多くの工場において流出防止を目的とした目視検査が行われています。
目視検査は決して付加価値を生むわけではありませが、不適合品の流出が
人命に関わるものや大きな損失が生じるもの(リスク大)は全数検査が
必要になってきます。
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1.従来検査方法の問題点
しかしながら、全数目視検査での見落とし(見逃し)不良は各社の悩みの種と
なっています。人間の感覚と集中力には限界があり、個人差も大きいからです。
従来の外観検査は検査員の経験と感に頼った職種であり半ば聖域化されていました。
一般的な目視検査は、不良箇所の指摘であり、不良を検出するには「よく見る」
ことと「集中力」の継続でしたが、そのような作業はせいぜい2時間が限界です。
また、検査方法以前の問題として、照明・姿勢・器材の配置等の作業条件の問題
に気付かずに検査をしているため、見逃しが日常的に発生し、悩んでいるという
状況が非常に多いのです。
2.周辺視目視検査法とは?
それを改善するにはどうしたらいいか、という点について、実例を交えて触れて
見たいと思います。
従来の検査では「良く見る」ことが指導されていましたが、実はベテラン検査員は
周辺視、瞬間視、衝動性眼球運動という視覚システムを活用していると言われて
います。これらの前提条件とさらに、光源の種類や強さを最適化することで検査
での見逃しが大幅に削減できます。
一般的な目視検査は「不良探し」が基本となっており、人間の視覚と集中力を使って
不適合品を探す行動です。実は、これこそが見逃しが無くならない大きな要因です。
なぜなら「集中力」が短時間しか持たないからです。
これは「中心視目視検査」と呼ばれ、抜き取り検査には適していますが全数検査には
適しません。
「集中力」「不良探し」は見逃しの大きな要因であることから、この考え方を捨て
「良品の確認」と「リズム」を基本とした「周辺視目視検査」に切り替えます。
それは人間の違和感を活用した、瞬間(無意識)に判断をする能力を検査に適用する
方法です。
スポーツは全般的に中心視野は当然なことですが、周辺視野の活性化こそ様々な
運動能力UPにつながると言われています。
また、自動車の運転技能と同様の技能と考えると分かり易いと思います。
まだ運転が未熟の場合、視野が狭く違和感に自信がない為、周りをキョロキョロ
しながら(中心視)運転します。そして、短時間の運転で疲労感を感じます。
ところが熟練運転者の場合は視野が広く(周辺視)自然体で運転ができます。
これは、違和感に自信を持っているためであり、運転動作も自然に連動します。
3.周辺視目視検査のポイント
(1) 「違和感」による検査方法を体得する教育訓練法
まず、良品見本をイメージとして定着させます。
そして、不良見本のサンプルを準備し良品との差を認識します。「色」「形」
「表面の傷」などの目視検査の対象となる不良見本と良品見本の差をよく観察
して記憶します。
周辺視目視検査を有効に使い不良を違和感としてすばやく察知できるようにする
ためには、「ここまでが良品」というイメージを覚える(記憶・刷り込みする)
必要があります。そのためには、良品の限度見本を作製し、初期の段階での教育
・訓練と定期的な目合わせが重要です。
教育訓練後、例えば100個の良品と数個の不良品を混ぜて実際に検査します。
この時、不良個所がないかどうか注視するのではなく、瞬間に違和感を感じ取る
という訓練をします。そして、この方法で不良品を瞬時に感じ取り、すべて検出
できれば合格です。
周辺視は、車の運転と同じように訓練が必要であり、また個人差も大きいため
適性をよく見極める必要があります。
(2) リズム・姿勢がもっとも重要
見た瞬間にイメージとしての処理は完了します。そのため次々と新たなイメージを
取り込むことが必要です。自分の「違和感」に自信を持つことが大事になります。
そして継続的に瞬時に視点を移動させたり、ワークを動かすにはリズムが必要です。
目や手が固定されずにリズミカルに動けば,血液循環が良くなり,長時間の作業が
可能になります。背筋が伸びて,首の前傾が小さければ,首,肩,腰の負担が小さく
なります。(ベテランほど姿勢が良い)
(3) 照度は1000~1200Lux以下を目安に
中心視では明るくし過ぎる傾向が見られます。しかし長時間の作業では検出感度が
著しく減少します。照度は1000~1200Luxの照明で検査を行います。
以上、周辺視目視検査法について解説しました。
中心視目視検査は短時間での精度は高いが長時間では作業者の負担が大きく精度が
低下します。
周辺視目視検査はスピードが速くて作業者の負担が少ないため、全数検査では条件に
よっては有効な方法です。ただし作業者の熟練度による差が大きい欠点があるため、
定期的な訓練や、健康面のケアによって検査精度を一定水準に維持していく運用
方法が課題となります。
①検査員の姿勢、照明や騒音などの検査環境への配慮
②一定の検出力を保つために健康管理、視力アップトレーニング・脳トレ
③2時間ごとの休憩、休憩室の確保
④給与面の配慮(検査員手当の支給)など
(精密工学会 画像応用技術専門委員会
感察工学研究会のサイトより:http://www.eng.kagawa-u.ac.jp/~ishii/kansatsu/)
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①工場のヒューマンエラーメカニズム研究
②全数検査ミス防止対策
③ヒューマンエラーの再発防止、予防策
④IT技術活用ツールによる作業ミス予防対策
⑤ロジカルシンキングとフレームワーク型なぜなぜ分析
その他