熟練技能をどうやって継承させるか?中小企業の熟練技能とノウハウを継承する(その2)

(その1)で整理した通り、マニュアル化が可能な作業については、作業要素ごとに
作業方法、手順の標準化を行い映像や写真などを駆使したマニュアルを作成し、それを
基にした教育訓練を実施します。またマニュアル化が難しい作業は、熟練作業者自らが
実際の作業を行いながらの教育訓練を実施します。

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しかし、熟練技能者には、技術と技能を明確に分離することや、またそれぞれを伝承
するためのスキルを持っておらず、また伝承することの重要性を理解していない場合が
多いと考えられます。経営者としても重要性を感じてはいるものの、具体的にどのよう
な方法で伝えていけば良いか明確な考え方を持っていません。

そこで、熟練技能の行動や作業の分析を行って、マニュアル化が可能な作業とマニュア
ル化が難しい作業の分離を行い、それぞれについて伝承していくための手順について
考えてみたいと思います。

1.熟練技能者の行動を分析すると意外な結果が
熟練技能者の作業の様子をよく観察すると、決まった手順で行う作業と、勘・コツの
必要な作業に分けられることが分かります。実は熟練作業の内訳は90%以上が繰り
返し作業+選択作業であり、熟練技能者にしかできない勘やコツを要する作業は10
%以下であるという意外な結果が筆者の実施した調査により判明しています。

以下にその一つの事例を示します。
加工機械による精密切削加工においては、決まった手順で行う作業(繰り返し型作業)
として、図面の準備、材料の切断作業、段取り作業、中間検査、バリ取り作業、洗浄
作業、測定作業、完成検査、機械の点検・清掃などがあります。これらの作業はマニ
ュアル化が可能であるため初心者でも訓練を積むことで作業を行う事が可能となります。

2.マニュアル化が難しい作業
マニュアル化が難しい作業としては、例えば加工条件導出作業があります。
ワーク(材質・形状)に対して工作機械の特性(クセ)、切削液・工具の選定、切削
条件(最適送り速度、回転数)をどのような組み合わせで行うのか、その複数の要素
の組み合わせは無限大に存在します。しかし、与えられている制約条件のもとで、最
も高いパフォーマンスが出せるように工具を選定して切削条件を最適化していかなけ
ればならず、それは長年磨き抜かれた感覚(勘)や、優れた技能(コツ)により製品
を作り上げる熟練作業になります。

更に深い経験や知識を基に、新たなモノやしくみ、アイデアを生み出すことも熟練技
能者として必要になってきます。

そこで、まず全体の作業を決まった手順の作業と勘・コツ作業に分けます。これには
多少時間が掛かりますが、作業の観察と熟練技能者へのヒヤリングを行いながら進め
ます。これには技能継承の必要性を説き、協力を得るための努力と工夫が必要となり
ます。

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 合同会社高崎ものづくり技術研究所代表の濱田です。
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 設計、製造、品質管理、海外工場管理などの実務経験45年
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