」という言葉だけをスローガンとして挙げても
社員には具体的に何をすればいいのか?伝わらないのです。逆にお客様の要望
だからと赤字垂れ流しのままだと会社がつぶれます。
★本当の「お客様第一主義」とは
今の時代、顧客第一をあげない会社はまずありません。
「顧客第一」とはなにか?それを具体的に社員に分かるように表現し、具体的
アクションや評価に結び付くものにしなければなりません。
一例を上げると
(1)設計者は、顧客と取り交わした仕様書に基づいて設計し図面をアウト
プットします。しかし、図面にはお客様の満足する要望が全て盛り込まれて
いるでしょうか?
(2)次に製造部門は、設計からアウトプットされた図面に基づいて加工や
組立を行いますが、出来上がった製品は、お客様が満足するものでしょ
うか?
(3)また、市場で問題が起きないように評価試験を実施しますが、その
内容はお客様のすべての使用条件、環境条件は満足しているでしょうか?
(4)ある自動車会社のトップが、「リコール=悪と考えないで頂きたい。
間違いが見つかったときには即直してお客様の安全安心を確保する。
ご理解いただきたい」と述べたことが報道されました。会社のトップが
このような発言をすると、社員は一体どのような行動をとるでしょうか?
「不良はある程度市場へ流出しても許されるのか?」と思うでしょう。
「リコール=悪」である、「問題は絶対市場へ流出させてはいけない」と
きっぱり宣言すべきです。
流出不良は100ppmでも、10PPMでもなく、「ゼロ」でなければならない
のです。
そう考えると「お客様第一主義」と言っても、「仕様書通り設計した図面」
「図面通り作られた製品」「勝手に決めた評価試験に合格した」というだけ
の自分の都合のいい解釈ででしかなく、そう簡単にお客様第一主義が実現
出来ないことが分かります。
良品として市場に出荷した製品がトラブルを起こしクレームとなるのは
お客様第一主義の品質管理ができていないことを示しています。
その意味で、設計部門、製造部門、品質保証部門で、それぞれお客様第一
主義とは何か?お客様の期待に応えるにはどうしたらよいかを、改めて
真剣に考えてみる必要があります。
このサイトでは、皆さんにそのことを考えて頂くきっかけになる記事を
配信出来ればと考えています。