4Mの体系的管理手順(長編コラム① 第一章 4M管理の概要)事例・進め方の紹介・製造業の体系的4M変化点管理

4M管理、4M変化点管理を体系的に実施するための管理手順について詳しく
解説します。





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第一章 4M管理の概要

1.はじめに
当研究所のWEBサイトの検索キーワードのトップは「4M変更管理」です。
このキーワードで、情報検索を行っているものづくり企業の方の目的はどこ
にあるのでしょうか?

おそらく、4Mの用語の解説はよく出てきますが、「4M変更の管理は、どの
ように行うか?」については、ネットや書籍などではあまり解説がされて
いない分野であるため、当研究所サイトにアクセスしているのではないかと
想像しています。

なぜ解説が少ないのか?
品質管理の手法は、様々ありますが、それらは戦後、アメリカやヨーロッパ
から理論体系が輸入され、学者によって翻訳され、製造業に広く使われるよう
になりました。
TQM、PDCA、最近ではISO9000,TS9000などがあります。
しかし、現場の実務に密着した4M変更管理に関しては、学者よりもむしろ企業
で経験を積んだ実務家が研究を行う分野であると思われ、それゆえ体系化が困難
となっているものと推測しています。

しかしながら、多品種少量、最近では変種変量生産を強いられている中小製造業
にとっては、いかに効率よく、トラブルを起こさずに製造現場の管理を行って
いくかは、重要なテーマとなっています。
当研究所が考える4M変更管理の中心となる実務手法は、日常業務における未然
防止のために、異常の見える化と早期発見「先手管理」と「重点管理」とです。
日常業務において、この2つのことを押さえておくことで、品質は格段に上がる
と確信しております。

そこで当研究所では、4M変更管理の体系化を試み、本コラムをまとめました。
不十分な点はあるかと思いますが、読者の皆様のご意見を頂きながら、今後も
充実化を図って行きたいと考えております。

2.4M変更管理の概要
そもそも、4M変化点管理を行う目的は何でしょうか?
お客様からの要望であるならば、お客様は何か意図をもってそのような要望を
出されているのだろうと思います。

しかし、お客様から指摘されるまでもなく「不良を流出させない」「お客様に
迷惑を掛けない」ためにはどうすればいいか?工場では、常に考えて行動され
ていることと思いますが、往々にして「もぐらたたき」になってしまい、不具合
が発生してからの後手、後手の対応になりがちです。

不具合の発生を未然に防止するにはどうしたらよいか?
それには、QC工程図を作成する、機械の保守点検を実施する、ポカヨケ治具を
準備する、作業者を事前に教育するなど、モノを生産する前に万全の策を講じます。
(工程設計における予防対策のしくみ)

モノの生産が始まったら、不良が出ないように、上記の予防策を組み込んだ決め
られた手順決められた方法(QC工程図・作業標準書)で整然と作業を行います。
ところが、整然とした作業を乱す、様々な要因が発生します。そのきっかけと
なるのが、変化点です。

いくら予防対策の仕組みを万全に講じても、生産現場では、変化点がきっかけ
となって不具合が生じてしまいます。様々な変化点が生じても不具合が生じない
ように現場で管理を行うことを、「変化点管理」「4M変更管理」などと呼びます。

なぜなぜ2段階法によるヒューマンエラー対策.jpg
変化点管理は、予防対策とも捉えられますが、もうすでに生産が始まってから
の管理なので、厳密には予防対策とは言いません。
(予防対策は生産を始める前に工程設計段階で講ずる処置のこと)

この予防対策で防ぎきれない項目(予防対策の不備や対応対象外)を、製造
現場で、不具合が発生しないように管理すること、これが変化点管理の目的です。

変化点管理の位置づけと目的が明確になったら、次に自社の工程で、何を管理
すれば不具合が発生しなくなるのか、項目を抽出して管理方法を決めます。
意図的であれ、意図的でない変化点であれ、工程が乱れないように管理する項目
を決め、日常管理の中で手順化しておきます。

異常・・・不良ではないが、放置すると不良につながる現象(異音がする、寸法
管理限界値を超えた、初物、中間、最終チェックで寸法が変化した)

不良(不具合)・・・寸法規格はずれ、検査不良、機械の停止、ヒューマン
エラー発生
不良(不具合)が発生する前に異常を検出して、速やかに対処し、不良を未然に
防止する、あるいは、不良が次工程へ流れないように管理する、それが「先手
管理」であり、何に重点を置くか(重要部品、重要工程)を決めて管理を行う
ことを「重点管理」と言います。


3.変化点管理で必要な設定は
①異常を定義する
 何を異常と定義するか点検項目、手順、判定基準を明確にします。これは、
 先手管理を行うために、自社の今までの実績や経験から、抽出すべき内容
 であり、世の中で決まっているわけではありません。

 異常が発生するのは、何らかの変化が生じていると考えられるので、それを
 突き止めて対策を講じます。

②重点管理項目を決める
 すべてを均一に管理することはできないので、重要製品、重要寸法、重要工程
 などを決めて点検点・管理点を定義します。
 重点管理では、一般の管理とは異なり、異常の監視周期の頻度を上げる、工程の
 点検項目・品質特性の監視項目を増やすなどの管理方法を取り、異常を漏らさず
 検出します。

③あらかじめ予測ができる変化点発生時の管理を明確にする
 設計変更、工程変更、段取り替え、人の交替など、それぞれに応じて①、②を
 適用します。

④予測できない突発的な変化点発生時の管理を明確にする
 停電、不具合発生による作業中断、機械の故障など、それぞれに応じて①、②
 を適用します。

変化点管理は、日常管理の大部分を占める重要な管理であり、管理監督層は
「異常」「重点項目」「予測できる変化点」「予測できない変化点」など、管理
方法について、各工程で明確に決めておかなければなりません。
変化点管理ボードは以上のような管理手順を明確にした上で、何を表示するのか
を決める必要があります。
4.4M変更管理の位置づけ
4M変更管理は、品質管理上、現場の日常管理の中でも重要な管理項目の一つで
ありISO9000の中での定義では「予防処置」に相当します。

「プロセスの監視測定を通じて得られた(危険)情報に基づいて、起こり得る
不適合が発生することを防止するために、その原因を除去する処置を決める事」
とあります。
但し、生産が始まる前に、事前に予防処置を講ずる本来の「予防」の考え方と
は異なります。あくまで、日常の生産活動の中における「予防的活動」なのです。
なぜなら、日常管理の中で、4M変更対応のための特別な監視体制や異常時の
対応を行わなければならず、費用や人出が掛かってしまうからです。予防処置
が万全であれば、このような事は発生しません。

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<事例研究1>
製造工場の現場監督者の方から以下のような4M管理に関する質問を頂きました。

質問:小型家電製品のOEM工場で、ラインの班長をしています。管理者は品質
上の課題を解決する際に、原因を4M視点で見ますが、品質の作りこみにおいて、
解決しなければならない課題を作業者にされることに、疑問を持っています。
作業手順の間違いや不慣れな作業の場合は、原因が作業者となることは分かります
が、挿入間違いを起こしやすいコネクターへの改善を、作業者に対して注意しろと
指導するのでは、本質的な改善ではありません。設計変更によって間違いが起き
ない仕様変更を実施すべきです。
4M視点から人は排除して、部門間連携を通して仕事の仕組みや設計で、品質
問題を解決することが重要と思います。4M視点の考え方について、専門家の
ご意見をお願いします。

回答:製造部門の大事な役割の一つは、4M変化点管理の仕組みを構築して運用
することです。設計は、完ぺきではありませんから、製造部門で設計改善する
までの間不良を作り込まないように管理する必要があります。
またそのほかにも日常様々な変動要因が発生するので、変動に対して影響を受け
ない管理を行う必要もあります。現場の管理者は、これらに対応するための日常
管理の仕組みをつくり、運用し、作業者に守るよう徹底させなければなりません。
作業ミスは、作業者の責任ではなく、作業管理を行っている現場の管理者の責任
と考えるべきです。
4M変動に適応する日常管理のポイントは「重点管理」と「先手管理」です。
重点管理とは、ご質問にあるような「間違いやすい作業」に代表されるように、
特に注意して管理すべき項目を事前にリストアップし、管理のレベルを上げます。
例えば、検査治具の使用、チェックシートに基づく再検査を行うなどの特別対策
を講じます。
先手管理とは、作業者がヒヤリ・ハット体験を報告し、不良発生に至らないまで
も、異常現象を見つけて、対策する仕組みを作る、また作業工程ごとにヒューマン
エラー発生を予測し、ミス防止対策を講ずる「ヒューマンエラー予防評価」を
行うこと、などを指します。
それでもミスが流出したら、作業者を責めるのではなく、「なぜ防げなかった
のか?」日常管理の仕組みの不備・欠陥を洗い出して改善策を講じます。これ
も、作業者が行うのではなく現場の管理者が行うべき仕事です。
他部門や上層部のすべきことを考える前にまず、班長として行うべき仕事は
何か?また何ができるかをよく考えて、実行してみてください。その上で、
班長の権限内で解決できない事項が発生したら、建設的提案を行うように
します。

5.4Mの要因を規定する工程設計
工程設計とは、ものづくりを始める前に、その工程順に、5M要因の管理項目
点検項目を細かく定め、その結果、特性値として得られる寸法重量などの測定
方法、検査方法を規定することを言います。設計の結果として得られるドキュ
メントがQC工程表です。

① QC工程表の目的
QC工程表は、モノの作り方、流し方を決めるもので工程順にどの要因を、どの
ように管理すればどのような特性が得られるのかの関係を示したもので、「モノ
の作り込み」を行うために作成します。

特性要因図と同じ考え方で、管理項目を漏れなく列挙し、QC工程表にその内容
を記載します。その時、管理項目と共に、ポカミス防止などの予防策を網羅しな
ければなりません。 

②QC工程表の作成方法、内容
QC工程表のフォーマットの基本的な構成は以下の図の通りです。

QC工程.jpg
ここで気を付けなければならないのは、
 ・どのような作業方法(作業手順書)で
 ・どのような設備、治具、測定機を使って(具体的な型式を入れる)
 ・どのような材料を
 ・どのような資格を持った作業者が作業を行うか
が、具体的に記されていなければならないということです。

そして、その結果得られた製品の特性を
 ・具体的名特性値(寸法、重量)を
 ・どのような測定方法で
 ・どの測定機を使って確認するのか
 ・どのように記録するか
を記載します。

③4M変更管理におけるQC工程表の位置づけ
4M変更管理において、QC工程表は以下のように管理を行います。
a.設計変更、工程変更時
 まずQC工程表を変更して内容の確認を行ってから作業に入ります。
 緊急時には、暫定的な臨時作業指示書を使う場合もありますが、必ず変更
 内容は、QC工程表にフィードバックを掛けます。

b.突発的な事情で工程を変更する場合
 工程の異常を発見した場合、工程能力が不足している場合などで、工程の
 管理手順、設定値などの変更が必要な場合は、まずそれが、QC工程表通り
 に作業が行われたかどうかを判断します。もし行われていなかったらQC工程
 表通りに作業を行うように修正します。
 もし、QC工程表通りに作業を行っても、期待する特性値が得られない場合は、
 QC工程表の要因の管理項目の不備の見直しを行います。
 まずQC工程表を基本とし、指示通りの作業を行い、それが間違っている、また
 ヒューマンエラーなどのミスが発生する場合は、QC工程表を見直し改善を繰り
 返していきます。

(第二章 4M変更管理の体系化へ続く)

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 合同会社高崎ものづくり技術研究所代表の濱田です。
 日本が誇るものづくり技術にもっと磨きを掛けよう!!

 設計、製造、品質管理、海外工場管理などの実務経験45年
 製造業のあらゆる業務に精通!講演テーマも下記の通り
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