企業組織において、既知の技術に関するトラブル・事故が繰り返し発生
する背景には、現場、管理部門、トップを含めたマネジメントの弱さが
あり、これを自ら気づいて直していくことが大切です。
このための一つの有効な手法としてRCA(Root Cause Analysis:根本
原因分析)があります。
RCAは技術的(物理的)なメカニズムの解明だけでなく、根本原因
(組織原因)を特定し、その是正よって、類似の原因によるトラブル・
事故が二度と生じないようにするために有効であり、様々な分野で活用
されています。
1. 誕生背景
RCAは、1960年代にアメリカ航空宇宙局(NASA)でアポロ計画の事故
原因究明のために開発された手法です。
複雑なシステムにおける事故やトラブルの再発防止を目的として、根本
原因を特定するための体系的な分析手法として確立されました。その後
航空、医療、製造、ITなど、様々な分野で広く活用されています。
2. 目的
RCAを行う目的として、次の2つが上げられます。
①トラブル・事故の技術的なメカニズムの解明
最近の様々な企業の実態を見ると、多くのトラブルや事故が、技術的に
①トラブル・事故の技術的なメカニズムの解明
②技術的に既知な内容のトラブル・事故を繰り返し起こすことを防ぐ
活動の弱さ解明
最近の様々な企業の実態を見ると、多くのトラブルや事故が、技術的に
既知な原因で起こっており、②に焦点を当て、なぜ未然防止できなかっ
たのかを分析することが重要になっています。
このほかにも、自動車メーカーの「データ改ざん」などの企業不正は
頻繁に発生していますが、この問題はまた別の機会に分析を試みたい
と考えています。
しかし、解析の対象が組織のマネジメントであるためその実施は必ずし
も容易ではありません。
多くの企業組織で、目的①だけに留まり、RCAが必ずしも十分に理解さ
れ、活用されているとは言えないのが現状です。
3.四ステップによるRCA手順
そこで、人の標準からの逸脱とそれを引き起こした組織マネジメントの
悪さについて深掘りするために、4ステップによるRCA手順を紹介します。
ステップ1
トラブル・事故に関わった人の行動に関する情報を収集・整理する
トラブル・事故の発生に関係ある人の行動と、その結果引き起こされた
物理事象を区別して抜き出す。更に、人の行動と物理的事象の因果関係
が分かるよう矢印線で結ぶ
ステップ1で注意すべき点は、あくまでも人の人の行動を中心とした記述
に徹することです。人を中心にした記述を行うことで、他の事象に埋もれ
がちな人の行動を明らかにすることができます。
上記のフローチャートでは、人の行動に着目した情報の収集・整理した
例を示しています。
ステップ2
標準の視点から防止すべき人の不適切な行動を特定する
ステップ1で整理した人の行動を「標準」の視点で見ていき、防止すべ
き不適切な行動を特定します。上記フローチャートで不適切な行動かどう
かを判定します。
ステップ3
特定した人の不適切な行動についてその直接原因を判定する
ステップ2で特定した不適切な行動が次のどのタイプか判定します。
①標準作業通り実施したが不具合が発生した(標準の不備・欠陥)
②標準作業通り行わなかったため不具合が発生した
(故意/スキル・知識不足/守れない/ポカ)
③標準作業は定められておらず、経験・勘による作業を行った
ステップ4
ステップ3で判定した3つの不適切な行動について、根本原因候補を
特定する(一覧表の中から該当と思われるもの)
「直接原因」とは、どのような人の行動が不具合に繋がったのかを示
しており、そして、その行動は、どのような根拠に基づいたものなの
かを管理の問題、現場の問題と捉え「根本原因」としています。
従って、不適切な人の行動に気づき、不具合の発生を未然に防ぐと同時
に、その行動を引き起こしている根本原因を突き止め、取り除くことが
管理者の重要な役割であると考えられます。
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