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潜在不良と顕在不良の違いとは?なぜ潜在不良は流出するのか?その流出防止策は?90%の人が知らない信頼性設計のお話

顕在不良と潜在不良の違いは何でしょうか?
顕在不良と潜在不良は、品質管理や検査プロセスにおける異なる側面を表します。

1.顕在不良と潜在不良
①顕在不良(明らかな不良)は、製品の検査や品質管理のプロセスで容易に検出される
不良です。これらの不良は、外観上の欠陥や機能の不具合として明確に現れ、通常、
製造工程中や最終製品の検査時に発見されます。例えば、割れた部品、欠けた塗装、
動作しない回路などが顕在不良の例です。顕在不良は、製品が市場に流通する前に
品質管理のプロセスで除去されることが一般的です。

②一方、潜在不良(潜在的な不良)は、製品に潜んでいる不具合であり、検査や品質管理
のプロセスでは容易に検出されません。これらの不良は、製品が市場に出荷されて実際
に使用される過程で現れる可能性があります。潜在不良は、時間の経過や特定の環境
条件、負荷の変動など、さまざまな要因によって引き起こされることがあります。

③潜在不良が生じる理由はいくつかあります。製造プロセス中の微小な欠陥や材料の不均一
性、設計上の障害、製造時のヒューマンエラー、環境条件の変化などが原因となること
があります。これらの要因によって、製品の品質や信頼性に悪影響が及ぶ可能性があり
ます。

④潜在不良が市場に流出する理由は、検査や品質管理のプロセスが完璧ではないためです。
製品の検査は限られたサンプルに基づいて行われる場合があり、完全な検査を行うこと
は難しいです。また、潜在不良は通常、使用中の時間や特定の環境条件など、製品が市場
に出てからの一定の条件が必要な場合にのみ発現するため、初期の検査では検出されない
ことがあります。

さらに、製品の品質管理は、製造業者やサプライヤー、販売業者の努力に依存しています。
製造業者が品質管理を怠ったり、サプライヤーが不良品を供給したり、販売業者が品質
チェックを怠ったりすると、潜在不良が市場に流出する可能性が高まります。

潜在不良のリスクを最小限に抑えるためには、品質管理のプロセスを強化し、製品の信頼
性を追跡するための監視やテストを実施する必要があります。また、顧客からのフィード
バックや製品の改良を通じて、潜在不良を特定し改善する努力も重要です。
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2.製品の要素別潜在不良の要因
潜在的な不良の原因について、以下の項目について説明します。
① 半導体:
半導体の不良は、さまざまな要因によって引き起こされる可能性があります。一般的な
原因としては、製造プロセス中の材料の不純物や欠陥、製造中の誤った操作、環境条件
の変動などが挙げられます。これらの要因が半導体の性能や信頼性に影響を与える可能性
があります。

② 金属や非金属の構造物:
金属や非金属の構造物における不良の原因は、設計や製造プロセスに関連しています。
設計上の不備や誤った材料の選択、製造中の加工エラー、不適切な組み立てなどが原因
となることがあります。これらの要因が構造物の強度や耐久性に悪影響を及ぼす可能性
があります。

③ メッキや塗装などの表面処理:
表面処理の不良は、メッキや塗装などのプロセスにおいて問題が発生した場合に生じます。
均一なコーティングの欠如、剥離、クラック、不適切な表面処理材料の使用などが原因です。
これらの不良は、外部からの物理的な影響や腐食などの要因により、部品や製品の劣化や
故障を引き起こす可能性があります。

④ 焼き入れや窒化処理:
焼き入れや窒化処理は、金属部品の強度や耐摩耗性を向上させるために行われる熱処理
プロセスです。不適切な温度、時間、冷却速度などの条件により、焼き入れや窒化処理が
不良となる場合があります。これにより、部品の硬さや応力特性が変化し、割れや変形
などの問題が生じる可能性があります。

⑤ 接合部(溶接、接着、締結部品によるもの):
接合部の不良は、溶接、接着、締結部品などの接合プロセスにおいて発生する可能性が
あります。不適切な接合材料の使用、不十分な接合強度、接合部の瑕疵などが原因となり
ます。これらの不良が存在する場合、接合部が剥離、破損、変形する可能性があります。

⑥ 電気回路部品:
電気回路部品の不良は、設計上の欠陥、製造プロセスの問題、材料の劣化などによって
引き起こされることがあります。例えば、不適切な配線、接触不良、断線、材料の老化
などが原因となります。これらの不良が発生すると、回路の信頼性や機能に問題が生じる
可能性があります。

⑦ その他:
その他の潜在的な不良の原因としては、設計上の欠陥、製造プロセスの誤り、品質管理の
不備、環境条件の変化、運用中の誤った使用などが挙げられます。これらの要因は、製品
の性能、信頼性、耐久性に影響を及ぼす可能性があります。

3.ソフトウエアの潜在不良の要因
ソフトウェアにおける潜在的な不良の要因は、物理的な製造プロセスではなく、開発プロ
セスやプログラミングに関連しています。以下にいくつかの一般的な要因を挙げます。
①設計上の不備
ソフトウェアの設計において、機能や要件の不正確な定義、不十分な機能検証、複雑さや
相互依存関係の問題などが存在する場合、潜在的な不良が生じる可能性があります。

②プログラミングエラー
ソフトウェア開発中にプログラミングエラーが発生することがあります。例えば、構文
エラー、ロジックエラー、データ処理の誤りなどが挙げられます。これらのエラーがソフト
ウェアに潜んでいると、実行時に予期しない結果や不具合が生じる可能性があります。

③不適切なテスト
ソフトウェアのテストプロセスが不適切な場合、潜在的な不良を見逃す可能性があります。
テストケースの不足、テストの範囲の制限、環境の違いなどが原因です。適切なテストカバ
レッジと網羅的なテスト戦略を持つことが重要です。

④外部依存関係の問題
ソフトウェアは他のシステムやライブラリ、ツールに依存しています。そのため、外部
依存関係の変更や不具合がソフトウェアに影響を与える可能性があります。互換性の問題
やアップデートの不備により、潜在的な不良が生じることがあります。

⑤パフォーマンスとスケーラビリティの問題
ソフトウェアが要求される負荷やデータ量に対して適切にスケーリングされていない場合
パフォーマンスの低下やクラッシュなどの不良が生じる可能性があります。

⑥セキュリティの脆弱性
ソフトウェアにはセキュリティ上の脆弱性が存在することがあります。認証や暗号化の不備
不正アクセスやデータ漏洩のリスクなどが潜在的な不良の要因となります。

これらの要因により、ソフトウェアには潜在的な不良が生じる可能性があります。ソフト
ウェア開発においては、品質管理、テスト、コードレビュー、セキュリティ評価などの
プロセスを適切に実施することが重要です。また、エラーハンドリングやログ記録などの
機能を組み込むことで、潜在的な不良を検知し、修正する手段を確保することも重要です。

4.潜在不良流出防止のための信頼性設計ツール
ハードウェアとソフトウェアの潜在的な不良を防止し、設計時の信頼性を確保するため
には、以下の設計の考え方、手段、ツールを利用することが有効です。
①ドキュメント化と要件の明確化
設計プロセスでは、詳細なドキュメントを作成し、要件を明確に定義することが重要です。
正確な要件定義は、設計上の不備や誤解を防ぎ、信頼性の高い製品を開発する基盤となり
ます。

②品質検証手法の適用
設計の段階で品質検証手法を適用することで、潜在的な不良を特定し修正できます。例えば
FMEA(Failure Mode and Effects Analysis)やFTA(Fault Tree Analysis)などの手法
を使用して、潜在的なリスクや障害の要因を特定し、対策を講じることができます。
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③プロトタイピングとシミュレーション
ハードウェアの場合、プロトタイピングやシミュレーションを活用して設計の妥当性を評価
することが重要です。物理的なプロトタイプや回路シミュレーションツールを使用して、
動作や信頼性に関するテストを行い、問題を早期に発見・修正することができます。

④モジュール化とモジュール間のインターフェース設計
ソフトウェアの場合、モジュール化とモジュール間のインターフェース設計に注意を払う
ことが重要です。モジュール化により、個々の機能やコンポーネントを独立して開発・
テストできます。また、インターフェースの明確な定義と適切なデータのやり取りにより
予期せぬバグや不具合のリスクを減らすことができます。

⑤デザインレビューとコードレビュー
デザインやコードのレビューを定期的に行うことで、設計上の問題やエラーを検出し修正
できます。他のエンジニアや専門家による評価やフィードバックを受けることで、品質と
信頼性を高めることができます。

⑥自動化ツールの利用
品質管理やテストにおいては、自動化ツールの利用が有効です。自動化テストツールや静的
解析ツールを使用することで、コードや設計の問題を効率的に検出し、修正することができ
ます。

⑦品質管理システムの導入
品質管理プロセスを統一的に管理するために、品質管理システムを導入することが重要です。
品質監査、トレーサビリティ、問題管理、変更管理などの機能を統合したシステムにより、
設計時の信頼性を確保し、品質改善を推進することができます。

以上の設計の考え方、手段、ツールを組み合わせることで、ハードウェアとソフトウェア
の潜在的な不良を最小限に抑え、設計時の信頼性を向上させることができます。

5.顧客要求事項、過去トラブル情報のナレッジ化
過去事例や顧客要求事項のナレッジ化は、信頼性設計や品質管理において非常に有効な手段
です。以下にその理由を説明します。
①問題の予防と回避
過去の事例や顧客要求事項を分析し、類似の問題や要求に対する対策を見つけることができ
ます。これにより、同様の問題や要求が再発しないように予防措置を講じることができます。
また、顧客の要求事項に対応するために設計や品質管理のプロセスを改善することも可能
です。
②リスク管理と品質向上
過去の事例から得られる情報は、特定のリスク要素や品質の問題を特定し、それらに対する
対策を講ずるために利用できます。問題の特定や改善策の選択には経験と洞察が必要ですが
過去の事例から得られるナレッジはそのプロセスを支援します。

③ベストプラクティスの共有と標準化
過去の成功事例や良好な顧客フィードバックをもとに、ベストプラクティスを共有し、標準
化することができます。これにより、信頼性設計や品質管理のプロセスを統一し、高い品質
と信頼性を実現するための基準を確立することができます。

④知識の伝承と教育
過去の事例や顧客要求事項をナレッジ化し、組織内で共有することで、知識の伝承や教育が
促進されます。これにより、組織全体での信頼性設計や品質管理に関する知識とノウハウが
蓄積され、新たなプロジェクトや製品開発に生かされることができます。

過去の事例や顧客要求事項のナレッジ化は、組織内の学習と成長を促進し、信頼性設計と
品質管理のプロセスを改善するための重要な手段です。経験に基づく情報や洞察は、AIや
自動化ツールと組み合わせて使用することで、より効果的な信頼性設計を実現するのに
役立ちます。

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 合同会社高崎ものづくり技術研究所代表の濱田です。
 日本が誇るものづくり技術にもっと磨きを掛けよう!!

 設計、製造、品質管理、海外工場管理などの実務経験45年
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