企業経営者は、現場で中心となって仕事をけん引し、改善活動を積極的に推進
するリーダー像を描いているようですが、リーダークラスの若者は、また違った
観点で仕事や経営層を見ているようです。
1章~5章目次
【現場ですぐ使えるマニュアル】
1.第 一線監督者に必要な能力の重要度と変化
(1)第 一線監督者の定義と役割
第一線監督者とは、一般的な製造業の現場において、リーダー、主任、係長
などと呼ばれる人たちが対象になります。
監督者に必要な資格要件として「教え方」「改善 の仕方」「人の扱 い方」
について以下の5項目が監督者の基本的技能とされています。
(1)仕事の知識
(2)会社についての全般的な知識
(3)作業指導を行う知識
(4)作業方法改善の技能
(5)統率の技能
(2)必要な能力の変化
今まで日本の製造業の発展を支えた柱の一つは、よく教育されモラールの高い
熟練作業者と、新人のしつけと教育を担い、彼らを熟練作業者として育成する
責務を担ってきた熱心な現場監督者からなる製造現場の活力にありました。
その基礎は高い経済成長に支えられ、安定した労使関係にありました。
しかし、若者の労働意識の変化、高度に機械化が進んだ加工技術の進展、不況
によるリストラなど、製造現場を取り巻く環境は大きく変化しつつあります。
経済産業省の調査結果では、必要な能力の重要度の変化については、「職場改善
の能力」「多能工の能力」「品質管理」「工程管理」といった専門技術能力、
「部下に対する指導力」などの対人的能力より重要になっていると考えられます。
2.第一線監督者が解決したいと思っている問題点と悩み
製造現場の第一線監督者が解決したいと思っている課題」を挙げると「改善活動
の活発化」(57.5%)をあげた者が一番多く、「部下の能力アップ」(55.0%)が
それに続いています。
また「仕事の段取り」「品質管理」「部下の能力アップ」「働きやすい職場」
などに対応する項目は上位を占めています。しかし、第一線監督者の悩みと課題
について聞くと以下のような結果が得られました。
1)問題点の解決を困難にしている理由
上記の課題の解決を困難にしている障害に関して、「課長や部長クラスの上司」
(50.0%)が一番多く、続 いて「品質管理など管理システムの不備」(40.6%)
「受注先や仕事の変化」(40.6%)、「経営トップ」(34.4%)の順となって
います。
「監督者自身」(31.3%)とする反省も見られる一方、「部下」を理由にあげる
監督者は少ないという結果です。
第1位、第2位、第4位の項目は、上司のリーダーシップや管理システムのまずさ
による障害であり、上位経営管理層の責任が大きいといえます。
多くの研究者も指摘しているように、日本的経営・管理は以下のような特徴を
持っていると再認識させられます。
(1)上位管理者に理念や戦略が不足
(2)リーダーシップの欠如と現場に頼るシステム
(3)職務権限が不明確
(4)各人の役割や責任が不明確
(5)計画立案~評価(PDCAサイクルの管理)が未熟
2)第 一線監督者が必要としている技術
第一線監督者がどのような技術の習得を願っているかについての調査結果では
「部下とのコミュニケーシ ョン技術」(43.8%)と「従来の専門知識・技能
のレベルアップ」(43.8%)が第1位となってお り、「リーダーシップの技術」
(40.6%)、「新しい技術や技能の習得」(37.5%)が続いています。これら
から、以下の結論が得られます。
(1)職場における良好な人間関係の維持や部下に対する教育・しつけの技術
を習熟したいと思っている。
(2)職場の競争力を維持・向上するため、より高度な熟練と新技術の習得を
望んでい る。
(3)品質管理技術や改善技術の習得要求はそれほど強くない。
(4)職場におけるリーダーシップと部下の育成
とくに新人のOJT教育は、リーダーにとって、もっとも重要な責務の一つとなるが
しかしそれはリーダーだけが頑張れば済むというものではなく、OJTを効果的なら
しめるための人材育成計画や評価制度が存在し、また指導方法などに関してリーダ
ー自身を教育するシステムが確立していなくてはなりません。
部下の指導・育成を困難にしている理由についての調査結果では
「人材育成のシステム等がなく、現場任せ」(62.5%)、「会社に人材育成計画が
ないか不十分」(51.6%)など現場任せの職場が多いことを示している。「監督者
は忙しすぎる」という意見が35%あり、この点も上司や経営側の責任と言えます。
参考文献:日本企業 における第一線監督者の役割 と課題
愛知工業大学 田村 隆 善先生/名城大学 福 田 康 明先生









