2019年02月05日

検査はなぜ必要か?製造業の事例解説・改善の進め方

今、検査には何が求められているでしょうか?
検査とは、辞書を引くと、「基準に照らして、適・不適や、異状・不正の有無
などを調べること。ある基準をもとに、異状の有無、適不適などを調べること」
などとなっています。

また、JIS Z8101-2によると、「検査とは、品物またはサービスの一つ以上の
特性値に対して,測定,試験,検定,ゲージ合わせなどを行って,規定要求事項
と比較して,適合しているかどうかを判定する活動」と定義されています。




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最近、検査の不正の問題がクローズアップされています。

工場の製品は、検査して合格・不合格を調べたり、判定したりするだけでなく
大事なことは不合格品を絶対に出荷してはならないことです。
つまり、検査員の一番重要な仕事は、不良品を絶対に出荷しないこと、場合に
よっては、工程を止めること。そのような絶対の権限を持つのが検査部門の
役割です。

そのため、検査制度、検査員の資格、権限、検査員教育はどうあるべきかなど
をよく考える必要があります。

1.第三者検査制度
上記の考えを基に検査制度はどうあるべきかを整理してみます。
(1)出荷停止、工程停止基準
検査は選別工程として、製造工程の一つとして組み入れることは避けなければ
なりません。これでは、検査から付加価値は生まれません。
合否の基準を明確にして、不合格品は絶対出荷しないという強い権限を持たせ、
組織上も製造部から独立した組織とすべきです。

(2)検査員の資格
検査員は、検査員としての自覚を持ち、誇りをもって検査を行い正しい判断を
下すことが求められます。そのため、検査員は、資格者として権威あるものとし
尊重されなければなりません。従って、それだけ経験と知識を有する優秀な社員
を割り当てなければなりません。

(3)検査員教育
検査員は、社会人、また人として尊敬される人格を備えた人物であるべきで
検査員として認定されるまでには以下のような教育訓練プログラムを整備する
必要があります。
 ①知識教育・・検査規定、抜き取り検査表、JIS規格、関連法など
 ②実技訓練・・OJTの実施
 ③測定技術・・測定具を使った測定、限度見本を使った比較判定
 ④不良見本、クレーム品による定期的な教育
 ⑤検査員の心構え・・不具合品は絶対に外に出さないという強い意志と行動

2.小規模企業における検査制度
小規模製造業においては、上記のような検査制度を設け、検査員教育を実施する
ことが困難な場合も多いと考えられます。また、独立した検査員を置くことも
難しい場合もあると思います。

しかし、不良品や、規格を満足しない製品は絶対に工場から出さないという
全員の強い総意のもとに、実現可能な仕組みを整備しておくことが重要です。
 ①作業者一人一人が検査員としての役割を担う(トヨタの自工程完結の考え方)
 ②多能工は、必ず検査もできるように教育する
 ③問題を放置せず、全員で解決にあたる

企業の不祥事は、現場の実態を把握せずに問題を放置している企業体質、特に
管理層のマネジメント力欠如が指摘され、日本の製造業に共通した問題と考え
られます。

これは、大企業に限らず中小企業においても同様で、根深いものがあります。
熟練技能者の高いスキルのみに支えられてきた「日本品質」の限界と捉える
ことができます。

3.自工程完結型の生産ライン
もともとトヨタ生産方式で考えられた自工程完結とは、検査員を置かずに「ライン
・機械・冶具などのつくり込みにより、自分の工程でつくったモノは自分で品質
を保証するという考え方のことです。後工程はお客様という考えで後工程に不良・
不適合を流さないように、作業者自身が自分の行った作業に責任を持つと同時に
「自動化・ポカヨケ」など工程の改善を行うことを指します。

4.多品種少量生産の自工程完結型作業とは?
多品種少量生産の工程では、どうしても人による判断、作業が主体となります。
つまり一つ一つの意思決定が正しく行われることが必要になります。

人は誰しも、失敗しないように気をつけて仕事に取り組んでいるはずです。
ところがそれでも、ミスややりなおしの必要性はできてしまうものです。そして
それは、「やってはいけない」「起こしてはいけない」といった単なる「意気込み
や心がけ」だけではうまく行きません。重要なのは、もっと科学的に仕事を進める
ことが必要であり、「人間の意思決定工程における自工程完結」のしくみを採用
することです。

しかし、意思決定工程に対して、生産ラインで使われる作業手順書のようなもの
を作成することは非常に大変な作業と思われます。しかし、その意思決定の工程
を細分化し、「**する」「**する」という連続した工程(プロセス)と、
経験や会得した暗黙知のノウハウ部分とを分けて考え、連続したプロセスは徹底
して標準化を行い、ノウハウ部分は熟練者から教えてもらうようにします。

例えば、機械加工を例にとると
 ①図面、指示書(インプット・合否基準と判定)
 ②必要な刃物準備、機械のセット方法などの検討(判断・合否基準と判定)
 ③プログラムの入力、加工(処理・合否基準と判定)
 ④熟練作業(デジタル化した判断基準+熟練者の最終判断)
 ⑤製品の測定(合否基準と判定)
 ⑥次の工程へ渡す(アウトプット・合否基準と判定)

というように、細分化された各作業プロセスにおいて、必ず良否判定基準を設けて
合格なら次のステップに移行するようにします。判定方法や判定基準を曖昧のまま
作業を行うと必ずミスが発生します。

このように多品種少量生産においては、人の作業に於ける自工程完結の作業プロセ
スを確立することが重要になります。

検査の目的と種類:製造業のクレーム対策事例

検査の目的は、不良品を絶対に社外に流出させないことです。
もう一つの目的として、工程の5Mの管理項目(人、機械、材料、手順、測定)
がそのルール通り、守られているかどうかを確認することです。

多品種少量生産の工場では、人が主体となって判断し、作業を行うため、ルール
に沿った正しい作業が行われていることを確認することがより重要となっています。



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モノの検査は現場の作業者や検査員が行います。
 ①自工程検査(自主検査:反復確認、指差し呼称など)
 ②第三者検査(ロット検査・全数検査)

しかし、工程の5Mの管理項目の検査は少し工夫が必要です。

1.職場(工程)巡回
管理監督者による職場巡回は、現場の様々な問題を発見、またルール順守を徹底
させるなど総合的な効果が期待できます。管理層は、デスクワークだけでなく、
現場を一日に一回は、巡回する習慣をつけるべきです。その場合、現場(機械や
人)の変化を見逃さない感性、気づきが重要となります。

2.報告書・データ、帳票の承認
提出文書、見積書、検査測定データなど、お客様など、外部に送付する前には
通常、管理層の承認が必要になります。しかし、往々にしてめくら印、めくら
サインを行う行為が横行しています。

やはり、管理する立場で、その数値の根拠、考え方、プロセスなど作成者に問い
正し、承認するという行為を徹底すべきです。メクラ印は絶対にやめるべきです。

隅から隅まで時間を掛けてみる必要はありません。担当した者に、考え方を聞く
だけでいいのです。そこで、つじつまが合わなかったり、答えられなかったり
した場合は、文書やデータの信頼性が低いということになります。

3.教育訓練と作業認定(適性の検査)
ルール通りの正しい作業を行うには、計画的な教育訓練(OJT)実施と結果を
評価し、作業認定を行うことです。新人に対する教育訓練に留まらず、例えば
6か月、1年間隔で再教育を実施し、手抜き自己判断による勝手な作業を防止
します。

以上説明した通り、多品種少量生産時代の検査は
 ①モノの不良は絶対に外に出さない
 ②作業の不良は「自工程検査」「現場巡回」「承認」によって正しいモノや
  情報を後工程へ渡すこと
 ③教育訓練により、作業認定(適性の検査)を行い正しい作業に就かせる
の、3点が特に重要となります。

目視検査の見逃し対策:周辺視検査法に着目した全数検査

多くの工場において流出防止を目的とした目視検査が行われています。
目視工程は決して付加価値を生むわけではありませが、不適合品の流出が人命に
関わるものや大きな損失が生じるものは全数検査が必要になってきます。

1.従来検査方法の問題点
しかしながら、全数目視検査での見落とし(見逃し)不良は各社の悩みの種と
なっています。人間の感覚と集中力には限界があり、個人差も大きいからです。

従来の外観検査は検査員の経験と感に頼った職種であり半ば聖域化されていました。
一般的な目視検査は、不良箇所の指摘であり、不良を検出するには「よく見る」
ことと「集中力」の継続でしたが、そのような作業はせいぜい二時間が限界です。

また、検査方法以前の問題として、照明・姿勢・器材の配置等の作業条件の問題
に気付かずに検査をしているため、見逃しが日常的に発生し、悩んでいるという
状況が非常に多いのが現状です。

2.周辺視目視検査法とは?
それを改善するにはどうしたらいいか、という点について、実例を交えて触れて
見たいと思います。

従来の検査では「良く見る」ことが指導されていましたが、実はベテラン検査員は
周辺視、瞬間視、衝動性眼球運動という視覚システムを活用していると言われて
います。これらの前提条件とさらに、光源の種類や強さを最適化することで検査
での見逃しが大幅に削減できます。

一般的な目視検査は「不良探し」が基本となっており、人間の視覚と集中力を使って
不適合品を探す行動です。実は、これこそが見逃しが無くならない大きな要因です。
なぜなら「集中力」が短時間しか持たないからです。
これは「中心視目視検査」と呼ばれ、抜き取り検査には適していますが全数検査に
適しません。

「集中力」「不良探し」は見逃しの大きな要因であることから、この考え方を捨て
「良品の確認」と「リズム」を基本とした「周辺視目視検査」に切り替えます。
それは人間の違和感を活用した、瞬間(無意識)に判断をする能力を検査に適用する
方法です。

周辺視.png

スポーツは全般的に中心視野は当然なことですが、周辺視野の活性化こそ様々な
運動能力UPにつながると言われています。
また、自動車の運転技能と同様の技能と考えると分かり易いと思います。
まだ運転が未熟の場合、視野が狭く違和感に自信がない為、周りをキョロキョロ
しながら(中心視)運転します。そして、短時間の運転で疲労感を感じます。

ところが熟練運転者の場合は視野が広く(周辺視)自然体で運転ができます。
これは、違和感に自信を持っているためであり、運転動作も自然に連動します。

3.周辺視目視検査のポイント
(1) 「違和感」による検査方法を体得する教育訓練法
 まず、良品見本をイメージとして定着させます。
そして、不良見本のサンプルを準備し良品との差を認識します。「色」「形」
「表面の傷」などの目視検査の対象となる不良見本と良品見本の差をよく観察
して記憶します。

周辺視目視検査を有効に使い不良を違和感としてすばやく察知できるようにする
ためには、「ここまでが良品」というイメージを覚える(記憶・刷り込みする)
必要があります。そのためには、良品の限度見本を作製し、初期の段階での教育
・訓練と定期的な目合わせが重要です。

教育訓練後、例えば100個の良品と数個の不良品を混ぜて実際に検査します。
この時、不良個所がないかどうか注視するのではなく、瞬間に違和感を感じ取る
という訓練をします。そして、この方法で不良品を瞬時に感じ取り、すべて検出
できれば合格です。
周辺視は、車の運転と同じように訓練が必要であり、また個人差も大きいため
適性をよく見極める必要があります。

(2) リズム・姿勢がもっとも重要
 見た瞬間にイメージとしての処理は完了します。そのため次々と新たなイメージを
取り込むことが必要です。自分の「違和感」に自信を持つことが大事になります。
そして継続的に瞬時に視点を移動させたり、ワークを動かすにはリズムが必要です。

目や手が固定されずにリズミカルに動けば,血液循環が良くなり,長時間の作業が
可能になります。背筋が伸びて,首の前傾が小さければ,首,肩,腰の負担が小さく
なります。(ベテランほど姿勢が良い)

(3) 照度は1000~1200Lux以下を目安に
中心視では明るくし過ぎる傾向が見られます。しかし長時間の作業では検出感度が
著しく減少します。照度は1000~1200Luxの照明で検査を行います。


以上、周辺視目視検査法について解説しました。
中心視目視検査は短時間での精度は高いが長時間では作業者の負担が大きく精度が
低下します。
周辺視目視検査はスピードが速くて作業者の負担が少ないため、全数検査では条件に
よっては有効な方法です。ただし作業者の熟練度による差が大きい欠点があるため、
定期的な訓練によって検査精度を一定水準に維持していく運用方法が課題となります。


(精密工学会 画像応用技術専門委員会
  感察工学研究会のサイトより:http://www.eng.kagawa-u.ac.jp/~ishii/kansatsu/

セミナー:ヒューマンエラー予防対策(IOT時代の最新IT技術活用)
 ①工場のヒューマンエラーメカニズム研究事例
 ②全数検査ミス防止対策
 ③ヒューマンエラーの要因分類と再発防止策
 ④IT技術活用ツールによるヒューマンエラー予防対策
 ⑤ロジカルシンキングとフレームワーク型なぜなぜ分析
 その他

検査とは? 製造業の品質管理用語(キーワード)事例解説

検査は、工場から不良を流出させない手段として良く用いる手法である。
しかし、一方で付加価値を生まない作業であると言われ、トヨタ式生産ライン
では、ポカヨケや自働化の徹底、また人を育てることによって、源流で不良品
を出さない生産を行い、検査工程は排除し、品質とコスト低減を両立させると
言われている。

ただ、本当に「検査」のメリット・デメリットについて、正しく理解されて
いるだろうか?
品質管理を正しく行くためには、用語や手法・技法の本質を正しく理解
した上で、使わなければならない。

第三者検査.jpg

ここで、トヨタ生産方式の成り立つ前提条件を整理してみよう。
ポカヨケ、自働化を徹底した生産ラインの構築は、平準化され、生産数量が
ある程度見込める工場に限定される。
製造業の大部分を占める多品種少量受注生産工場では、すべての工程、品種毎
にポカヨケ対策を実施するのは困難が伴う。

4M変動の激しい工程に置いて、一定の品質を確保するためには、検査工程を
置かざるを得ない場合が多い。
そこで、不良流出を抑え、顧客満足度を維持しながら、費用を最小限に抑える
ために「検査方式の設計」が重要な位置を占めることになる。

検査工程の設置は
 ・受け入れ検査
 ・工程内検査
 ・最終出荷検査

検査方式として
 ・全数検査
 ・抜き取り検査(AQL)
などを、品質状況を監視しながら、適宜採用していくことが求められる。

検査の役割は
 ・顧客側の立場で検査し、不良流出ゼロ、クレームゼロに抑えること
 ・工程ストップ、出荷停止権限を持つこと
 ・問題点を即、工程にフィードバックすること
である。

そのためには、検査のスキルを持った人材の育成も欠かせない。

検査の役割として、「工程ストップ」「出荷停止」権限を有効に行使する
ことが最大の役割と言える。

目的と効果を正しく理解し、何事にも限界があることも見極めながら行動
する姿勢が重要なのだ。


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