令和2年度第3次補正予算で「事業再構築補助金」が新設されます。
事業再構築補助金とは、中小企業庁が主管で、予算総額1兆円超、1社あたり
補助金交付額100万円~1億円、補助率2/3という大型補助金となっています。
また、申請要件については、2021年2月に詳細が示される予定ですが、ポイント
は、コロナの影響による事業環境の変化に対して、規模拡大、新分野展開、業態
転換、事業転換などの事業再構築が求められています。
しかし残念ながらせっかくの補助金申請が採択されない、採択されてても
計画通り生産効率が上がらない、それどころか、導入した設備が使われずに
埃を被っているというような企業が非常に多いのも事実です。
中小企業にとって、せっかくの補助金が生かされないばかりか、これでは企業の
生産性向上は望めないでしょう。
1.不採択となる理由
なぜ、補助金申請が不採択となるのでしょうか?
もっと言うと、最初から補助金を受け取るつもりで設備投資を伴う事業計画を
立てると、なぜ上手くいかないことが多いのでしょうか?
まず、補助金というのは後払いが基本なので、設備投資を進めてその結果が
出た後で、かかった経費などを調べて補助金が支払われます。
最初から補助金をあてにして資金計画をギリギリ設定していた場合、もし補助金
を受け取ることができなければその後、資金ショートを起こしてしまいます。
同様に、補助金をあてにして、一時的に事業資金を借り入れた場合、補助金が
出なければその借り入れた分を返却しなければいけなくなるので、返済に苦労
するかもしれません。
補助金というのは、支給されるかどうかが不確定なので、それを最初からあてに
した事業計画は不採択になるのです。
例えば、「10年前の機械では顧客の要求する加工精度が出にくく、熟練工が
必要。歩留まりも悪いため要求納期に応えられない。それが熟練工でなくても
できる最新の設備を導入したい」
という申請内容とした場合はどうでしょうか?
このような既存の設備の機能を高めて生産性を向上させるための設備投資は不採択
となります。この例のように、工場の一部の生産性向上では、職場の小集団による
改善レベルにすぎません。
職場レベルではなく、経営レベルの改善としては、会社全体の付加価値生産性アップ
と持続可能性です。
採択されるためには、経営視点の改革が必要なのです。
例えば「ものづくり補助金」の例でも、採択要件である「付加価値額+3%以上/年」
を満たさないと判断がされます。
また、その他の要件である事業計画3~5年間にわたって「給与⽀給総額が年率平均
1.5%以上向上」、「事業場内最低賃⾦が地域別最低賃⾦+30円以上」を満たすこと
も不可能と判断されます。
2.採択されるためには
採択されるためには、革新性をアピールしなければなりません。
事業再構築とは、製品サービスの付加価値向上、新しい商品サービスの提供、新た
な市場進出と捉えられます。
(1)技術アイデア
①自社にとって新しい取り組みである
②他社においても一般的でないこと
③地域・業種内での先進性が示されてること
(2)実効性
①自社組織内で実現できる人材がいる
②資金計画、売り上げ計画が妥当である
③実施期間が妥当である
(3)事業の持続発展性(新規顧客獲得、新市場進出)
①今ある他の事業のへの展開ができる
②投資した設備を利用して新しいアイデアが実現できる
③この設備を導入すれば、他の事業へ水平展開できる
があることを示さなければなりません。
このように設備更新する「目的」を中長期的視点で考えなければ、採択要件を満
たせる事業計画が作成できないのです。
単なる加工精度向上、納期短縮といった問題を、設備投資で解決することではなく
経営革新につながることが重要です。
このことは、どの補助金でも同じ考え方が適用できると思います。
新規設備導入の場合、例えば以下の内容が考えられます。
熟練技術者でなくても加工精度が出やすい新しい加工ツールを開発し、その開発
した加工ツールを新規設備で加工し、今まで難しかった加工精度を実現すること
で、今後も顧客要求に合わせたツールの開発・製品精度・納期対応が可能になる。
ツールの開発は、既存技術の転用であり、ツールの内製化は、新たな付加価値の
発掘です。そして顧客や業界でこの取り組みが先進的であれば、革新性がある事業
として認められるのです。
3.申請書の書き方のポイント
中小企業庁や経済産業省で扱う補助金の申請書は、何千件、何万件となり、それを
一つの機関で短期間でチェックをします。ですから全ての申請書をじっくりチェック
する事は不可能です。その為、上記の(1)~(3)の用件に合致しているかどうか
所定のキーワード、例えば『他社では実現できない先端性』『他の事業へ展開』等
のキーワードを用いアピールします。
また妥当性については技術的に専門的すぎると、理解してもらえないため、平易な
表現でわかりやすく記述する必要があります。
そして、上記でも述べたように、補助金をあてにした資金計画では採択されません。
あまりにも高額な設備購入は、より厳しく見られ、過去の事業売上規模に対して
不釣り合いな場合や、採算性の観点で懸念される投資額の場合は採択は難しいと
考えられます。
中小企業にとって、補助金制度を有効に活用することは、社内改革、事業の飛躍の
きっかけとしての効果が期待できます。
以上今まで、補助金申請を行ってきた経験から見解をまとめてみました。
経営者、幹部の皆さんも、ぜひチャレンジして頂きたいと思います