多くの設計部門で、ありがちな考えとして「標準化は多品種少量生産型には
適用できない」というもので、これは「標準化」に対する誤解というほか
ありません。
1.標準化こそ技術の成果
標準化が適用できない主な理由として、標準化しても守られない、結局顧客
の言い分を聞かなければならず、「標準化」の推進は、自由に設計できない
恐れが生じると考えてしまうからです。
結局営業が受注したものを、開発・設計、調達などがその要望に個別に応え
てしまい、その結果製造部門へしわ寄せが行き、納期遅れや品質問題などが
発生します。
標準化のためには部門間のコンセンサスを得ること、コスト感覚を持って
全部門のベクトルを合わせる努力が必要になります。
「標準化」こそ設計効率化、設計・製造リードタイム短縮に対してなくては
ならない要素です。
即ち標準化こそ技術成果そのものであり、なされていなければ技術が確立さ
れたとは言えないのです。
つまり戦略なき商品増がコスト増の要因になりますので、ぶれない設計推進
活動が必要です。
2.共通化の推進
ユニット化とモジュール化によって共通化を推進します。
ともすれば製品数が増えるのに比例して部品数が増えますし、部品数が増え
ると、作業工数や設計工数が増えます。結果として管理コスト、在庫コスト
製造コスト、設計コスト、各種ロスコスト、リードタイムが増大します。
共通化とは、部品やユニットおよびその設計図にできるだけ共通のものを
使い、多くの製品に流用することで、設計や製造にかかる時間やコストを
削減できます。ただし、共通化できるのは過去に製作したことのある部品や
ユニットだけに限定されます。
顧客要望やライバルメーカーとの競争で製品数が増えても、ユニット組合せ
で対応し部品数や管理工数を増やさない設計が可能となります。
3.標準化の推進
標準化とは「設計のやり方の標準化」であり、設計に何らかの「制限をかける
こと」で、個人裁量範囲を削減することです。そのことによって、個人差の
減少、バラツキ幅の縮小を行っていく手法です。
顧客要求が様々だからと言って放っておくと色々な方向に向いて行ってしまう
ので、何らかの制限をかけながら、顧客の要望も取り入れていくこと、これが
標準化の基本です。標準化には以下の2種類があります。
(1)設計思想の標準化
①設計条件の標準化:設計パラメータを標準化しておき、顧客の要望に対し
標準化した設計パラメータの中から選択する。例えば、同一部品図面におい
ては同一材料、同一外形寸法、同一加工方法を適用するが、組み合わせ取り
付け部品の違いにより穴位置、穴径が異なるいくつかのパータンを準備する。
このことによって、個別の部品図面を作成する手間が省け、製造工程も共通化
が図れる。
また、同一図面において、材料の板厚を1mm,2mm,3mmの中から選択でき
るようにする、また外形寸法だけを変化させいくつかのパターンを準備する
などが考えられます。

顧客要求仕様が8通りある場合、社内図面のA、B、Cの3通りの中から選択する
ことにより、標準化が図れる。
②製造条件の標準化:塗装条件や表面処理条件、熱処理条件、面取り条件
検査条件、規格などが対象になり、これらは製造コスト低減に大きく貢献
します。
(2)手順の標準化
作業の進め方や手順を明確にすることにより個人差を防止し、適切な進捗
管理が出来るようにします。またポカミスの発生防止と負荷予測を実現します。
QFD(品質機能展開)の実施、FMEAの実施、デザインレビューの実施など。
設計業務は知識や経験といったノウハウが必要となるため、特定の担当者に業務
が偏っているケースが多いと考えられます。ベテラン、新人のどちらが設計を
担当した場合にも、一定の品質を担保するためにも設計標準化は必須となります。