測定の基礎と測定器の管理:製造現場の実務・事例解説

測定の基礎と測定器の管理についてポイントを解説します。



1.測定の重要性
製造業において、製品の開発・設計から量産に至るまでの各々のステップ
で、“測定”は欠かせない作業であり、“測定”によって得られたデータを
基に、工程や、作業方法の評価や判定を行い、次の行動に移ります。

特に現在ではグローバル化が進む中で海外との関係も深くなり、品質問題
を出した時のロスコストは企業存続に関わる重要な問題となます。

そこで、正しい測定によって“不良品を作らない、および流さない”事が大
事になってきます。

そこで、正しい測定データを得る為には
 ①正しい計測機器を使って測る
 ②正しい測り方で測る
 ③適正な環境の下で測る
ことが大切であり、たかがノギスでの測定と思わずに、慎重な測定作業を
心掛ける必要があります。

2.測定値の信頼性
測定値の信頼性は、測定器の信頼性と、測定者の知識や習熟度などの測定
に関する様々な要因によって得られるものです。測定の信頼性は「誤差」
「精度」「繰り返し性」などによって表されます。

「計量トレーサビリティ」とは、測定器による測定結果が、校正の途切れ
ない連鎖で国家標準や国際標準に関係づけられていることを表す性質です。
例えば、「測定結果は、計量トレーサビリティ(traceability)が確保
されている」という使われ方で、測定結果の信頼性を表しています。

計量トレーサビリティ制度」は、国家標準(特定標準器)を定め、産業界
などの測定器が計量トレーサビリティを確保できる仕組みであり、計量法
に定められています。

すなわち、測定器は、校正事業者が保有する標準器(実用標準器)によっ
て校正され、その標準器は、より正確な(不確かさがより小さい)標準器
(特定二次標準器)によって校正され、さらに、特定二次標準器は国家標
準の特定標準器によって校正される仕組みとなっています。

3.測定器の選択と管理
3.1 測定器の選択
(1) 測定器の種類による選択
測定器は、値段が高い物ほど機能や性能が優れていますが、反面、取扱い
方が難しく校正や修理など保守管理にお金がかかるので必ずしも高価なも
のばかりが良いとは言えません。

大事な事は測定器が使用する目的に対して適切な物であって、かつ精度に
よって適切なものを使うことにあります。また、その測定器の正しい測定
方法を知っていなければ、その価値を発揮できずに本来持っている能力を
引き出せないで終わってしまいます。

したがって、測定器の購入担当者には、製品・部品の検査・校正で必要と
なる精度を把握し、要求を満たせるような選択がせまられます。
つまり、適切な測定を行うためには、適切な能力の測定器を選択すること
が必要です。

ノギスとマイクロメータの適切な使用方法の例として
ある製品のシャフトの径を測定し、その許容差が5.00±0.01mm であった
とします。それを検査員は、デジタルノギスで測定し、4.99 mm で検査
成績書を作成し、顧客に提出しました。

後日顧客から次のような指摘がありました。「デジタルノギスはせいぜい
±0.02 mm の精度であるので、ここはマイクロメータ使用して測定すべき
ではないか?」。検査員はデジタルノギスでも0.01 mm の数値が出るので
そのまま測定してしまいましたが、ここはノギスの10 倍以上精度が取れる
マイクロメータで測定する方が適当です。

(2) 測定方法による測定器の選択
例えば、長さの測定で、あるシリンダの内径を測定する測定器にはエアー
マイクロメータ、ホールテスタ、シリンダゲージなどがあります。レーザ
外径測定器の代わりにデジタルリニアゲージなどを使用して検査を行うこ
ともできます。

しかし、それらの測定を行うには日頃から訓練が必要です。
例えば、測定器取扱講習会などを行って確認します。ある円柱のワークを
用意し、それを金属製金尺、ノギス,マイクロメータ、ダイヤルゲージ、
工具顕微鏡、外径測定器、輪郭形状測定器などの様々な長さ測定器を実際
に使用し、正しく測定ができるかどうか確認します。

各測定器の正しい測定方法と、様々な方法があることを体験し、訓練する
ことが大切です。

3.2 測定作業の整理・整頓
測定器に5S 管理を導入することで生産能力効果が高くなります。
測定器の5S とは、(1)整理、(2)整頓、(3)清掃、(4)清潔、(5)しつけ
のことをいい、生産現場の5Sと同じ考え方で管理します。

(1) 整理
 良品・不良品、校正済み品、不要品及び故障品の識別管理を行う。
(2) 整頓
 取り出しやすく、また置きやすくする配置を心がけます。
(3) 清掃
 測定器に付着している異物やさびなどを丁寧に掃除します。
(4) 清潔
 整理、整頓、清掃された状態を維持します。
(5) しつけ
 大切に使う習慣を付けます。

3.3 測定器の校正
使用する測定器すべてを管理対象とする必要はなく、管理の対象となるか
否かの決定(線引き)が重要です。すなわち、管理はするが校正は行わな
いものの位置づけも必要であり、識別を強化することで問題はないと考え
られます。

例えば、電気テスターなどは、検査で導通チェックや100V 電源を測定す
ることが多いので点検のみでも充分です。

(1) 校正の頻度
校正対象とした測定器は定期的に校正を行わなければなりません。校正の
周期は、その測定器が規格などで周期が決まっていない限り、組織で自由
に決めて良いでしょう。精度があまり変わらない物に関しては校正周期を
常識的な範囲で長くしても構いません。

(2) 校正の方法
測定器の校正には、コストがかかりますので法的な規制のある場合や、標
準器の高額ものや校正技術の高度なもの及び、重要保安部品など顧客の
信頼に影響を与える測定器は外部に校正依頼して、それ以外は校正要員
を養成し、必要な校正設備を購入して社内校正をおこなうとよいでしょう。

(3) 校正外れへの対応
校正を行って不合格になった場合、その機器で実施した製品検査などの結
果の妥当性を再評価し、記録する必要があります。前回の校正までさかの
ぼって検査結果を見直すことは現実的でないので、リスクが非常に小さい
と予測できる場合などは、それまでその不合格の測定器を使用したことに
よる“不具合などの発生”で確認しても良いでしょう。