スマートファクトリーは中小企業にとって、いったいどのような効果をもたらす
のでしょうか?
2回のシリーズで解説します。
スマートファクトリー (Smart Factory) とは、設備やセンサーなど工場内の
あらゆる機器をインターネットに接続 (IoT:Internet of things) し、品質や
生産状況などの様々な情報を「見える化」し、その情報を分析することによって
生産活動の全体最適化を図り、その結果企業の利益を増大させるというものです。
1.スマートファクトリーへのロードマップ
2017年5月に経済産業省より「スマートファクトリーロードマップ」が公表
されました。
日本の製造業においてスマートファクトリーが求められる要因は、「人材不足」
と「超高齢社会」があります。このままでは熟練工によって維持されていた高度
な技術を次世代の人材に伝えていく「技能継承」が困難になることを意味します。
今後は、さらに世界的な感染症の影響拡大などに伴い、製造業の置かれた立場
は益々厳しくなり、生産性向上対策、新たな付加価値の創出などをさらに加速
させるなどの、経営のあり方そのものの見直しが求められているといえます。
2.ものづくりのスマート化とは
「ものづくりのスマート化」の具体的なイメージとしては、以下のようなデー
タを活用したものづくりを指しています。
・ロボットを使って作業を自動化し、人間の負荷を軽減
・無線、インターネット技術活用により現場の状況をリアルタイムで把握
・各種センサーからの情報を蓄積、分析して稼働率アップ予知保全などに活用
・AR(Augmented Reality:拡張現実)やVR(Virtual Reality:仮想現実)
を利用して熟練工の作業の形式知化と教育訓練に活用
スマート化の目的は
・品質の向上
・コストの削減
・生産性の向上
・製品化・量産化の期間短縮
・人材不足・育成への対応
・新たな付加価値の提供・提供価値の向上
・その他(リスク管理の強化など)
3.中小製造業の導入が進まない理由
しかし、中小製造業では「IoT・AIやスマートファクトリーといっても何をやったら
よいのか」と感じている企業が多い。IoT・AIはニュースで取り上げられることが
増えてきたが、それを自社内で活用し、具体的に取り組み、成果を得ている企業は
まだまだ少ないのが現状です。
IoT活用が進まないのは、IoTの目的が「経営課題」と結び付けられていないためだ
と考えられます。IoTはあくまでも手段であり目的ではありません。目的は何らかの
経営課題を解決し、それをリターンに結び付けることです。
IoTは、今まで取得できなかった現場データがリアルタイムで自動的に取得できる
というのがポイントになります。しかし、IoT活用に向けた投資を回収することを
考えると、製造現場での具体的な取り組みは、経営面への効果につなげていく必要
があるということです。
現場側と経営側が一体となり「経営課題」を解決するというのは、重要なことで
ではあるが、データを集めて見ないと有効な改善につながるのかどうかも分から
ないという状況で、「費用対効果」を考えると企業が投資に二の足を踏むのも
当然な面があります。
そこで、以下に、一般的なシステム導入のステップを示します。
3.システムの導⼊のステップ
スマート化システムとして、IoT、ロボットなどのシステムを導入するステ
ップを以下に示します。
STEP1:スマート化の構想策定
成功のポイント:経営者のトップ主導による推進
①目的目標の明確化
②社内体制の構築
③構想の策定
STEP2:トライアルシステム導入
成功のポイント:全体最適を念頭に初期段階ではスモールスタートで始める
べき
①要件定義
②システム導入、実証
③トライアル
④評価、改善
STEP3:運用
成功のステップ:導入効果を共有し、従業員のモチベーションを向上させる
①運用
②定着
4.データ活用のレベル
データ活用のレベル(スマート化のレベル)は、IoTなどをどのように活⽤し
どのような状態を実現すればよいか、イメージできるように整理したものです。
レベル1:データの収集・蓄積
有益な情報を見極めて収集して状態を見える化し、得られた気付きを知見・
ノウハウとして蓄積できる
レベル2:データによる分析・予測
膨⼤な情報を分析・学習し、⽬的に寄与する因⼦の抽出や、事象のモデル化・
将来予測ができる
レベル3:データによる制御・最適化
蓄積した知見・ノウハウや、構築したモデルによる将来予測を基に最適な
判断・実行ができる
以上で、スマートファクトリー化とはどんなものか?概要は理解できたと
思います。
では、実際に中小製造業のスマートファクトリー化への具体的取り組み
と問題点課題は何かについて迫ってみます。
(その2へ続く)