工場のヒューマンエラーは、「うっかり」とミスだけでなく、組織の風土や
その場の空気に影響され「故意」あるいは「仕方なし故意」によって行われる
手抜き、近道、改ざんなども含まれます。
手抜き、近道、改ざんなどの違反行為はなぜ後を絶たないのでしょうか。
●日本企業の場合、不正が発覚しても、経営陣も気づかず、首謀者もあいまいな
ケースが多いという特徴があります。
仕事をする上で現状が非効率であったり、不正がある場合には、本来、現状を
正すべきですが、その際には、多くの利害関係者と交渉し、説得するという
多大な労力を使う仕事が待っています。
優秀な人ほど、その労力の大きさをすぐに予想できるため、現状のまま続ける
ほうが合理的だと判断してしまいます。
その判断は特定の誰かが明確に命令したわけではなく、関係者同士が暗黙のうち
に損得計算をし、その結果のもとに、互いに合理的に行動することによって、
組織としての一連の不正を許してしまうのです。
そして不正が何年も続けば、それを正すための労力は、さらに大きなものになり
そして不正が何年も続けば、それを正すための労力は、さらに大きなものになり
ます。新たに配属された従業員が、現状の不正に気づいたとしても、変革する
ことはほぼ不可能であり、不正は合理的に継続されてしまうのです。
では、このような不正は、どうすれば防げるでしょうか。
●一つ目は、何でも話しやすい、風通しのよい組織風土を作っていくことです。
そうすれば、不正の情報も上層部へ上げやすくなるでしょう。
●二つ目は、大きな改革が必要な場合、内部昇進の幹部や経営者だけでは、力関係
を見れば、波風立てない方が合理的と判断されてしまいます。しかし、現在は
ネット社会であり情報は瞬く間に拡散します。内部の不正は、明るみに出た場合
企業のリスクとして決して低いものではないことを知ることが重要です。
そのため、「内部通報制度の導入」「内部監査における不正リスク対応」「研修等
による役職員のコンプライアンス意識向上」などがあげられます。
●三つ目として、最終的には、損得計算ではなく、「正しいことかどうか」という
人間の価値判断にかけるしかありません。
日本人の弱点は、こうした価値判断を避けるところです。主観的な価値判断より
客観的な状況により行動しようとします。なぜなら、「みんながそうする」という
保証があるため、責任を取らなくて済むからです。
不正を防ぐには、「正しいことをやる」という責任を伴った価値判断と行動が
できる人材が求められるのです。