製造品質とコストの関係について考えてみます。
一般に工場では失敗コストと予防・評価コストについてどのように管理すれば
いいでしょうか?
例えば、検査を厳重に実施して、2重に検査する、人出を掛けて全品を検査する
などの方法では、コストはその分上昇します。しかし、検査を省いた結果、不良
が流出するなら、市場での処置、回収作業など、社内コストと比べ膨大なコスト
が掛かります。また、信用も失い、無形の損失も大きいと思います。

上図のように、最適な品質水準は失敗コストと予防評価コストの交わる点であり
一番低いコストとなります。
この図から分かるように、品質を限りなく高くしていくとコストもどんどん上昇
します。しかし、価格が高ければだれも買わなくなり、市場競争力は無くなります。
市場の要求は、なるべく安く、良いものを欲しい時に手に入ることです。
実は品質管理の目的は、「コストを掛けずに品質向上させる」ことなのです。
しかし、上のグラフの様に、最適な品質水準を見分けるのは理屈では理解でき
ても実際にいくら費用を掛けて対策すればいいのか?判断が難しい問題です。
そこで、「付加価値生産性」の計算式を用いて工場全体のムダな費用を省き
「付加価値」を高める改善活動の中で品質改善を進めていくことになります。
詳しくは下の解説記事をご覧ください。
では、実際の改善の項目はどのようなものがあるでしょうか?
製品や工程の不適合(トラブル)を未然に防止し、検査は行わなくてもトラブル
が起きないよう、管理のしくみや、教育訓練、作業手順、設備、測定機の配置を
事前に考え、万全な体制を敷いてで生産をスタートさせる手順を確立しなければ
なりません。
一例として、費用を掛けずに品質を作り込む、トヨタ生産方式の「自工程完結」
「自働化」「ポカヨケ」などの考え方が参考になります。トヨタ生産方式の考え
方は、現場でアイデアを出し、試行錯誤を繰り返して独自の管理方法を確立する
ことです。
また、評価テストに時間や人手を掛けるのではなく、製品設計や、工程設計時点
で潜在する不具合を洗い出すための手法を導入します。
「品質工学(タグチメソッド)」「FMEA」「FTA」「リスクアセスメント」
などの信頼性設計手法を上流工程に組み込んで製造工程や市場における品質トラ
ブルを予防します。