検査を実施し、工程の品質を確認する方法は、付加価値を生みません。
適切な工程や作業手順と、良いものしか後工程に流さないことにより
究極的には「検査レス」を目指します。
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このためには、各作業工程で、「自工程完結」していることが必要です。
「後工程はお客様」という言葉も同じような意味を持っています。
1.自工程完結とは
自工程完結は、英語ではZone controlと呼ばれることもありますが、
Ji Kotei-Kanketsuの頭文字をとってJKKとも言います。
トヨタでは品質を各工程で作りこむ自工程完結によって最終的な検査に
頼らなくとも高い品質を保てる仕組みを構築し、仕事の段取りをきちんと
行う事で手戻りややり直し、漏れ、無駄のない効率的な業務を進められ
るようにします。
「自工程完結」は、生産ラインの作業者それぞれが受け持つ「工程」に
おいて、その工程で要求される品質や要求事項を満たすため、ポイント
となる条件や手順を、個人スキルに頼らず作業指示書(しくみ)の中で
明確にし、不良品を後工程に送らないことを目指します。
2.自工程完結工程の事例
例えば、自動車には様々な配線が取り回されており、様々なコネクター
で結合されています。このコネクターは、一般にオス側とメス側があって
両者を差し込んで組みつけていきます。これがしっかり結合されていない
と、接触不良が発生し、例えばブレーキランプが点燈しないとか、ウィン
カーが点滅しないなどの重大な不具合が発生してしまいます。
完成した車を検査してこのような不具合が発見された場合、膨大なコネク
ターのどこで接触不良があるのかを調べるのは大変な労力が必要となります。
また、当初はいいのですが、徐々にゆるんでしまってお客様のところで不具
合を起こすこともあります。
この「コネクターがしっかり結合されている」良品状態をどのような工程で
実現すればよいのでしょうか。
一般のコネクターは、正規の結合位置まで差し込まれたら、ロックが掛かり
「カチッ」という音がするように設計されています。従って作業手順として
「カチッ」と音がするまで差し込むことが良品条件となっているのです。
「音がする」という明確な条件を示すことで個人スキルに頼るあいまいさを
取り除いているのです。
自工程完結では、良品条件、良品状態を作業の手順の中できっちり表し、
作業できることが重要で、場合によってはそのために、その部品の設計を
変更することまで行われます。
例えば、コネクタの中には、「カチッ」と音がせず、しかもロック状態が
目で見ただけでは判定できないものも存在します。このようなコネクタは
設計変更を行って、別のコネクタに変更するよう要求します。
重要な事は、これらの活動は生産が始まってからでは遅く、小ロット多品種
生産では、生産が始まる前の工程設計、QC工程図作成、製造準備段階で
活動を終えていなければなりません。
3.自工程完結工程構築の手順
①目的の明確化・・自工程の良い仕事の結果を後工程(お客様)に渡すこと
②目標の明確化・・「いつまでに」「どの(品質)レベル」を達成させるか
③手順の明確化・・どのような作業方法が一番ミスが少ない方法か
④判断基準、良品基準の明確化・・カチッと音がすること(コネクタの例)
⑤必要なものの明確化・・作業スキル、工具、治具、作業手順書など
⑥仕事の実施・・決められた通り作業し、結果に問題のないこと
⑦振り返り・・間違いやすい点、やりにくい点、不明確な点のリストアップ
⑧改良とフィードバック・・改善点を作業指示書等にフィードバックする
⑨設計変更依頼・・必要ならば設計にさかのぼって対策を講ずる
4.まとめ
最後に、自工程完結の4つの重要ポイント!を示します。
1.自工程完結の目的は、付加価値を生まない検査をなくすこと。
「検査レス」を目指す。そして基本は「後工程はお客様」であること
2.そのため、生産ラインのそれぞれの「工程」で、要求品質や要求事項を
満たすためのしくみづくりを行う
3.良品条件、良品状態を作業の手順の中で表し、場合によっては、設計変更
を伴うこともある
4.重要な事は、これらの活動は生産が始まってからでは遅いということ
特に小ロット多品種生産では重要な考え方
工程設計、QC工程図作成、製造準備段階における予防活動を指す
自工程完結は、トラブルを未然に防ぐ、未然予防の品質管理の基本的な考え方です。