従来生産性向上の名のもとに進められてきた改善は、工程単位/設備単位の
効率化・稼働率向上であり、部分最適の考え方であった。
しかし、生産性向上は、売上、利益を伸ばすために改善を実施するのであって
部分的な改善に留まるのではなく、工場全体(職場間連携)/流れを作る
/仕掛在庫(滞留)削減などの「全体最適化」が目的となります。
現場管理者の視点から見た生産性向上の進め方とは?
トップ方針と現場の活動の融合を図る
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ここでは、全体最適化のための、生産性向上対策の概要と手順を解説します。
下の図のように、昨年度は利益が出ていたが、今年度は赤字に転落しました。
赤字を解消し、黒字に回復させるには、売上高の伸びがすぐに期待できない
場合、どうしたらいいでしょうか?

黒字化の条件は
①売り上げを増やす
②人件費を減らす
③外部購入費(外注含む)を減らす
この3つの方法となります。
そうすると、売上の伸びが期待できないとすると、人件費を減らす
および外部購入費(材料費、外注費)を減らすしかありません。
1.現状調査
そこでまず、工場の実態を調査します。
(1)人員と就業時間、人件費を正確に把握する(月単位で)
①正規従業員数(直接間接含む)と人件費総額
構内派遣外注人数と人件費総額、パート社員人数と人件費総額
職種別(作業別)人員把握
②就業時間(定時内+残業)を把握する(月単位で)
正規社員、構内外注、パート別の内訳別
(2)社外外注費を把握
外注費用と、その仕事を社内に引き上げ可能かどうか検討する
2.目標設定
生産性向上の意味は、仕事を効率化して人を減らすこと(省人化)で
あり省人化を伴わない業務改善とは、目的・手法が異なる。
赤字解消する人件費の削減額から省人化の人数を決定する
何人減らせば、いくらの費用が浮くかを計算し目標値を設定する。
その際に、
①残業時間を減らす
②アルバイト、パート・派遣社員を減らす
③正規社員は極力減らさない
30%の人件費を削減して生産性向上を狙うとして
(総人数×年間総労働時間×人件費)×0.7=(赤字解消額?)
赤字解消可能な金額からその時の人員数を算出する。
3.生産性向上対策の進め方のステップ
STEP1:目標に沿って、残業時間の削減、構内外注、パート社員の削減を
実施する。
人員が減った分は、正規社員が応援体制を取る(直接員、場合によって
間接員も対象)、また社外外注は社内へ引き上げる
STEP2:上記生産性向上の目的・方針を全社員に説明、目標を立て、毎月の
成果を見えるようにする。
そのことで社員の危機感が増し、改革の必要性を肌で感じるようになる。
また、成果により達成感を全員で共有できる
STEP3:緊急策としての現場改善の主な項目は以下の通り
①流れを見える化する
機械の移動は制限があるので、品物の流れを見える化する
②製品種類ごとにラインを固定する
品種ごとに工程を固定化する(決まったルートを通る)
③標準リードターム設定と短縮化目標設定
品種ごとに標準リードタイムを設定する(例:現状の30%短縮)
同時にロットサイズを小さくし、負荷の平準化を図る
(1000→500→200)
④生産計画
標準リードタイムを基準に生産計画を立て、遅れ進みの見える化
を行う
④応援体制
ルールを決めて仕事量に応じた人員配置を行う(固定化はやめる)
⑤進捗管理の見える化と遅れの対策(究極は時間単位の管理)
遅れが生じた場合、原因を追究しその日のうちに対策する
(現場ミーティング)

赤字が解消する目途が立ったら、次に中長期の計画を立てて
売上高、利益の増大のための計画を立てます。
①一人作業(多能工化)
②小ロット化
③段取り時間短縮(シングル段取り)
④ネック工程能力アップ
⑤生産計画と生産管理の改善
⑥品質改善
⑦教育訓練のしくみ
⑧新製品の受注
生産性向上(省人化)の狙いは、生産キャパを増やし、新しい仕事を
取り込む、省人化により余力が生じた人員を、より付加価値の高い
業務に従事させることができるようになることです。