事例のイグニッションスイッチ部の発煙事故は、可動接点部に使用するグリス
の選定が不適切で、耐熱性の低いグリスを選定したために、炭化して導通による
発熱、発煙に至ったものです。
これは、設計時において、事前にこのような発煙事故を予測できなかった、また
短期間の評価テストでは、グリスが炭化しなかったために不具合現象は発生せず
設計ミスは発見できなかったものと考えられます。
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結果的に、市場において不具合が発生し、リコールを余儀なくされましが、では
守りから攻めの設計手法に改善するには、どのように進めれば良いでしょうか?
事故や災害につながる起こしてはならない不具合、想定外の不具合を未然に防止する
設計フローを示します。ここでは、予測できない不具合をすべて洗い出し、市場では
絶対に事故や災害を起こさない設計プロセスを確立します。

この設計プロセスで重要なポイントは、設計技術者が、設計ミスによって市場で
どのような問題の発生が予想され、どのような経済的損失(リスク)が生じる
だろうか?と考えることです。(顧客志向)
ここで使われる設計手法は、FTA/FMEA/リスクアセスメントです。
まず、過去トラブル集を参考に過去発生した不具合はすべて対策済みかどうか
をFTA解析手法で確認します。次に想定外の不具合を洗い出す方法として
FMEA手法を使います。手法は、単独で使用しても効果は上がりません。
目的に応じた使い分け、組み合わせで効果を発揮するのです。
あらかじめ想定できる不具合は、FMEAを用いず、従来の原因解析、対策型の
改善手法を用います。
では、発煙事故発生までのプロセスと、グリスの選定・評価手順を具体的に説明
します。
発煙事故は、高温環境下でグリス成分が炭化し、絶縁不良となって接点間が導通し
発熱し、その発熱によって発煙に至ったものです。
発煙事故は想定外としても、グリスの炭化に着目すると、高温に熱せられると成分
が炭化することは設計時点で予測することが可能です。
「グリスの炭化」、「可動接点の摩耗」は、性質の変化、構造の変化(摩耗、劣化・・)
で、これを「故障モード」と呼びます。そこで、故障モードリストを設計ノウハウ
として蓄積しておき、設計時点で参照することにより、その故障モードによる不具合
が発生した場合、どのような故障を引き起こし、更に事故や災害につながるリスク
がどの程度なのかを予測することが可能になります。(FMEA/リスクアセスメント)
故障モード発生から市場における故障・事故想定し、リスクに応じた対策を実施
する手法は、ボトムアップ型の設計といい、従来の原因解析・対策型の設計
(トップダウン型設計)と全く発想が異なります。

<発煙事故発生プロセスと未然防止対策>

<故障モードの種類>
FMEAは、故障モードをすべて抽出し、その発生頻度はどれくらいか、設計
工程で検出可能か、発生が予される故障が、市場でどのような影響(リスク)を
与えるのかの3項目について評価し、その程度によって、対策の方法を決定する
ものです。
FMEAは、未知の想定外の故障(潜在している不具合)をすべて洗い出し、
リスクを予測することが可能な手法です。