トヨタ生産方式ではムダを「付加価値を高めない各種現象や結果」と定義し、
作り過ぎのムダ、手待ちのムダ、運搬のムダ、加工そのもののムダ、在庫のムダ
動作のムダ、不良を作り出すムダ、という代表的な7つのムダを撲滅すべしと
しています。
しかしそのことは決して「経営として利益を創出する真理」ではありません。
現場にあるムダを撲滅するだけで利益が増えることはありません。
現場管理者の視点から見た生産性向上の進め方とは?
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トヨタ流の7つのムダを取ることは、製造現場の改善活動としては大変重要
な事です。しかし、非常に怖いのは盲目的にこれだけが目的だと信じ込むこと
なのです。
例えばムダの中で最大の無だと言われる在庫のムダですが、在庫を削減する
ことで、作り過ぎのムダを削減します。また膨大な在庫を管理する費用を削減
するうえでも有効です。
しかしやみくもに在庫を削減した場合、欠品による機会損失や、日常的な資材の
督促によって、逆に管理費用が増大する場合があります。
つまり、過剰在庫の場合にはそれに要する管理費用は業務費用の流出として考え
られますが、ある一定以上の在庫削減には注意が必要になります。
例えばネック工程に設置されるバッファーの量を少なくすれば仕掛在庫を削減
させますが、工場内のさまざまなトラブルの影響を受けやすくなり返って生産性
を阻害する事になります。
東日本大震災や熊本地震で工場の操業がストップすると、自動車組立工場の操業
が止まるというあの現象です。
また「手待ちのムダ」は撲滅しなければならないわけですが、上記の在庫のムダ
と同じことが言えます。
例えば、AからDまで4つの工程があり、B工程の能力が一番弱い(ボトルネック
工程)だとします。B工程以外のA、C、Dの工程は能力的には余裕があり、手待ち
が日常的に発生しています。この製造ラインの効率を高める(稼働率を上げる)
ために、各工程の人員を削減したらどうなるでしょう。
手待ち工程を無くせば、全員が常に忙しい状態になり、一見効率的に見えます。
しかし人員削減で能力がバランスされた結果、すべての工程がボトルネック工程
になってしまいました。
全員がボトルネックということは、非ボトルネック工程が持っていた生産の遅れ
を吸収する「保護能力」が失われてしまい、ひとたびトラブルが発生すれば
大混乱に陥ってしまいます。
ここで注意が必要なのは、整然と流れるトヨタの工場と、多品種少量の部品加工
工場では、考え方が全く違うと言うことです。