在庫を持つことは、現場にとって何も考えなくて済むという、最も安易な
方法であり、そこに悪さが隠されているのです。
現場管理者の視点から見た生産性向上の進め方とは?
トップ方針と現場の活動の融合を図る
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企業経営者は、在庫増が経営を圧迫することをなんとなく理解はしていますが
現場管理者にとっては、在庫を持っている方が急な出荷要請に応えることが
でき、会社にとっては、在庫はある程度必要だと考えている場合が多いと思い
ます。
しかし、どれだけの在庫を持つことが許されるのかは、定量的に捉えているとは
では、工場では、なぜ在庫が増えるのかを考えてみます。
(1)資材担当者は、安全を見てなるべく多くの部材を早めに手配し、材料倉庫
へ保管する(材料在庫増加)
(2)製造工程では、各担当者は段取り回数をできるだけ少なくして、効率を高め
るため、なるべくロット数をまとめて一度に加工する(仕掛在庫増加)
(3)納入先の急な出荷指示に対応するため(ジャストインタイム要求)、なるべく
製品在庫をたくさん持っていたほうが要求に対応できると考える(製品在庫増加)
上記の結果、以下の弊害が生じます。
(1)生産リードタイムが伸びるため、資金の回収が遅れる
(2)複数ロットをまとめて作るため、飛込み注文や納期変更に機敏に対応できない
(3)ロットの数を大きくすると、不良がまとめて発生する
(4)材料や製品在庫が増えると、倉庫の増設、積み下ろし、運搬作業が発生する
工場の各部門本位の考え(部分最適)で、管理を行っている工場では、スループット
が低下します。スループットとは、一人当たり、単位時間の生産額です。
2.在庫を減らせば利益が出るメカニズム
図のように工場の全体最適化を図り、在庫をなくしてリードタイムを短縮することで
そこに空いた時間が捻出できるため、次の仕事を取り込むことができます。
そうすると、一人当たり、単位時間の生産額が増え(スループット向上)、売上高が
増え、利益増に貢献します。
また、リードタイム短縮により、ジャストインタイム生産が可能となり、飛込や納期
変更等に柔軟に対応できることになります。
つまり、在庫を減らすことが生産性向上につながっているのです。
しかも、取引先要求の納期に柔軟に対応可能となるのです。
(1)基本的にネック工程にはバッファーとしての最低限の仕掛在庫を許容し、ネック
工程以外は仕掛在庫は置かないこととします。
(2)材料の仕入れは、ネック工程の日程に合わせ、ぎりぎりのタイミングで行い、
在庫は持たないことが基本ですが、長納期部品など一部の例外もあります。
(別途解説)
(3)製品在庫は、ジャストインタイム納品ですから、作り溜めは行わないことが
基本となります。
以上のメカニズムをしっかりと頭に入れておかなければなりません。
最終的な目標は、スループット(1人・1時間当たりの生産額)が最大になるよう
工場の全体最低化を図ります。
リードタイム短縮対策として、以下の管理を行ます。
(1)ロットを分割して小ロット生産を行う(究極は1個生産)
(2)内段取りを外段取り化する(段取り時間の短縮化)
(3)ネック工程基準の生産計画を立てる(TOC理論)
(4)進捗管理(究極は1時間単位)と遅れ対策
(原因究明と現場ミーティングによるその日のうちの対策)
多品種少量生産工場では、小ロット製造化、在庫を減らしてリードタイム短縮化を
推進することで、生産性(スループット)が向上し、売り上げ増にもつながります。