4M(Man/Machine/Method/Material)管理、4M変化点管理の体系化手順
について詳しく解説します(長編コラム②)
★無料サービス
第二章 4M変更管理の体系化
1.概要
4M変更管理を体系的に捉えた全容を下図にしまします。
管理の要素は①〜⑦となります。
①4M変更管理対象の定義
②設計変更・工程変更管理
③初期流動管理
④日常(変更)管理
⑤日常(変動)管理
⑥重点要因(5M)・重点特性(QCD)の監視
⑦異常処理手順
管理のサイクルは、
(P)計画・・・管理の対象の定義づけとランク付け
(D)実行・・・設計変更・工程変更管理/初期流動管理/日常変更管理
(C)チェック・・・重要要因、重要特性の監視と異常検出
(A)アクション・・・異常処理手順による対処
となります。
間違いなく的確実行するための重要なポイントは、それぞれの手順の5W1Hを
明確にすることです。どこの部署が責任を持って判断し、実行するかをはっきり
と決めておかないと、確実でスピーディーな対応ができません。
4M変更管理では、事前に組織や責任者の明確化と各責任と権限を決めておかな
ければなりません。また、顧客に対して報告が必要かどうかのガイドラインを
決めておき、個別の事象ごとに設計部門、品質保証部門が中心となって協議し、
最終的には品質保保証部門が決定します。
以上の手順を、あらかじめルール化して運用します。
では、詳しく手順を説明します。
2. 4M変更管理対象の定義
まず、4M変更管理の対象となる製品やイベント、5Mの条件を抽出します。
a.新規品
・新製品・・・新しい要素技術、新しい開発要素を含む製品
・新用途・・・基本技術は同じで、今までにない用途の製品
b.変更品
・仕様変更・・・お客様の仕様に関わる内容の変更要求
・設計変更・・・社内事情による、寸法、材質、物性など設計仕様の変更
・工程変更・・・設備の新設・増設・改造、加工法、製法、購入先、外注の変更
c.その他
・生産再開品・・・長期間生産を行っていない製品の再開品
・重要品質問題発生品・・・品質問題対策品の生産頭出品
・段取り替え品・・・段取り替え直後の製品
・人の交替・・・スキルを要する工程の人の交替直後の製品
・設備トラブル修正後・・・設備等の修復直後の製品
・トラブル発生時・・・突発トラブル発生時の製品
3.変化点の洗い出しとランク付け
品質に影響を与える変化点を洗い出します。
管理する範囲は、最終的には工場全体が対象となりますが、まずは範囲を限定
して、モデル工程として試行し、順次その範囲を広げていく方法も取られます。
項目としては、4M(人、設備、材料、方法)+計測(Measurement)に関係
するものを以下の観点で抽出します。
(1)顧客の要求項目で承認を必要とする変化点
(2) 過去に発生した製造問題(市場クレーム、工程内不良)の解析結果
(3) ヒヤリ・ハット問題(不良予備軍)の解析結果
(4) 他社事例の解析結果
(5) 工程内観察結果
次に、項目ごとにランク付けを行います。
ランク付けの基準は、重要製品、重要顧客、新規度などを総合的に判断し、例え
ば、Aランク、Bランク、Cランクの三段階に分けます。 品質管理においては
このように、重点指向の考え方で、一律管理ではなく、重要度、優先度に応じて
管理の方法を変えることが重要です。
ランクA・・・品質に重大な影響を及ぼす4M変更
品質保証部門が、変更内容の妥当性を確認・承認、客先に報告
(部品材料変更、大幅な設備、手順の変更、生産場所変更等)
ランクB・・・品質に影響を及ぼす4M変更
品質保証部門が、変更内容の妥当性確認し承認
(軽微な設計変更、工程変更、検査方法変更)
ランクC・・・日常的に発生する工程の変更、または変化
発生部署が管理、結果を記録し、品質保証部門が確認
(作業者、治工具の変更、設備の修理、メンテナンス、校正)
(注意)
ここで、注意すべきは、あれもこれも必要だからといって、管理項目をどんどん
増やしてはいけません。目的は、管理項目を増やす事ではなく、変化点ができる
だけ発生しないように、工程を改善することです。管理項目を少なくして、管理
工数をできるだけ省いていくように改善を実施していくことが重要です。
(重点管理)
4.日常変更管理
4M変更管理の柱である日常変更管理の手順について解説します。
(1)管理の対象
まず、日常業務における変更管理は、以下の内容となります。
●計画的な変更
人・・・ローテーション、休暇対応、生産に応じて増員対応、残業
機械・設備・・・修理、改造、段取り替え、点検、機械代替、治工具変更
材料・部品・・・刃物変更、油脂類変更、副資材変更、使用材料変更
作業方法・・・手順変更、工法変更、サイクルタイム変更、ライン変更
●突発的または、徐々に変化するもの
人・・・一時離籍、突発休暇、休日出勤・勤務シフト変更
機械・設備・・・故障、破損
材料・部品・・・モノ違い、寸法不良等
作業方法・・・ルール不遵守、追加加工、全数手直し、修理、選別
その他・・・地震、台風、水害、火災、事故、停電、その他災害
(2)変化点の把握と対処
これらの変化に対応するためには、変化点の内容、変化の発生した製品の範囲
(ロット・生産数量)、を明確にすること、管理者および関係部署への連絡、
連携などの措置対策ルールを決めておく必要があります。
そのためには、変化点管理項目一覧表を作成し、変化点情報の把握と、変更管理
の実施内容を決めておきます。
機種ごとの重要要因、重要特性を決めて、現状の把握と目標とのかい離を毎日
確認します。その中で、異常・ばらつきを発見し、その変動要因を調査します。
突発的、または徐々に変化する場合の変化点の把握と対応についても
変化点の把握・・・管理図・推移グラフでの異常/日常点検での異常/いつも
と違う
対応方法・・・変化点発生の範囲を把握する/関連部署への連絡/処置・対策
などの内容について、手順化し周知徹底を図ります。
(3)日常管理の注意点
4Mの変化が発生するとヒューマン・エラー(ポカミス)が多く発生する。
そこでポカミスの発生しやすい作業、ルール不順守が起きやすい作業を重点点検
します。
①チョコ亭、設備トラブル
・故障復帰後、品質変化が起こる
・手直しミス、作業飛ばしが起きやすい
・作業性維持のためやってはいけない事をする(アラーム動作停止など)
②品質・安全確保装置の管理
・検査設備、自動停止・ポカヨケ機構の点検
・異常や停止のまま放置がないか?
③やりにくい作業
・やりにくい作業は出来栄えのばらつきが大きい
・不自然な姿勢、自己流作業の有無
・治具、補助具が正しく使われているか
④断続作業
・作業中断、再開時に不具合、作業ミスが発生しやすい
⑤小ロット、マイナー作業、お久しぶり作業
(4)ヒューマンエラーの要因図
「スキル不足」「過失」に対する再教育、ポカヨケだけでは、もぐらたたきの
対策で終わってしまいます。近年、組織・システムのガバナンスに起因する
様々なトラブル(人的ミス)が指摘されています。①〜③の要因別に原因究明
することによって、管理ルールの不備を指摘し、再発防止策を講じていくこと
が必要です。
(5) 変化点の見える化
変化点管理ボードを設置し、変化点の見える化により、変化点情報の全員への
徹底を図ります。変化点管理ボードで表示する目的および内容は、以下の通り
です。
①良い製品を作るための条件(5M重要プロセス)
・変化点管理項目一覧表の貼り付け
・4M条件の掲示
・人員配置
・工程(ライン構成)
・変化点発生場所と概要の明示
②良い製品であることの確認(重要特性)
・品質特性確認
・特性検査
・工程能力
・サンプル保管
・不具合の有無確認、前後の比較結果
変化点管理ボード例を次ページに示します。
見える化とは、職場の全員が、目で見て仕事の進み具合が正常か異常かの判断
が素早くできて、次のアクションにつなげていくために行うものです。見える
化はそのためのツールの一つです。次のアクションにつながらなければ、見え
る化の意味がありません。
(注意)
変化点の管理は、不良品ができる前に、事前に異常な状況を取り除き、不良
発生、流出を未然に防ぐことが目的です。とかく、管理することに目が行き、
管理そのものが目的化してしまうので、注意が必要です。
<事例研究2>
質問:一つ教えていただきたいのですが、4M変動管理の中で、どこかで変化点
が発生した場合には デ-タ取りをすると思うのですが、従来との比較を行いたい
時、最低いくつ位のデ-タを取る必要があるのでしょうか?
ご面倒ですがよろしくお願いします。
回答: 変化点の発生時についてのお尋ねですが、例えば量産工場において製品
の品質の変化を「変化点」と捉える場合を想定します。
品質の変化とは、
・ある形状の加工寸法
・製品の重量
・成分の含有量(割合)
などの、品質の特性値を計数値、計量値を製造単位(ロット)ごとに計測します。
その値をX-R管理図などに記録し、変化点が発生していないかどうかを判断します。
管理図の作成と判定方法を、巻末の参考資料にて解説します。
1回のサンプル数は、この添付の例では5個ですが、数量は多い方が誤差は少なく
なりますので、事情の許す限り多くとった方が良いと思います。
(20個以上が望ましい)
どのような変化点をどのような目的で捉えようとされているかによって、サン
プル数や管理図の作成方法も各社様々な工夫をされていると思います。
また、設計変更、設備変更などあらかじめ変化点が分かっている場合はその
前後の計数値を監視し品質に異常が発生していないかどうかを判定するため
に使用します。
(6)評価とフィードバック
日常業務管理の中で、変化点の記録や、異常処置などの管理がうまくいった点
まずかった点、異常値を頻繁に起こす管理項目、逆に、ほとんど異常値を示さ
ない管理項目の分類を行い、4M変動管理システムがうまく回っているのか
どうかを評価します。
関係部門を集めて、半年、ないしは1年の周期で記録・データーを持ち寄って
レビューを行います。
レビューによる評価結果に基づいて4M変動管理全体の改善を実施します。
これは一年間運用し、その結果改善が必要な項目を抽出し対策案を準備し、
次年度から、改善を実施するというように、継続して管理システムを見直し
ていくことで、より効率の良い管理方法に改善されていきます。
5.設計変更・工程変更の管理
設計変更や工程変更は、基本的にその変化点が発生する時期があらかじめ分か
っているので、計画的に変更作業が実施可能です。
下のフォーマットは、設計変更通知の例です。
この通知によって、5WIHを明確にして、関係部門に速やかに指示を出します。
変更によって、顧客に影響を与えるものは、事前に「4Ⅿ変更申請書」を提出し
承認を得ます。フォーマットの形式はフリーですが、左の枠外に、目的、担当
職場、実施時期など、を漏れなく記入するように注意書きがあります。
変更指示の内容を、この通知で関連者にもれなく情報提供が可能になります。
(1)設計変更の手順
設計変更を行う場合、変更の起案元(設計部門)、品質保証部門および関係部門
で審査会を開催し、変更内容の検討を行います。
必要に応じて信頼性評価などを実施し、現状品と比較して品質・信頼性に差が
無いことを厳密にチェックします。重要な変更については品質保証責任者が
最終的に承認するシステムとします。
また、すでに品質・信頼性に対して影響が無いことが判った変更内容については
起案部門で判断できるようにし、合理的に変更できるようにしています。
お客様へは、品質・信頼性、電気的、機械的特性、外形寸法、外観、使い勝手に
関わる内容について事前に変更連絡を行います。
顧客に提出が必要な4M変更の項目は以下の通りです。
・機能上の変更がある場合(操作方法の変更、性能の変更、機能の追加削除)
・外観上の変更がある場合(外形、色、重量、材質変更など)
・製造方法を大幅に変えた場合(外注先変更、工法変更、部品、材料変更)
・顧客の要求がある項目
・その他、顧客に事前に報告が必要と判断した変更項目
顧客に4M変更申請書を提出するかしないかの判断は、(製品、工程)設計部門
品質保証部門が協議し、最終決定は品質保証部門が行います。
(2)工程変更の手順
設計変更の適用決定後、工場部門では、以下の手順により、設計変更の内容に
従って工程変更を行います。
①作業前の事前準備確認
・工程変更計画書作成
・工程変更申請書提出(客先)
②工程の変更
・QC工程表の変更
・作業指示書の変更
・設備、治工具、測定機の確認
・作業者への変更内容説明、作業方法の教育・訓練
・工程変更事前監査(チェックシートによる)
・過去のトラブルを反映させる(過去トラブルの再発防止)
③変更の適用、実施
・変更適用のロットは、「初期品」として品質監視対象とする(初期流動管理)
・初期品は影響を受ける特性を重点監視する
(寸法、精度、機能特性等の記録)
・品質保証部門は、監視記録データーの問題有無を判定する
④結果の検証
・品質保証部門は、工程変更監査を実施
(変更指示どおりの工程作業が行われているか)
・問題がなければ初期品監視を解除する
(3)参考書式フォーマット
6.新製品立ち上げ管理
(1)新製品の量産製造を立ち上げ手順
一般的に以下の手順で実施する。但し、製品の新規度、規模によって必要
な手順を検討する。
①生産方式の決定・・・工程・工順/内外作/作業標準/設備・治工具
②技術試作・・・設計部門、顧客側主体で実施、品質保証部門が認定申請
③量産試作・・・設計上、製造上の問題点の洗い出しと対策実施、図面修正
④信頼性評価・・・環境・寿命試験等実機評価、工程FMEA実施
⑤認定・・・品質保証部門が認定申請、認定後量産移行が可能となる
(2)初期流動管理
初期流動管理とは、変更後のあらゆるトラブルに対して迅速に対策を講じ、
変更後の品質の低下、原価アップを招かない様、関連部門が総力で取り組む
ことを言います。初期流動管理の実施手順は、
① プロジェクト・チームを編成する
これは、通常担当している組織だけでは、突発的なトラブルや社内横断的な
問題点を機動的に解決できないため、QCDを総合的に管理するプロジェクト
を結成する
② 初期流動管理の期間を明確にする
初期流動管理の発動はいつで完了はいつか?をスケジュールを立てること、
また完了の条件として、不良率、作業効率、歩留りなど目標値を設定し明確
にする
③ 重要要因、重要特性の管理
重要要因として、5Mの管理手順、管理点を明確にし(QC工程図)実績を
記録する。同時に重要特性(QCD)の推移を記録し異常発生の有無を監視
する
7.統計的解析手法による変化点の捉え方
(1)層別とサンプリング
層別とはデーターを要因毎に分けることで、一見関連性がないデータでも、
層別を行うと関連性が出てきます。層別の方法は以下の種類があげられます。
①5M1Eごとに行う
(作業者、機械・設備、原料・材料、作業方法、環境、時間)
②ヒストグラムで層別を行う
製造工程で2台の機械を使用していた場合全てのデータでヒストグラムを作成
すると二山型になる場合がある。二山型のヒストグラムでは工程能力指数が
悪い場合が多く、改善対策の検討が困難。
そこで、データを機械別に分け層別したヒストグラムを作成すると、問題点が
明確になる。
③散布図で層別を行う
製造工程で2銘柄の原料を使用していた場合、全てのデータで散布図を作成
すると相関係数や寄与率が低くなる。相関係数や寄与率が低い場合は因果
関係が明確でなく、改善対策の検討が困難。
そこで、データを要因別に分け層別した散布図を作成すると、因果関係が
明確になります。
散布図と、特性と要因の関係をX-Y二次元図で表し把握する
相関係数とは、2つの値の関連性を調べる目安となる値のこと。-1.0~1.0
の範囲に値を取り、絶対値が1に近いほど関連性が強く、0に近いほど関連性
が弱いとされる。
正の相関では相関係数が1に近く、負の相関では、相関係数が-1に近い値に
なる。無相関では0に近くなる。
(2)ばらつきとは
ばらつきとは、JISZ1108:測定値・測定結果の大きさがそろっていること
または不揃いの程度。ばらつきの程度を表すには、標準偏差などを使います。
5Mの条件の変化によって、品質特性が変化する場合のばらつきの管理はどの
ように行うかは、以下の日常的な管理が必要となります。
・機械の精度を維持する技術(加工条件・方法・点検・環境)
・材料の特性を考慮した加工方法
・測定機、測定方法、測定者のばらつき管理
・日常の管理で、ばらつきの異常を早期に発見する仕組みが必要!
<事例1 問題>
ドリルの寿命について、MCで加工をするのに、ある程度数値的に工具寿命を
判断したいのですが?いい方法あればおしえてください。径・時間・切削長等
いろんな観点からから決定したいのですが?
<回答>
①私はだいたいですが2ヶ月に一回の割合で全ての工具に対して交換をしてい
ます。それと使用程度に応じて交換するかしないかを決めています。ドリルの
場合は、リーマを通した後の、傷の具合を見て判断します。
②ドリルの切削長で判断するのが一番正確ではないでしょうか?
例えば、アルミは100m、鉄なら50mと、材質でおおよその工具寿命を決め
ます。自社で加工データーベースを作成してそれにより寿命を管理するのが
一番良いと思います。
③統計分析を使ってみてはどうでしょうか?
寿命判定では条件を一定としてある程度の予測を立ててからやったほうがよい
と思います。
タグチメゾットや仮説検定等の手法を取り入れるとより数値的に判断・予測が
つきやすくなります。たくさんテストカットすると時間とお金がかかるので
統計手法で予測をしてからやるのも一つの手だと思います。
<事例2 問題>
高周波焼入れを依頼したところ以下の回答がありました。
・依頼者:HS95±3で焼入れをしたい。 部材Φ100×200L
・業者A:±3は無理。±10は欲しいががんばれば±5に入る。
・業者B:HS95なら狙いに対して0~5の誤差で出来る。
焼き入れの精度は一般的にどの程度ですか? 測定方法(HS、HV等)でも
誤差はありますか?
<回答>
焼き入れ硬度のばらつき要因
・測定誤差
・材質のばらつき
・高周波焼き入れ温度のばらつき
JIS規格では、材料の炭素量は±7%のばらつきを許容しています。材質の
ばらつきによってHS95の±5%以上ばらつきが出ます。肉厚の薄い部分や
角の部分などは早く冷えるためか硬く入ります。
測定誤差は、HVの場合、試験片を鏡面に研磨しておこなうので削り込む深さや
平面の出し方など、作業者の熟練度によって誤差が出やすいです。
HSについては跳ね返り高さより硬度を求める測定方法のため、試験片の表面の
よごれや、平面度に左右されるとおもいます。
(3)工程能力把握とばらつき管理
①分布について
母集団の分布(ばらつき)は、計数値、計量値などにより一定法則の数式に従い
ます。
・計量値・・・正規分布
・計数値・・・2項分布、ポアソン分布
正規分布は、計量値の基礎的な分布安定した製造工程からデータを取ると正規
分布に近くなる事が多い。統計的手法の中には、分布が正規分布を前提にして
いるものが多い。
工程能力指数Cp、Cpkの算出にも、正規分布が用いられる。
2項分布は、良品と不良品が一定比率で存在する母集団からサンプリングした
時に得られる計数値の分布のこと。
ポアソン分布は、まれにしか起こらない現象の確率を示す。
安定した工程において、一定の大きさのサンプル中の欠点数はポアソン分布に
従う。
②ヒストグラムとは
ヒストグラム作成の目的は、ある特性値について、多くのデータを得た場合に
どのような分布をしているのか、その分布を知るために“ヒストグラム”を作成
します。
・これらのデータの代表する値は何か?
・これらのデータのバラツキはどれくらいなのか?
・規格値と照合すると、どれくらいの不良が含まれていそうか?
・分布の姿からみて、工程の管理状況は良好か否か?
③標準偏差とは
一般に,データをとってみると,集団としては本来同じと思われる場合でも,
個々の値は少しずつ異なるのが普通です。これらの現象をバラツキがあるとか
変動があると表現します。バラツキや変動を数値で表すには
・最大値と最小値の差をとって,範囲(R)とする簡単な方法
(サンプル数が異なる場合や大きい場合には適さない)
・個々の値と平均値からのズレ(偏差)を計算し,偏差の2乗の総和を求め,
データ数で割ったものを分散と定義し,この値のルート(平方根)を標準
偏差として使用する
標準偏差は、データのバラツキ具合を表す指標として使われます。
データのバラツキ具合を表す指標としては、標準偏差のほかに分散も使われます。
標準偏差は、分散の平方根です。標準偏差のほうがデータと同じ視点で見ること
ができるので、わかりやすいといえるでしょう。標準偏差の数値が大きいとバラ
ツキが大きく、逆に小さいとバラツキが小さいと判断できます。
④工程能力とは
管理状態にある工程においてその工程の持つ品質達成能力を工程能力といいます。
「工程能力指数(Cp)」とは上記の工程能力を数値化したもので「ある特性に
おいて規格幅を6σで割った値」で定義されます。
工程能力の定義にある「管理された工程」とはその特性値が 正規分布している
ことを指し工程能力指数についてもそれが前提となります。
ここでいう「特性」とは例えば長さや重さあるいは抵抗値などをさします。もの
を作る際にはこれらの特性に対してある範囲に収まるようにします。
このある範囲を規格とよび、設計する人がこれを決めたり、あるいは 標準(JIS,
ISO等)で決まっている場合もあります。
⑤工程能力指数と不良率
工程能力指数と不良率の関係について両側規格のCpを用いて説明します。
規格幅が±3σの時にCp=1.00となりますが、この場合の不良率は0.3%
となります。
規格幅 Cp 良品率 不良率
±1σ 0.33 68.3% 31.7%
±2σ 0.67 95.4% 4.6%
±3σ 1.00 99.7% 0.3%
同様の方法で8σの時、Cp=8σ/6σ=1.3333…の時は、6.33*10-5 で約63ppm
となります。
規格幅が10σの時、Cp=10σ/6σ=1.6666…の時は、5.74*10-7 で約0.57ppm
となります。これは200万個ものを作って1個しか規格外れが発生しないという
きわめて優れた工程状態であるといえます。
●工程能力指数(Cp)はどのようなときに役立つか
Cpの値を使用するときは「規格の中心と平均値が同じとする」という条件が付き
ます。実際には規格の中心と平均値が同じでないケースの方がはるかに多いはず
です。Cpは、その工程の実力が規格幅に対してどの程度のものかを知ることが
できます。
例えばCp=1の工程は平均値が規格の中心にあるという理想の状態でさえ規格外
は、0.27%発生するのだから、 仮に目標が0.1%ならば工程のやり方そのもの
を変えない限り目標は達成されません。
なお現在の平均値の偏りを含めた工程の評価はCpkを用います。
●工程能力指数の評価
工程能力指数の評価について、両側規格のCpを用いて説明します。
Cp=1.67 工程能力は、十分過ぎます。
Cp=1.33 工程能力は、十分です。
Cp=1.00 工程能力は、まずまずです。
Cp=0.67 工程能力は、不足しています。
(4)管理図の作成
①管理図の分類
管理図は、一般的に、用いる統計量(データ)のタイプや用途などによって
分類されます。
●統計量のタイプによる分類
長さや重さなどの連続した値(データ)を扱う場合の計量値(連続型)の
管理図、不良品の個数などのように、飛び飛びの値(データ)を扱う場合の
計数値(離散型)の管理図
●用途別では、
工程解析や現状把握などの目的で使用される解析用管理図
異常値の検出のために作成される管理用管理図
計量値の管理図といっても、群間での変動を比較する場合と群内の変動を比較
する場合では当然ながら取り扱う統計量が異なってきます。また、同じ群間を比較
する場合でも平均で見るかメディアン(中央値)で見るのかで異なります。
計量値(連続型)の管理図には、X-R管理図、x管理図、R管理図などがあります。
計数値(離散型)には、P管理図、Pn管理図、U管理図、C管理図などがあります。
②X-R管理図
X-R管理図は、平均値Xと範囲(R)のデータを併せた管理図です。
平均値(X)は、群(同一組)内での 平均値を表し、範囲(R)は、各群内での
範囲を表わします。
X管理図(X Chart)は、群ごとの平均値を打点し、群間(日別)の変化(変動)
を見る
R管理図(R Chart)は、群ごとに範囲(R)を打点し、群内(日内)のバラツキ
の変化(変動)を見る
この2つの管理図を一対にして、「X-R管理図」といいます。
管理する品質特性は、寸法(長さなど)、トルク、重量、時間、抗張力(引っ
張り強さ)、硬度、純度、電流値や電気抵抗などのように量(計量値)
③P管理図/不良率管理図(Fraction Defective Chart)
不良率(P)を用いる管理図で、品物の良/不良だけで判定し、不良個数(Pn)
を検査個数(n)で割った不良率(P)で工程を管理します。サンプル数は一定で
使用例としては、組立不良などです。
④C管理図/欠点数管理図(Defect Chart)
各ロットに含まれる欠点(要求に合わない個々の欠陥)数(C)を打点して管理
する場合の管理図です。欠点を見いだす範囲が一定(一定の長さ、面積、量)
である場合だけに使用が可能、使用例としては、同じ機種のプリント基板上の
修正箇所の数などがあります。
⑤管理図の構成
管理図には、工程を安定した状態に保つために、上方と下方に管理限界
(Control Limit Lines)を設定、管理状態が管理限界内にあり安定しているか、
その外側に出て異常な状態にあるかを見分けます。
・中心線(CL:Center Line)を実線で記入
・上方管理限界線(UCL:Upper Control Limit)
・下方管理限界線(LCL:Lower Control Limit)を点線で記入
中心線(CL)は、その特性の平均水準を示し、2つの管理限界線(UCL、LCL)
は、アクションの限界を示します。打点が管理限界内にあれば、工程は管理状態
にあるが、打点が管理限界外に出たときは、工程に異常があるとみて適切な処置
を行う必要があります。
⑥管理限界の設定方法
管理限界は、問題のある作業の是正処置をするための経済的指針として用います。
管理限界線を設定する際は、3σ法の統計的な計算の結果をそのまま適用するだけ
でなく、経済的品質水準や技術的判断などによる望ましい管理限界の要求を加味
します。
幅が狭い場合・・・存在しない故障や不良を探し出そうとするムダな労力
(第1種の過誤)
幅が広い場合・・・実在する故障や不良を見逃すこと(第2種の過誤)による
損失
3σ法は、最も基本的で多用される管理限界の設定方法で、標準偏差の3倍の
位置に管理限界を設定します。3σ管理図では、第1種の過誤を犯す確率は、通
常0.3%程度となります。バラツキの分布が、正規分布(Normal distribution)
であれば、99.7%はこの管理限界の中に入るという意味です。
●安定した工程とは何か
生産した製品や部品のバラツキの幅が、あらかじめ規格値の範囲内にあれば
「管理状態にある」 「安定状態である」といえます。
●5Mの安定
製品や部品を生産する過程で品質に影響を及ぼすものは、「5つの要素」から
構成されています。これら5つの要素の品質のばらつき具合が総合されて製品全体
の品質が決定付けられます。
「生産の5M」が安定していれば、製造する製品や部品のバラツキは、いつも
ほとんど同じバラツキ方を示します。しかし実際には、5Mの状態が常に同じで
あるということはありません。もし、工程に何らかの異常があれば、バラツキ
の形が管理状態にあった場合とは異なって来ます。
(5)管理図による異常検出
①正常な点の動きの性質
正常な点の動き(“偶然原因”の範囲内で点がばらつく)
(a)打点された点の動きに特別な規則性や特徴が認められない。
(b)多くの点が中心線(CL)の近くにある。
(c)少数の点が管理限界線(LCL、UCL)の近くに散らばっている。
(d)管理限界線(±3σ)を超える点がない
②異常な点の動きの性質
(a)点が広くばらつく。中心線の両側にバランスがとれていない。
(b)点があまり広くばらついていなくても、「(1)正常な点の動きの性質」
の1つでも欠けているときは、常に異常な点の動きといえる。
③「連」による管理状態の見方
管理図上の点が、中心線(CL)に対して、一方の側に連続して現れた場合、点が
中心線の上側にあり、次の点が同じく中心線の上側にきたときを“長さ1の連”と
言います。連は基準を決めて、異常発生の兆候に対して対処します。
•長さが5の連では、“要注意!”として監視を強化する。
•長さが6の連では、アクションの準備を整えて兆候の監視を継続する。
•長さが7の連では、原因究明と対策のアクションを起こす。
連と点が中心線の一方に片寄るとき、連の長さが“7”未満でも、CLの一方の側に
点が続けて出現するような場合は異常
•連続する11点中、少なくとも10点が一方の側に出現している。
•連続する14点中、少なくとも12点が一方の側に出現している。
•連続する17点中、少なくとも14点が一方の側に出現している。
•連続する20点中、少なくとも16点が一方の側に出現している。
点が上昇傾向または下降傾向にあるとき
•長さが5の連では、これからの点の傾向に注意が必要である。
•長さが6の連では、アクションの準備を整えておくこと。
•長さが7の連では、原因究明と対策などのアクションを行う。
点が傾向を持つとき
●長さの長い上昇(または下降)の傾向があるときは、連も同時に出現して
きます。
●連の長さは短くても長さが7の傾向が現れたときは、工程は管理状態に
ないと判断します。