熟練技能を若手社員に伝えるには?デジタルツールの導入による業務の効率化でノウハウが失われる?

IT化、デジタル化の流れによって、業務の効率化は達成できるかもしれま
せんが、その反面、社内に蓄積されてきたノウハウの断絶が起きています。

社内の業務プロセスの各所において貴重な業務ノウハウを持っていたのは
ベテラン社員です。そのようなノウハウはベテランが経験・知識などの
「暗黙知」として保持していることが多く、ベテランが退職し、デジタル
ツールが社員に置き換わると、ベテランの退職と共に貴重なノウハウが
失われてしまいます。

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そこで、ベテランが「暗黙知」として保持しているノウハウを、可能な限り
形式知」として抽出し、それを若手社員に伝承するとともに、形式知化
が難しい、「カン・コツ」の部分を如何に伝承していったら良いかを考えて
みます。

1.熟練技術の伝承方法
(1)メンター制度の導入
メンター制度とは、豊富な知識と職業経験を有した社内の先輩社員(メン
ター)が、後輩社員(メンティ) に対して行う個別支援活動です。
メンターが若手社員に対して実技指導を行い、共に作業を行いながら技術
を伝えることで熟練技術を効果的に伝承することができます。

またキャリア形成上の課題解決を援助して個人の成長を支えるとともに、
職場内 での悩みや問題解決をサポートする役割を果たします。
メンター制度の導入には、以下のような効果が期待されます。
 ・人間関係の再構築
 ・組織風土の理解・共有の促進と新たな風土の醸成
 ・社員が持つ経験、知識の伝承
 ・社員のキャリア形成支援のため
 ・個人が抱える職場での問題解決の支援

メンター制度とよく比較されるものとして「OJT制度」があります。
OJT (On-the-Job Training) とは、実際の仕事の現場で、新しい社員や
従業員に対して、上司や先輩が直接指導・教育を行うことを指します。
一方、メンター制度とは、経験豊富な社員や専門家が、若手社員に対して
一定期間、個別にアドバイスや指導を行う制度を指します。

OJTは、主に具体的な業務に関する技能や知識を教育するために行われます。
新しい社員が直接現場で働きながら、実践的なスキルを身につけることが
できます。一方、メンター制度は、より広い視野でのキャリアアップや
成長を促すために行われます。経験豊富なメンターが、若手社員に対して
自分の経験や知識を共有することで、将来的な成長やキャリアアップを
促進することができます。

OJTは、基本的には直接的な指導や教育が中心であり、現場でのスキル習得
を目的としています。一方、メンター制度は、より戦略的な成長を促進する
ことを目的としています。メンター制度は、個人の成長を促進するだけで
なく、組織全体の成長や価値向上にも貢献することができます。

ただし、OJTとメンター制度は必ずしも相反するものではありません。実際
には、OJTにおいてもメンター的な役割を果たす上司や先輩が存在すること
もあります。また、メンター制度においても、具体的な業務に関する技能や
知識を教育することがあるため、両者を組み合わせて実施することもできます。

(2)ビデオマニュアルの作成
熟練技術を伝承する際には、ビデオマニュアルの作成も有効な手段となり
ます。ビデオマニュアルとは、技術の手順や注意点などを動画でまとめた
もので、若手社員が自分のペースで繰り返し学習することができます。
また、ビデオマニュアルは、作業の標準化や品質管理にも役立つため、
製造業において広く活用されています。

(3)オンライン研修の活用
製造業における熟練技術の伝承には、オンライン研修を活用することも
可能です。オンライン研修は、場所や時間を問わず、若手社員が学ぶこと
ができるため、効率的な研修方法となります。また、オンライン研修は
研修プログラムの統一性を確保することができるため、技術の伝承に
おいて、標準化された内容を提供することができます。

(4)チーム内での知識共有
チーム内での知識共有は、製造業における熟練技術の伝承においても重要な
役割を果たします。チーム内での定期的なミーティングやディスカッション
を通じて、技術やノウハウを共有することで、若手社員がより多くの知識を
習得することができます。また、チーム内での知識共有は、協力関係を築く
ことにもつながります。

(5)熟練技術の書き起こし
熟練技術を伝承する際には、技術の書き起こしも有効な手段となります。
熟練した技術者が、手順や注意点などを詳細に書き起こし、文書化すること
で、若手社員が自分のペースで学習することができます。また、文書化
された技術は、研修資料としても活用できます。


2.勘やコツを要する技能を継承する方法
勘やコツを要する技能を伝承するのは、文書化やトレーニングといった方法
だけでは難しい場合があります。しかし、以下のような方法を用いることで
若手社員にも熟練技術を伝えることができます。

(1)マスター(熟練技能者)からのデモンストレーション
マスターが実際に作業を行いながら、その技術の勘やコツを伝えるデモン
ストレーションを行うことができます。このようなデモンストレーションは
見ることで理解することができるため、効果的な方法です。また、マスター
が作業を行いながら、若手社員がその横で見守ることで、実際の現場での
作業に近い環境を作ることができます。

(2)ジョブシャドウイング
ジョブシャドウイングとは、熟練技術者が作業を行う様子を、若手社員が
その横で見学することです。この方法では、マスターが実際の作業に集中
することができるため、作業の質も保たれます。また、若手社員が現場で
の作業に慣れることで、熟練技術をより効果的に習得することができます。

(3)実践的な研修プログラム
勘やコツを要する技能を継承するためには、実践的な研修プログラムが必要
です。このようなプログラムでは、マスターが若手社員に直接指導を行い
ながら、実際の作業を行うことができます。また、実際の現場での作業に
近い環境で、若手社員が自らの手で作業を行うことができるため、熟練技術
をより効果的に習得することができます。
ただし、熟練技術者が伝える技能には、言葉に出しにくい部分があるかも
しれません。その場合には、マスターと若手社員が密接にコミュニケー
ションをとることが重要です。

3.熟練技術の伝承を行う上でのポイント
熟練技術は、実践的な経験が重要なため、実際の現場での指導や研修が欠か
せません。伝承方法を選択する際には、若手社員のレベルや技術の内容に
応じて適切な方法を選ぶことが重要です。
また、継続的な取り組みが必要であり、技術の継承が途切れないように定期
的に伝承の効果を確認し、改善策を検討することも重要です。

以下に、熟練技術の伝承を行う上でのポイントを挙げてみます。
(1)目標を共有する
若手社員に、何を目指して技能を習得してもらいたいのかを共有することが
重要です。目標が共有されている場合、若手社員が技能習得に向けて取り組む
姿勢が変わります。また、目標が共有されることで、マスターも若手社員を
より効果的に指導することができます。

(2)フィードバックを行う
若手社員が作業を行った後に、マスターからフィードバックを受けることが
大切です。フィードバックを通じて、若手社員が自分の作業に対する正確な
評価を得ることができます。また、マスターがフィードバックを通じて若手
社員に改善点を指摘することで、より効果的な学習ができます。

(3)継続的な学習を促す
若手社員が一定の技能を習得した後に、学習がストップしてしまうことが
あります。これを防ぐためには、継続的な学習を促すことが必要です。
例えば、定期的に技能チェックを行うことで、若手社員が自分の技能習得
状況を把握することができます。また、若手社員に、自分のスキルアップ
のために、どのような勉強が必要かを示すことも大切です。

(4)チームでの学習
若手社員が、同年代や先輩社員と一緒に学習することも大切です。同年代の
社員同士で学習を行うことで、切磋琢磨し、自分が技能を習得する上での
課題や疑問点を共有することができます。また、先輩社員からのアドバイス
や指導を受けることで、より効果的な学習ができます。

以上のような方法を組み合わせ、熟練技術を若手社員に伝承することが重要
です。

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 合同会社高崎ものづくり技術研究所代表の濱田です。
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