日本の多くの中小製造業は、「多品種少量、受注加工生産型企業」です。
しかし、品質管理の考え方は、大量生産時代に欧米から学んだ「統計的品質管理」
がベースとなっており、QC7つ道具やQCストーリーを用いた改善活動(TQM)
を基本としています。
事例研究・実習で品質改善の実務能力向上を図る
DX、FMEA/DRBFM、再発防止手順など

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一般に「製造品質向上」させるためにどのような手段を講じているでしょうか?
今までの品質改善は事後のデータを解析し対策する手法がとられてきました。
代表的な手法はQCストーリーとQC七つ道具です。
これは、繰り返し同一製品が生産される場合には有効な手段でした。
時間をかけ、生産を重ねるごとに品質は安定してきます。
また、統計的品質管理や、抜き取路検査法では、ある確率で不良品の混入は
避けられません。そこで検査を厳重に実施して、2重に検査する、人出を掛けて
全品を検査するなどの方法を取りますが、コストはその分上昇します。
しかし、検査を省いた結果、不良が流出するなら、市場での処置、回収作業など
社内コストと比べ膨大なコストが掛かります。また、信用も失い、無形の損失も
大きくなります。
多品種少量生産工場では、上記のような品質管理では品質の確保は困難となって
います。これでは品質が安定する前に生産が終ってしまいます。
品質管理の目的は、「コストを掛けずに品質向上させる」ことです。
それには、製品や工程の不適合(トラブル)を未然に防止し、検査は行わなく
てもトラブルが起きないよう、管理のしくみや、教育訓練、作業手順、設備、
測定機の配置を事前に考え万全な体制を敷いて生産をスタートさせる手順を
確立しなければなりません。
本来の「品質管理」の目的は、トラブルを未然に防止することです。
そこで多品種少量生産工場で守るべき『品質管理の基本』7つのポイントについて
解説します。
(1)三現主義に基づくアクション
品質管理では事実に基づく判断とアクションンが必要になります。
もぐら叩きで終わることなく、因果関係を究明し、しくみの悪さを是正する必要
があります。
しかし、事実とは何かを理解していない場合が多いのです。例えば「作業ミス」
は事実としても、これでは現場を見たことにならないため、対策も的外れになって
しまいます。
●現場重視: 現場に行くことは重要だが、現場の何に注目するのか?を理解
していなければならない。
①人の状況(作業者、監督者)、
②機械設備、治工具の状況
③工程全体、作業環境
●現物重視: 製品の状況を詳しく観察する。
①単なる「傷」ではなく、製品のどこに、どれくらいの大きさの傷が、
どの方向についているのか?打痕なのか、擦り傷なのか?拡大鏡を
使って丹念に調べること。
②発生頻度を調べる。
③部品、材料の状況についても同様。
④良品との比較も行う。
●現実重視: 時間的空間的な変化、事実を確認する。そのために日常管理
の状況を見える化すること。
①生産、品質の推移記録
②4M変化点の有無
③測定データ・ばらつき・統計
(2)日常管理のサイクル
トラブルを防止するためには、「日常管理の改善サイクル」が正しく回って
いなければなりません。
①工程設計のしくみと日常管理のしくみを確立する
②ルールを順守し、異常や変化点の発生が見えるように管理する
③異常が見られたら即座に原因を解明して対策する
(現場のカイゼン活動)
④日常管理の仕組みの不備を指摘し対策する
問題を放置したり、正しい管理手法を知らなければ改善サイクルは正しく回らない
また、日常管理に仕組みも改善されない事になります。
(3)見える化と4M管理
必要な情報を現場でリアルタイムに見えるようにすること、そのことにより
問題や異常にすぐに気づき、迅速に解決し、再発防止を打てるような仕組みを作る
①何を見える化するのか?(工程の重点特性と4M要因の変化)
②情報のジャストインタイム化(必要な情報を、必要な時に、必要な場所・人へ)
③事実情報を見える化する
また変化点管理4つの重要ポイントとして
①異常を定義する
異常が発生するのは、何らかの変化点が生じていると考えられるのでそれを
突き止めて対策を講じます。
②重点管理項目を決める
すべてを均一に管理することはできないので、重要製品、重要寸法、重要工程
などを決めて点検点・管理点を定義します。
重点管理では、異常の監視周期の頻度を上げる、工程の点検項目・品質特性
の監視項目を増やすなどの管理方法を取り、異常を漏らさず検出します。
③予測可能な変化点発生時の管理方法の明確化
設計変更、工程変更、段取り替え、人の交替など、事前に変化点発生時期や
内容が分かっている場合は、事前に準備する項目や手順を決めておき、それ
ぞれに応じて①、②を適用します。
④予測不可能な突発的な変化点発生時の管理方法の明確化
停電、不具合発生による作業中断、機械の故障など、突発的に発生する変化点
の場合には、あらかじめ発生時の処理手順を決めておきます。
(4)基本ルール(日常管理のしくみ)を守るしくみ作り
基本ルールには、明文化されたルール、暗黙のルールがあります。人依存の
暗黙のルールは、見える形(明文化)することが必要です。
基本ルールを守るためには
①理解する
②守る
③問題が発生したら直す
④再教育する
のサイクルが回って、はじめて生きたルールと言えます。
ルールを守るための手段としては
①点検・・・守っていることを自ら確認
・製造条件記録・指さし呼称・設備点検記録・資格認定者作業
・材料使用履歴・自工程検査
②トヨタ式自働化・・・異常、標準外れ検出
・ポカヨケ・条件外れ時の警告・設備自動停止・全自動検査装置
③第三者の目・・・検査、承認、認定
・第三者検査・工場監査・工程監査・管理者による巡回点検・管理者の承認
(5)3段階のトラブル未然防止
品質不良が流出しないためには、製造工程の3つの段階で対策を講じておく
必要があります。
①工程設計段階
QC工程図作成段階、試作、あるいは工程を準備する段階で、あらゆる
トラブル発生を予測して、事前に対策を組み込んでおく。(予防対策)
例えば、フェールセーフ機能を組み込む、FMEAで検討漏れを検出する
②製造工程で、普段とは違う異常な事象、不良ではないが予兆(ばらつき大
・規格ぎりぎり)を発見して、原因究明と対策を行う。(4M変化点管理)
また、工程にも自働化、ポカヨケ等のトヨタ式「自工程完結」の手法を
取り入れる。
③お客様に流出させないために、自動検査ロボット等の検査システム等を
導入する。また第3者検査、職場巡回、工程監査実施など
(6)潜在するリスクへの対応
PL法では、被害者はメーカーに故意や過失がなかった場合でも、製品そのものに
「欠陥」があったことを証明できれば、メーカーを提訴することが可能になり、
製品の欠陥有無が重要視されます。
製品の欠陥は通常、次の3種類に分類できます。
①設計上の欠陥
②製造上の欠陥
③指示・警告状の欠陥
これらの欠陥が、市場へ流出した場合に事故や災害につながる恐れがあります。
そこで、あらかじめ設計工程、製造工程で、市場で発生し得る潜在的不具合を
すべて洗い出す仕組みづくりが必要です。
(7)ヒューマンエラー予防対策
多品種少量生産工場で最も多く発生するトラブルはヒューマンエラーです。
そこで、生産を開始する前に、あらかじめ、ヒューマンエラーに特化した予防策
を講じておく必要があります。
①予防処置評価シートの運用
生産を開始する前に、起こり得るヒューマンエラーを、各工程ごとに列挙し
発生防止策、流出防止策を講ずる。生産が始まる前に実施し、QC工程表に
対策を盛り込む
②ヒヤリ・ハット報告
設計変更、工程変更などの初期品に対し、作業者および現場監督者により
「ヒヤリ」とする状況を列挙し対策を実施する。結果をQC工程図へフィード
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