経営トップのための「一から学ぶ品質管理の基本」シリーズ(その二:経営者が守るべきルールとは?)

製造業では明文化されたルールとして工場共通の規定、各業務規程、作業の標準などが
上げられます。
その中身はいずれも、実務者レベルが業務遂行上守らなければならないルールが規定され
ていますが、実は経営者が守るべきルールも存在することも忘れてはなりません。

ISO9000では、トップマネジメントの役割が規定されています。
しかし、その内容をマニュアル化されることはほとんどありません。

1.経営者の守るべきルールとは
ISO9001:2015年版品質マネジメントシステムの5項「リーダーシップ」にはトップ
マネジメント(経営者)の役割が以下の様に規定されています。

5.1.1 一般
トップマネジメントは,次に示す事項によって,品質マネジメントシステムに関する
リーダーシップ及びコミットメントを実証しなければならない。(以下省略)

5.1.2 顧客重視
トップマネジメントは,次の事項を確実にすることによって,顧客重視に関するリーダ
ーシップ及びコミットメントを実証しなければならない。(以下省略)

5.2.1 品質方針の確立
トップマネジメントは,次の事項を満たす品質方針を確立し,実施し,維持しなければ
ならない。(以下省略)

また9項「マネジメントレビュー」では

9.3.1 一般
トップマネジメントは,組織の品質マネジメントシステムが,引き続き,適切,妥当かつ
有効で更に組織の戦略的な方向性と一致していることを確実にするために,あらかじめ
定めた間隔で,品質マネジメントシステムをレビューしなければならない。(以下省略)

出典:対訳 ISO 9001:2015(JIS Q 9001:2015)品質マネジメントの国際規格
    QMS規格国内委員会 (監修)

ISO9000の規格では、トップマネジメントの強力なリーダーシップなくして企業の有効
な運用はできないと考えられているわけですが、だからと言って、経営者がすべてを
「独裁的に」決めて実行してもいいと言っているわけではありません。


2.明文化されない経営者のルール
しかし、どの企業でもISO9000のトップマネジメントに関する規定について、具体的な
手順書や業務フローが作成されているわけではありません。そもそも経営の手順をISO
事務局が勝手に作って、経営者に守れという訳にも行きませんし、かといって、経営者
自らが自分の業務の手順書を作ることはありません。

ISO9000は1987年に初版が制定されて30年以上の間に数度の改訂を経て現在に至って
います。その中身は、いわゆる「製品の品質保証」中心の規格から、「品質マネジメント」
中心の規格へと変遷してきました。

つまり、当初は製造業の工程で「検査」を実施すること、「是正処置」「予防処置」を
実施することなど、製品の品質保証のための規格が中心でしたが、現在では、変化する
社内外の状況を捉えて企業全体のマネジメントシステムを適合させ、継続的に改善する
ことを重視するものとなっています。

具体的には、品質方針を通じて、組織が目指すべき方向性を示し、「リーダーシップ」
を発揮することや「組織の運営」「コミュニケーション」といった企業経営そのものに
より大きな比重が掛かるようになっていると言えます。

しかし、このISO9000の目的の変遷を理解し、実践している経営者はほとんど
いないと考えられます。

ISO9000を重視せよと言っているのではなく、ごくごく当たり前の経営者にとっ
て必要な能力について、ISO9000を引用して述べているのです。

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