中小製造業にとっては、受注加工生産の下請け体質から脱出し、いかに自社
独自の付加価値を高めていくかが課題となっています。しかし、中小に限らず
中堅企業においても「下請け体質」が抜け切れていない企業も意外と多いのです。
1.中小製造業の現状と課題
受注加工生産を行っている中小製造業は、下請け的な受注生産から抜け出す
ことが最も重要な課題となっていますが、多くの受注生産企業では、発注元
企業からのコストダウン圧力により価格競争を強いられ、高い収益性は望め
ません。
与えられた図面通り忠実にモノづくりを行うことは必要ですが、それだけで
は他社に勝てません。
そこで、このような受け身の体質から抜け出すために、加工技術を磨くこと
はもちろん、上流工程の部品設計や、試作製造、下流工程の保守サービス
などの分野に少しずつ業務の幅を広げ、より付加価値の高い業務へ人、設備
などの経営資源を振り向けていくべきです。
国内では無名に近いが海外ではよく知られている圧倒的な優位性を確保して
いる世界企業の例として
プロジェクター用マルチレンズで約75%、同反射鏡で64.9%、歯科用
デンタルミラーで約72%と、3つの世界シェアーNo.1製品を持つ
“オンリーワン企業”
冷凍船用の冷凍庫では世界で約80%のシェアを誇る。
お客様のニーズに対し常に「どうしたらできるのか」を製造・販売・技術
すべての部門が一体となり、考え、挑み、解決してきた。
しかしいきなり、世界トップレベルの企業になるためにはそれなりの努力が
必要です。
まず第一歩として、下請け体質から脱出し、大手企業のパートナーの位置づけ
を確保することで、顧客の信頼と期待に応え、高い付加価値を提供して価格
競争から脱出できると考えられます。
2.顧客の期待に応える品質とは
そこで、現在の中小製造業における品質管理の問題点を整理してみます。
戦後、アメリカから導入された統計的品質管理手法の活用方法は、過去の
データを集めて分析し、統計的な解析を行って問題を抽出し対策を講ずる
ために使われることが主体となっています。
それは、主に製造現場の仕事として行われており、その品質の良し悪しの
判定は、顧客から受け取った仕様書や図面をもとに行われています。
しかし、図面から読み取れる顧客の「要望」「期待」はごく一部のもので
しかありません。図面通り何も考えずに加工していたのでは顧客の要望や
期待の一部しか応えていないことになります。
例えば「このような材料ならもっとコストが下がります」「このような形状
ならもっと加工方法が簡単になります」といった、提案を行えば顧客から
喜ばれ、取引量が増え、長期の継続的な取引が可能になるかもしれません。
ホームページ上に、このような技術的な提案を行っている中小製造業を見か
けることがありますが、単なる会社紹介だけ行っている企業に比べると格段
に魅力を感じるものです。
ここで指摘したいのは、モノの品質基準に対して良品、不良品を判定する品質
管理から、いかに顧客の「期待」に応える品質を実現するかが今最も重要な
取り組みなのです。
そのためには、顧客の期待に応える技術や顧客とのコミュニケーション能力
を持つ若手人材の育成が企業トップにとって最も重要な課題と言えます。
日本の製造業では、「なぜなぜ分析」や「QC七つ道具」に代表されるように
工場のモノの品質だけに注目する狭い範囲の品質管理手法から抜け切れていま
せん。そこから一刻も早く抜け出し、本当の意味の顧客第一主義を実践する
品質管理に転換することが求められているのではないでしょうか。









