製造業にとって、ラーメン屋のこだわりの麺、スープの差別化は必要ない!
という説について考えてみます。
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ラーメン屋というと、各店が個性を出して、しのぎを削っているイメージが
ありますね。人気店というと、必ずといっていいほど、スープや麺にこだわり
があったりするものです。もちろん、美味しいラーメン屋には、こだわりが
あるでしょう。
しかし、マーケティングの立場で考えると、他店との差別化なんて、実はそこ
までこだわる必要はないのです。そこでラーメン屋の提供価値は何かを考えて
見ます。
1.マーケティングから見た差別化
マーケティング戦略を考えるとき、ものすごく重要なのは「何を売るか?」と
いうこと。ラーメン屋なんだから、売るのはラーメンに決まっているじゃないか
と思うかも知れませんが、そうではありません。
ディズニーランドやUSJが何を売っているか?と聞かれて、ジェットコースター
やグッズでないことは確かでしょう。ディズニーランドやUSJが売っているのは
「家族や恋人と楽しめる、楽しい時間」だと思うのです。
同じように、ラーメン屋が提供しているのは「ラーメン」ではなく、例えば
「一人で時短で食べれるランチ」などという価値ではないでしょうか。
これらは、マーケティングの用語では、「提供価値」と呼ばれるものです。
ラーメン屋にとっての競合は、提供価値とセットで考えるべきです。
では、ラーメン屋にとって、競合とはいったいどこでしょうか?
すぐ近くにラーメン屋がある場合には、そのお店が直接的な競合になるかも
知れません。ではすぐ近くにラーメン屋が無かったとしたら、同じ提供価値を
もち、顧客の財布を奪い合うもの同士です。

つまり、提供価値が「一人で時短で食べれるランチ」であるならば、ちょっと
離れたラーメン屋よりも、近くに存在するお店が競合だと言えるでしょう。
実際、近くにファーストフード店や、牛丼店、お弁当屋などがあった場合、
お客さんを奪い合うことになるでしょう。
ラーメンマニアみたいな人たちは、その店のラーメンを食べるために、わざわざ
離れた店まで味を運ぶでしょう。しかし、そんな客はほんの一握りの、一部に
過ぎません。
不必要な差別化によって、例えばクセの強いニンニク臭によって、一部の客を
遠ざけるよりも、誰にでも好まれる味にしたほうがベターでしょう。
差別化を考えるのであれば、同じ商圏内で、しかも同じ提供価値を食い合う競合
店に対する差別化が出来ればいいのです。
つまり、今日はササっとランチを済ませたいと思った時に、対面にある牛丼屋で
はなく、こちらのラーメン屋を選んでもらう理由を作ることに注力するべきと
いうわけですね。
ラーメン屋に限らずマーケティングの視点で見たとき、差別化のポイントは
間違えないようにしなければなりません。
2.製造業の差別化
ラーメン屋の例に見られるように、そんな微妙な味にこだわることは必要
無いということです。ふつうの中小製造業に求められるのは、顧客の信頼を
得ることです。
安定した品質を確保する、納期を守る、レスポンスを早くするなどの、ごく
当たり前のことを継続して実現するということが最も大事なことです。
その当たり前のこととは、以下の4項目です。
①荷品質を高めたい
②ムダを省きコスト競争力を高めたい
③安心して働ける生産工場
④キレイで静かな生産工場

どの企業の製造工場も「いかに早く安く品質が良いモノを作るか?」が競争力を
確保するために、突き詰めて取り組んでいますが、人間が関わっている以上、品質
不良を100%撲滅はできません。その中で、いかに以下の2つの品質不良を減ら
していくかが鍵を握っています。
・市場不具合(無償修理の低減)
・工場内不具合(直行率阻害の低減)
②ムダを省きコスト競争力を高めたい
製造には、コストという制約条件も絡んできます。いかに製造プロセスの中で無駄
なコストを省き、儲けを出すことができるか?原価低減活動は、企業の競争力を
高める最も確実で手堅い手段として、以下の4つの項目の低減ができるか?が鍵を
握っています。
・素材費の低減(歩留まり向上・加工不良低減)
・労務費の低減(人員削減・品質不良などロスコスト低減)
・保全費の低減(設備故障低減・外注保全費低減)
・用役費の低減(エネルギー使用量の低減)
③安心して働ける生産工場
安全で安心して働ける職場というのは、生産性・品質向上の改善をする以前の
問題です。安心して働ける職場でないと、生産性・品質向上など言ってられま
せん。生産活動の中で最も重要な位置付けです。以下の3項目が重要な指標に
なります。
・職場災害の未然防止
・疾病防止
・メンタルヘルス・荷重労働対策
④キレイで静かな生産工場
・高齢化や女性にも対応した誰でも働ける工程・職場作り
・将来的に自働化を織り込み生産性向上を目指す
・快適に仕事ができる作業環境作り
・騒音の低減(静かな工場環境)
・アメニティ施設の充実(職場環境の快適に仕事ができる環境作り)
・照明(作業しやすい明るい職場環境作り)
・空調の適正化・空間作り(作業エリアの体感温度を下げる環境作り)
・環境負荷物質の低減(地球環境や人の健康に負荷を与える物質を減らす)

自社の技術力をアピールすることも重要なことですが、顧客となる大手が求め
ていることを把握して、それに対応できることが重要です。大手企業がどの
ようなことで困っているのか?何を提供すれば喜ぶのか?をよく把握して
それを実現するため、基本的なことを当たり前にできるようにすること、
地道に継続的に取り組むことが他社との差別化につながると思います。