納品先が納得する3つの予防対策とは?製造業のトラブル未然予防の品質管理とは?

製造業のクレーム対策において、ある自動車部品メーカーが、顧客から信頼が
得られる品質改善対策について考えてみます。
モグラたたき対策では納得してもらえない厳しい現実を打破するには、品質
管理力を高める以外に方法はありません。



1.ある部品工場の不具合対策事例</span>
自動車部品の量産工場、月産、約200,000本のステアリング部品の生産をして
某メーカーに出荷しています。半年ほど前に、客先メーカーから当社の生産した
製品のネジがきつくて相手部品が組み付かないとクレームがありました。暫定的
に流出を防ぐため客先から全数検査の指示がありました。

対象製品を急いで隔離、選別をして対応しました。後日工程内での発生原因の
追求をして発生原因の解決が出来ました。発生原因、流出原因、水平展開をして
客先に報告したのですが客先からは全数検査の解除が出ずに未だに完成した製品
を全数検査しています。

さて、客先メーカーはなぜ、全数検査を解除しないのでしょうか?

2. 再発防止策だけでは納得してもらえない?
客先メーカから見て、上記の対策では納得できないのだと思います。
では、どこが納得できないのでしょうか?

製造メーカでは、最初に①因果関係の究明を行い、次に②直接の管理の要因を
洗い出し
 ・ねじ穴を規格通りに加工する作業手順書通りに作業を行ったか?
 ・ドリルの交換周期のルールを守っていたか?
 ・ねじ穴が規格通りの寸法で加工されているかある間隔で確認したか?
などの管理要因の不備を対策し、この問題は再発防止策が打たれたことを報告
しました。

しかし、ここまでは、すでに発生した不具合の原因究明と対策であり、モグラ
叩きにすぎません。ほかに、管理上の不備・欠陥、作業ミスなどにより、様々
な不具合が発生する可能性があるのではないかと疑いの目で見られます。

不具合が発生したら対策する「後追いの改善」の結果をいくら報告しても、今
の厳しい市場環境下、お客様は納得できません。お客様は、ほかに不具合の
可能性がないかどうかをすべて検証し、今後不具合が絶対に起きないように
対策してほしいと思っているはずです。

3.お客様が納得できる報告とは
では、お客様の納得する報告をするには、具体的にどうすればいいでしょうか?
それには品質管理の考え方を、問題が起きないようにあらかじめ予防処置を講
ずる「未然予防」の品質管理の考え方に変えていかなければなりません。その
ような体制がとられない限り、永久に全数検査を義務付けられることになる
でしょう。

未然予防の品質管理とは、不具合発生を予測し「予防処置」を組み入れた
「工程設計」、製造工程における異常をいち早く発見し不良発生を未然に防止
する「4M変化点管理」、そして不良を一切流出させない出荷停止機能を持た
せた「検査方式」の構築です。

これらの上流から下流に至る工程の対策が流出防止の考えで構築されている
のかがポイントになります。
品質管理の基本0601.jpg

(1)工程設計(QC工程図)
工程設計のアウトプットはQC工程図です。
QC工程図には、5Mの要素である人、機械、材料、方法、測定などの管理項目を
規定します。例えば、溶接作業は1年以上の経験を持った熟練作業者(認定者)
が、溶接作業手順書に沿って作業を行い、出来栄え確認、合格基準を満たして
いることを確認します。
このように、管理項目を規定し、漏れがないことを、例えば「工程FMEA」で
検証します。 

(2)4M変化点管理
QC工程図が完璧にできていても、製造工程ではいつもその通りの作業ができる
とは限りません。
例えば、熟練作業者が忙しく、経験1年未満の作業者が作業に当たらなければ
ならないこともあります。その場合はどうしたらいいでしょうか?

このような突発的な事態にどう対応するのか?を決めておく必要があります。
例えば作業者の行った溶接部分を、後で熟練作業者が必ず確認を行って、不良
の流出を防ぐ手順を確立しておきます。このような変化に応じた予防策を講じる
ことを4M変化点管理といいます。

(3)検査方式
検査の方法はいろいろな種類があります。
例えば、作業者自らが後工程へ不具合品を送らないように検査する「自工程検査」
工程の最後に専門の検査員を置いて検査する「第三者検査」、管理層が現場を
巡回して作業者や機械、製品を抜き打ち的に検査する「巡回検査」など、それ
ぞれの目的を考えて、また製品の品質状況に応じて検査方法、頻度等を決めます。

検査で重要な事は、不具合を発見したら「工程を止める」「出荷を止める」こと
です。この仕組みがないと、納期優先で、どんどん不具合品が流れていってしま
います。

この3つの未然予防対策を至急社内で整備し実績を報告することによってのみ、
製造メーカーは信頼され、全数検査が解除されるものと考えます。今までの後追い
品質管理から決別することが会社の存続のみならず更なる発展につながるものと
確信しております。

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 合同会社高崎ものづくり技術研究所代表の濱田です。
 日本が誇るものづくり技術にもっと磨きを掛けよう!!

 設計、製造、品質管理、海外工場管理などの実務経験45年
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