検査はなぜ必要か?製造業の事例解説・改善の進め方

今、検査には何が求められているでしょうか?
検査とは、辞書を引くと、「基準に照らして、適・不適や、異状・不正の有無
などを調べること。ある基準をもとに、異状の有無、適不適などを調べること」
などとなっています。

また、JIS Z8101-2によると、「検査とは、品物またはサービスの一つ以上の
特性値に対して,測定,試験,検定,ゲージ合わせなどを行って,規定要求事項
と比較して,適合しているかどうかを判定する活動」と定義されています。

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最近、検査の不正の問題がクローズアップされています。

工場の製品は、検査して合格・不合格を調べたり、判定したりするだけでなく
大事なことは不合格品を絶対に出荷してはならないことです。
つまり、検査員の一番重要な仕事は、不良品を絶対に出荷しないこと、場合に
よっては、工程を止めること。そのような絶対の権限を持つのが検査部門の
役割です。

そのため、検査制度、検査員の資格、権限、検査員教育はどうあるべきかなど
をよく考える必要があります。

1.第三者検査制度
上記の考えを基に検査制度はどうあるべきかを整理してみます。
(1)出荷停止、工程停止基準
検査は選別工程として、製造工程の一つとして組み入れることは避けなければ
なりません。これでは、検査から付加価値は生まれません。
合否の基準を明確にして、不合格品は絶対出荷しないという強い権限を持たせ、
組織上も製造部から独立した組織とすべきです。

(2)検査員の資格
検査員は、検査員としての自覚を持ち、誇りをもって検査を行い正しい判断を
下すことが求められます。そのため、検査員は、資格者として権威あるものとし
尊重されなければなりません。従って、それだけ経験と知識を有する優秀な社員
を割り当てなければなりません。

(3)検査員教育
検査員は、社会人、また人として尊敬される人格を備えた人物であるべきで
検査員として認定されるまでには以下のような教育訓練プログラムを整備する
必要があります。
 ①知識教育・・検査規定、抜き取り検査表、JIS規格、関連法など
 ②実技訓練・・OJTの実施
 ③測定技術・・測定具を使った測定、限度見本を使った比較判定
 ④不良見本、クレーム品による定期的な教育
 ⑤検査員の心構え・・不具合品は絶対に外に出さないという強い意志と行動

2.小規模企業における検査制度
小規模製造業においては、上記のような検査制度を設け、検査員教育を実施する
ことが困難な場合も多いと考えられます。また、独立した検査員を置くことも
難しい場合もあると思います。

しかし、不良品や、規格を満足しない製品は絶対に工場から出さないという
全員の強い総意のもとに、実現可能な仕組みを整備しておくことが重要です。
 ①作業者一人一人が検査員としての役割を担う(トヨタの自工程完結の考え方)
 ②多能工は、必ず検査もできるように教育する
 ③問題を放置せず、全員で解決にあたる

企業の不祥事は、現場の実態を把握せずに問題を放置している企業体質、特に
管理層のマネジメント力欠如が指摘され、日本の製造業に共通した問題と考え
られます。

これは、大企業に限らず中小企業においても同様で、根深いものがあります。
熟練技能者の高いスキルのみに支えられてきた「日本品質」の限界と捉える
ことができます。

3.自工程完結型の生産ライン
もともとトヨタ生産方式で考えられた自工程完結とは、検査員を置かずに「ライン
・機械・冶具などのつくり込みにより、自分の工程でつくったモノは自分で品質
を保証するという考え方のことです。後工程はお客様という考えで後工程に不良・
不適合を流さないように、作業者自身が自分の行った作業に責任を持つと同時に
「自動化・ポカヨケ」など工程の改善を行うことを指します。

4.多品種少量生産の自工程完結型作業とは?
多品種少量生産の工程では、どうしても人による判断、作業が主体となります。
つまり一つ一つの意思決定が正しく行われることが必要になります。

人は誰しも、失敗しないように気をつけて仕事に取り組んでいるはずです。
ところがそれでも、ミスややりなおしの必要性はできてしまうものです。そして
それは、「やってはいけない」「起こしてはいけない」といった単なる「意気込み
や心がけ」だけではうまく行きません。重要なのは、もっと科学的に仕事を進める
ことが必要であり、「人間の意思決定工程における自工程完結」のしくみを採用
することです。

しかし、意思決定工程に対して、生産ラインで使われる作業手順書のようなもの
を作成することは非常に大変な作業と思われます。しかし、その意思決定の工程
を細分化し、「**する」「**する」という連続した工程(プロセス)と、
経験や会得した暗黙知のノウハウ部分とを分けて考え、連続したプロセスは徹底
して標準化を行い、ノウハウ部分は熟練者から教えてもらうようにします。

例えば、機械加工を例にとると
 ①図面、指示書(インプット・合否基準と判定)
 ②必要な刃物準備、機械のセット方法などの検討(判断・合否基準と判定)
 ③プログラムの入力、加工(処理・合否基準と判定)
 ④熟練作業(デジタル化した判断基準+熟練者の最終判断)
 ⑤製品の測定(合否基準と判定)
 ⑥次の工程へ渡す(アウトプット・合否基準と判定)

というように、細分化された各作業プロセスにおいて、必ず良否判定基準を設けて
合格なら次のステップに移行するようにします。判定方法や判定基準を曖昧のまま
作業を行うと必ずミスが発生します。

このように多品種少量生産においては、人の作業に於ける自工程完結の作業プロセ
スを確立することが重要になります。
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 合同会社高崎ものづくり技術研究所代表の濱田です。
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 設計、製造、品質管理、海外工場管理などの実務経験45年
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