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データ・デジタル技術活用の時代だからこそ「無形資産の形成」が必須!(2020年度、2022年度中小企業白書)

製造業の社員のみなさんは、日常何をよりどころに仕事をしているか
考えたことがありますか?毎朝8時に出社して、夕方5時に帰宅すると
いう生活の中で「仕事」とは、どの様に位置づけられているでしょうか?
今回は

データ・デジタル技術活用の時代にこそ無形資産の形成が必須

というテーマで考えてみます。

1.低い中小企業の生産性
日本の企業では、人材不足が進む中、ITやロボットなどデジタル技術
の導入が急速な進展が見られるようになってきました。
将来的に人口減少が見込まれる中、我が国経済の更なる成長のために
は、企業全体の99.7%を占める中小企業の労働生産性を高めることが
重要となっています。

しかし、下のグラフのように、企業規模別に従業員一人当たり付加価値
額(労働生産性)の推移を見ると、中小企業の労働生産性は大企業に
比較すると、大企業に比べると半分以下であり、また大きな落ち込み
はないものの、長らく横ばい傾向が続いていることが分かります。

 労働生産性=生産額÷従業員数

つまり、従業員一人当たりの生産額は20年間全く増加しておらず
また、中小企業は大企業の半分以下の生産額、ということが言えます。

b1_1_72.png

また下のグラフは、企業規模別に上位10%、中央値、下位10%の労働
生産性の水準を示しています。これを見ると、いずれの区分においても
企業規模が大きくなるにつれて、労働生産性が高くなっています。

しかし、中小企業の上位10%の水準は大企業の中央値を上回っており
中小企業の中にも高い労働生産性の企業が一定程度存在していること
が分かります。反対に、大企業の下位10%の水準は中小企業の中央値
を下回っており、企業規模は大きいが労働生産性の低い企業も存在して
います。

b1_1_73.png


経済・社会環境の変化に対応しつつ、企業としての成長や事業の拡大
を継続的に図っていくためには、収益拡大から賃金引上げへの好循環を
継続させることが必要であり、起点となる企業が生み出す付加価値自体
を増大させていくことが重要であると考えられます。

2.付加価値とは一体何か?
付加価値とは、製品やサービスに対し、企業や個人の活動によって独自
に付け加えられた価値を指す言葉です。モノやサービスに溢れた現代で
競合と差別化し業績を伸ばすためには、付加価値を付けることが重要と
なります。製造業では、付加価値は以下の計算式で表されます。

 付加価値=売上高ー(外部購入費+外注費)

つまり工場では、材料を購入して、その材料を加工して付加価値をつけ
た製品(部品)として完成させて顧客に納入します。
付加価値生産性とは、従業員一時間当たりの付加価値額のことを言います。

 付加価値生産性=付加価値額÷労働時間

人手不足や受注減の中で、中小製造業は、生産性向上の本格検討なくして
生き残っていくことが難しい状況にあるといえるでしょう。
受注生産工場のTOC&IOT活用による工場改革!1124東京.jpg
3.付加価値を生み出すには?
製造業において、付加価値を生み出し、利益を最大化するためには
いくつかの重要なポイントがあります。以下に具体的な方法と戦略を
紹介します。

中小企業が付加価値を向上しながら成長するための方法としては、労働
力の確保や有形資産投資の増加なども考えられますが、ブランドや人材
の質といった「無形資産」への投資も付加価値向上を促す方法とされ
ています。

日本の中小製造業において、付加価値は確かに設備、機械、IT投資に
よってもたらされることが多いですが、人に備わった経験や熟練技能
などの無形の資産も非常に重要な役割を果たしています。

無形資産への投資は、新しいアイデアやイノベーションを生み出し、
企業の競争力を高めることにつながります。

特に中小製造業では、限られた資源を最大限に活用することが求めら
れるため、従業員のスキルや知識、経験といった無形資産が企業価値
を高める上で非常に重要です。これらは、製品の品質向上、生産プロ
セスの効率化、顧客ニーズへの迅速な対応など、直接的な付加価値に
貢献します。

また、無形資産への投資は、有形資産への投資と比較して、見えにくい
ものの、長期的な企業成長や持続可能性に対して重要な影響を与える
とされています。

そのため、経験や熟練技能といった無形資産の価値を認識し、それら
を育成し活用することは、中小製造業にとって正しいアプローチで
あると言えます。

4.ブランド価値について
中小製造業にとって、ブランドとはどのようなものを指すでしょうか?
例えば地域ブランドとして、燕三条の刃物や洋食器、鯖江市の眼鏡、
倉敷のデニムなど産業集積地が上げられますが、これ以外に企業単独
でのブランド確立は可能でしょうか?可能とした場合、どのような
取り組みが必要なのかを考えてみます。

(1)ブランドとは何か
ブランドとは製品(加工品や組立品)にプラスされた「意味」や
「約束」が付加されたもので、顧客(取引先)に広く認知されれ
理解されることと定義されます。

 ブランド=製品+「意味・約束」

例えば吉野家(ブランド)=牛丼(製品)+安い・早い・うまい
となり、誰もが吉野家の牛丼が安くて早くてうまいということを
知っています。

では受注型製造業おけるブランドとは何でしょうか?
 ・納期が確実で不良品が混入していない
 ・高精度の部品を職人技で作ることができる

などが、取引先企業に認知され、信頼関係を築いていること
これが特定企業だけでなく、広く認知されるようになれば、ブラ
ンドが確立したことになります。

このためには、お客様に広く知ってもらう活動が必要となり、
そのためにロゴを作成したり、広告を行ったりします。

但し、確実なQCDを確保することは、受注型製造業にとっては
当たり前のことであり、ブランドとしては強力なものとは言え
せん。
もっと独自の「意味・約束」を確立する必要があります。

(2)ブランドを確立するためには
企業や製品のブランドを確立するためには、顧客側からその製品の
意味や約束を知ってもらい、信頼を確立する必要があります。
またこれには、一定の期間が掛かることは理解できると思います。

①独自性の追求
自社の強みや特色を明確にし、それを製品やサービスに反映させる
ことで、他社との差別化を図ります。

②顧客ニーズの理解
マーケットリサーチを行い、顧客のニーズや市場の動向を把握し、
それに応える製品やサービスを開発します。

③ブランドストーリーの創造
企業の歴史や哲学、ビジョンを伝えるブランドストーリーを作り、
顧客に共感を呼び起こします。

④品質の維持と向上
一貫した品質管理と優れた顧客サービスを提供し、ブランドの信頼性
高めます。

⑤マーケティング戦略の展開
効果的な広告やプロモーションを通じて、ブランドの認知度を高め、
顧客との関係を構築します。

⑥デザイン経営の採用
商品やサービスのデザインにこだわり、使いやすさや美しさを追求
ことで、ブランド価値を高めます。

⑦デジタルマーケティングの活用
オンラインプレゼンスを強化し、SNSやウェブサイトを通じて顧客と
直接コミュニケーションを取ります。

⑧イノベーションの推進
新しい技術やアイデアを取り入れ、市場での競争力を維持し、成長を
遂げるためのイノベーションを続けます。

これらの取り組みを通じて、中小製造業でも独自のブランドを確立し、
市場での存在感を高めることが可能です。成功事例や具体的な戦略に
ついては、さまざまな資料が参考になります。


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 合同会社高崎ものづくり技術研究所代表の濱田です。
 日本が誇るものづくり技術にもっと磨きを掛けよう!!

 設計、製造、品質管理、海外工場管理などの実務経験45年
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