誰も教えない是正処置の本当の意味は?(再発防止、水平展開、予防処置)高崎ものづくり技術研究所

製造業のクレーム対策に於いて是正処置とはどのような処置でしょうか?
また再発防止、水平展開、予防処置の違い、更に、標準化と歯止めについて
も考えてみます。



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1.是正処置
「是正」を辞書で引くと「誤ったことを正しく改めること」と出ています。
しかし、ISO9000でいう是正は、「組織は、再発防止のため、不適合の原因を
除去する処置をとること。」と記載されています。

つまり、同じ不適合が二度と起こらないように(再発防止)、不適合の発生原因
を取り除くため、以下の処置を規定しています。
 a) 不適合の内容確認
 b) 不適合の原因の特定
 c) 不適合の再発防止を確実にするための処置の必要性の評価
 d) 必要な処置の決定及び実施
 e) とった処置の結果の記録

では、再発防止を確実にするために、具体的にどのようなことを行えばいいで
しょうか?

2.再発防止
問題が起こると、必ず「原因を速やかに究明し、二度と事故を起こさないように
万全の再発防止対策を講じ・・・」というのが決まり文句となっていますね。

しかし間違ってはならないのは、「誤ったことを正しく改める」だけでで終わら
せてはいけません。

不適合品に対して、手直し、修理、廃棄、人に対しては、注意勧告、教育など
作業方法に関しては、「手順書の見直し」「基準の明確化」「検査の強化」
などです。
これらは「修正処置」であり、「再発防止対策」ではありません。
では、何を行えば「再発防止」になるのでしょうか?

①「修正処置」で決められたことが正しく実行されるように管理すること
 手順書を修正する→修正内容を教育する→正しく実行されているか確認する
②もし正しく実行されない、あるいは決められた通り実行しても不適合が発生
 する場合は更に追加の「修正処置」を取ること

③再発防止処置の決定と承認、その実行の責任など必要な事項を対策の手順に
 含めること
 ①、②により一定期間(目安:1か月~3か月)確実に実施されているかを
 責任者が確認し承認する

再発防止は、①~③の継続的な取り組みを含めた「改善活動」により初めて有効
なものとなるのです。しかし、ほとんどの場合、手順書を修正する、教育するで
終わってしまう、また、決めたことが守られないなどの悩みも多く聞かれます。

では、どのようにすれば確実に再発防止が図れるでしょうか?
ここが最も重要であり、「忙しいから」「ベテランはルールを守らないから
など、様々な障害が立ちはだかります。
そこで、管理者の力量が問われることになります。何とかして再発を食い止め
ようとする地道な努力を自ら汗をかいて実行していくしかありません。

そして、上からの押し付けルール、作業に負担のかかるルールはやめ
暗黙的に自然に守られる環境を整えながら、ルールを根付かせることです。

つまり、悪い習慣を、良い習慣に変えていくこと、管理者の粘り強い取り組み
が求められるのです。

再発防止、水平展開、予防処置の関係

3.水平展開
是正処置の効果をより大きくしていくための有効な活動は「水平展開」です。
ひとつの改善で得られた情報は、かならず、その結果を同じように活用できる
ところはないだろうかと考えることが大事です。
 a)同じような構造の機械はないか
 b)同じような作業方法をしているものはないか
 c)同じような材料を使っているものはないか
 d)同じような設計をしている製品はないか

どこまでが是正処置で、どこまでが水平展開なのかは厳密には区別が付けられ
ない場合も多いと思います。しかし、是正処置を行うときにはできるだけ、
考えられる範囲で水平展開を図り、同様な不具合発生しないようにします。

4.予防処置
「予防処置」とは「不適合やロス、ミスが発生することをあらかじめ予測し、
防止するために、その原因を除去する処置を決めること。」と定義できます。
ISO9000では「予防処置」について以下の事項を規定しています。
 a)起こりうる不適合及びその原因の特定
 b)不適合の発生を予防するための処置の必要性の評価
 c)必要な処置の決定及び実施
 d)とった処置の結果の記録
 e)予防処置において実施した活動のレビュー

つまり「是正処置」は一度発生した事実「顕在的要因」に基づく再発防止策で
あり「予防処置」はまだ発生していないが、「今、こうしておいた方が良いの
ではないか」という予測による対策することです。つまり「潜在的要因」を
除去する発生防止策です。
FTAやFMEAは予防処置のツールとして用いられます。

5.標準化と歯止め
歯止めとは標準化と管理の定着のことです。
「標準化」とは、だれがやっても同じようにできるような仕組みにすること
ですが、標準書とか手順書、或いは作業書といった作業をするためのマニュアル
を見直す、または新しく作り、そして、これを皆で順守するということが標準化
です。

決めごとだけ作って、それを実行しないと意味がありません。
決めたことがちゃんとできているかという点検やチェックが必要です。そして
それはやったかどうかの記録を残す必要があります。それが「管理の定着」に
なります。

さらに新しい人が加わった場合は、その作業手順を教えなくてはなりません。
つまり「教育」が必要ということです。
これら、「標準化」「教育」「管理の定着」を5W1Hで整理し、いつ・どこで
・誰が・何を・どのようにとするのかを明確にします。

繰り返しになりますが、管理者のリーダーシップにより、どうすればルールを
みんなで守り定着することができるか?知恵と粘りの努力が必要となるのです。

品質管理活動とは、不適合の発生を防ぐために、日常の業務の中で、管理の定着
を図り結果をレビューするという継続的な取り組み(PDCA回す)を行うことを
言います。

もっと詳しく知りたい方は

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 合同会社高崎ものづくり技術研究所代表の濱田です。
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