品質機能展開(QFD:Quality Function Deployment)とは、顧客の要求
品質を製品企画に変換し、さらには開発仕様に落とすための検討手法のこと。
QFD(Quality Function Deployment:品質機能展開)は、顧客の要求を
具体的な設計・製造条件に落とし込み、顧客満足度の高い製品開発を支援
する手法です。
ここでは、QFDの品質表作成から製品設計・製造工程設計に至る手順に
ついて解説します。
1.顧客の要望の把握
まず、顧客の抽象的な要望を収集し、それらを明確な要求品質に変換します。
この段階では、顧客の声を直接聞くことが重要です。
実際には、市場調査、アンケート、インタビューなどを実施し、顧客の製品
に対する要望を収集します。
収集した要望は、具体的な行動や発言に基づいて客観的に記述することが
重要です。
例:「使いやすい」という要望よりも、「操作マニュアルを読まなくてもすぐ
に使える」という具体的な行動に基づいた記述の方が、設計・製造工程への
展開がしやすくなります。
2.要求品質の展開
収集した顧客の要望を要求品質展開表に整理し、要求品質を分類します。
これにより、顧客の要望が明確化されます。
①顧客要求を整理し顧客が求める品質項目を抽出します。
②抽出した品質項目を要求品質展開表に列挙します。
③それぞれの要求品質項目に対して、重要度を付与します。
重要度付与方法は、アンケートやグループディスカッションなど、状況に
応じて適切な方法を選択します。
以下にスマートフォンの要求品質展開表の例を示します。
<要求品質展開表の活用方法>
要求品質展開表は、製品設計・製造工程設計の様々な場面で活用することができ
ます。以下に、具体的な活用例をいくつか紹介します。
①製品コンセプトの策定: 要求品質表を分析することで、顧客が求める製品の核
となるコンセプトを策定することができます。
②設計要件の定義: 要求品質表に基づいて、具体的な設計要件を定義することが
できます。
③部品・材料の選定: 要求品質表を参考に、製品の品質を満たす部品や材料を
選定することができます。
④製造工程の設計: 要求品質表に基づいて、品質を安定的に生産できる製造工程
を設計することができます。
⑤品質管理: 要求品質表を基準に、製品の品質を管理することができます。
3.品質特性の特定
要求品質を満たすために必要な品質特性を特定し、それらを品質特性展開表
にまとめます。品質特性は、測定可能な技術的な要素です。
①要求品質項目を実現するために必要な技術的な特性を検討します。
②検討した品質特性を列挙します。
③それぞれの品質特性に対して、目標値と達成方法を設定します。
④要求品質展開表と品質特性を組み合わせ、相関関係を分析します。
相関関係の分析には、相関行列や散布図などのツールを用います。
⑤分析結果に基づき、重要度の高い要求品質項目とそれを実現する品質
特性に重点を置きます。
4.品質表の作成
要求品質と品質特性の関係を品質表(二元表)に可視化します。この品質
表は、顧客の要望と製品設計の間の橋渡しを担います。
<品質表の活用方法>
品質表は、要求品質項目と品質特性の相関関係を可視化することで、製品
設計・製造工程設計の様々な場面で活用することができます。
以下に、具体的な活用例をいくつか紹介します。
①設計重点度の判断: 相関関係の強さに基づいて、設計において重点的に
取り組むべき品質特性を判断することができます。
②設計要件の具体化: 要求品質項目と品質特性の相関関係を踏まえて、具体
的な設計要件を具体化することができます。
③部品・材料の選定: 品質特性を満たす部品や材料を選定することができます。
④製造工程の設計: 品質特性を安定的に実現できる製造工程を設計すること
ができます。
⑤品質管理: 品質特性を基準に、製品の品質を管理することができます。
5.企画品質から設計品質への展開
品質表を用いて、要求品質の重要度を品質特性の重要度に変換し、具体的な
開発仕様(設計品質)を設定します。
①相関関係分析の結果に基づき、製品の設計品質を設定します。
②設計品質は、具体的な数値や仕様として定めます。
③設計品質の設定においては、技術的な実現可能性とコストのバランスを
考慮する必要があります。
開発仕様(設計品質)を下表に示します。
6.部品および工程への展開
設計品質を構成部品に要求される品質に落とし込み、各部品を製造する工程
管理に至るまで、系統立てて展開していきます。
①設計品質を実現するために必要な製造条件を設定します。
②製造条件は、設備、工具、材料、作業手順など、製造に関わる全ての要素
を網羅する必要があります。
③製造条件の設定においては、品質の安定性と生産性のバランスを考慮する
必要があります。
製造条件表の例を下図に示します。
QC工程表を作成する際には、QFDで作成した要求品質表や品質表を参考に
すると、より効果的な工程設計を行うことができます。
例えば、要求品質表で「部品実装の精度を向上させる」という要求が挙げられ
ている場合は、品質表で「部品実装の位置ずれ」という品質特性が挙げられて
いる可能性があります。
この場合、QC工程表には「部品実装の位置ずれを検査する」という検査項目を
追加することで、要求品質を確実に満たすことができます。
このように、QFDを活用することで、顧客満足度の高い製品を効率的に製造
することができます。
これらの手順を通じて、顧客の要望を具体的な製品設計に落とし込み、品質
の高い製品を開発することが目的です。
QFDは、製品開発の初期段階で行われることが多く、顧客満足度の向上と
開発プロセスの効率化に寄与します。
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