製造業の下請け脱却:アフターサービスの事業化戦略、製造業はモノを作って販売して終わりではなない

製造業はモノを作って販売して終わりではなく、アフターサービス事業に注力
すれば大きな利益を生み出す可能性を秘めています。
なぜならば、アフターサービス事業はストック ビジネスとして、毎年安定した
収益が見込め、経営の安定化に大いに貢献します。

一方、製品の製造販売事業は、フロービジネスであり、今年売れた製品が来年
売れる保証はありません。また多数の競合メーカーがひしめき合う中で、価格
競争に陥り利益に結び付きません。




この環境変化の激しい世の中で、フロー ビジネスだけに頼って事業を進めることは、
本来リスクを伴うことなのです。では、どのような手順でアフターサービスの事業化
を進めて行くかを考えてみましょう。
スマイルカーブ.png

そこで、「モノを売るから、サービスを売る」という考えに方向転換します。
「モノも作れるサービス業」という視点で、ビジネスモデルを全面的に見直し、
スマイルカーブの上流から下流の工程の中でより付加価値の高い工程へ経営資源を
集中的に投入していきます。

では、アフターサービス事業の黒字化について、「モノを売るから、サービスを
売る」という考えに方向転換するためには、どのような手順で進めていけば良い
かを考えてみます。

◆第1ステップ(アフターサービスの事業化)
これまでは、保守部品販売、修理や定期点検などのメンテナンスはお客様への
サービス扱いで、次の注文を獲得する意味として、モノを売るための販売促進
効果を狙っていました。但し、この考えの下では、収益は見込めず、したがって
顧客満足につながるアフターサービスとはなり得ない状況となっています。

そこで、アフターサービス事業のさらなる発展、競争力強化のため、この事業を
製造事業から分離独立させ、将来子会社として独立させることを念頭に、独立
採算の組織を発足させます。

そのためには、製造事業を効率化し、生産性を高め余剰となった人材を徐々に
本事業へ投入します。そうすることによって、固定費を増加させずに、また製造
事業とのコミュニケーションを取りながら事業展開が可能となります。新たな
人材の採用は、採算性を見ながら行っていきます。

新組織では、以下のような目標を立て、人材の強化、サービスツールの整備を
行います。
・顧客に密着した営業体制や業務体制の確立
・顧客および、サービス業務の可視化
・顧客対応のスピードアップ化
・サービスメニューの見直しによる内容のレベルアップ化

事業の安定性や効率性を考え、顧客との年間保守契約を結び、事務処理や価格
交渉などの工数を減らし、いかに早く顧客対応を行うか?また予防保全やコール
センターの設置等によって、スピード感をもって対応を行い、いかに顧客満足度
を高めていくか?に注力していきます。このような高いレベルのサービスの実施
によっても、従来顧客からも納得し受け入れられる、リーズナブルな料金体系を
構築していきます。

◆第2ステップ(顧客情報の収集と分析)
収集が必要な共有化情報として、以下のような項目を設定し、情報を分析します。
・保守情報(故障情報、点検内容、交換部品と周期)
・設置情報(設置地域・場所、設置環境)
・製品情報(設置日、製品種類、バージョン、部品交換・修理履歴)
・お客様情報(売上高と利益)

分析した結果、サービスの仕組みの見直しや、製品へのフィードバック項目と
して設計部門との情報共有を図ります。
・予防保全の考えから、部品の寿命や作業性などの改良設計へ反映
・製品別・部位別の不具合兆候の収集と兆候の正確性向上
・お客様を階層分類して階層レベルに適合したサービス対応
・メンテナンス作業時間のトレンド分析、作業員別の作業時間分析
・今後不足する人員の技能と人数
・技術・技能で強化が必要な作業スキル
・交換部品、予備品、使用ツールなどの必要在庫

◆第3ステップ(予防保全体制の確立)
不具合履歴の分析結果を設計フェーズにフィードバックして製品品質を向上させる
仕組みを確立します。また稼動情報の取得により、不具合の兆候を見極め、その
予兆から不具合発生前に消耗部品の交換を行うことが可能になります。その結果
お客様が安定した設備稼動ができるようになり、製品そのものに対する信頼度も
アップすることになります。

◆第4ステップ(シナジー効果の発揮)
アフターサービス事業の強化は、より顧客サイドに立った情報収集が可能となる
ため、顧客ニーズにマッチした製品の企画・開発が可能になります。このことは
製品差別化による競争力の強化、そして新たな顧客獲得へもつながり、製造・販売
事業も拡大するといった、シナジー効果が期待できます。そのためには、縦割り
組織とならない様に、事業間での人材交流、情報交換を密にしていく必要があります。

冒頭に述べたように、製造主体の事業構造から付加価値の高い事業へシフトして
いくためには、生産性を飛躍的に高め、そこでの余剰となった人材を付加価値業務
へ割り当てていくという考え方がこれからの製造業の生きるための一つの手段である
と確信しています。
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 合同会社高崎ものづくり技術研究所代表の濱田です。
 日本が誇るものづくり技術にもっと磨きを掛けよう!!

 設計、製造、品質管理、海外工場管理などの実務経験45年
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