2020年03月18日

新幹線のぞみの台車亀裂はなぜ発生したのか?

2017年12月、JR西日本の東海道・山陽新幹線のぞみ34号で台車に亀裂等が発生
した重大インシデントは、車両の台車枠の「側ばり」に発生した亀裂が衝撃や
繰り返し応力により徐々に進展し、台車枠が変形したため、車内での異臭及び
車両の床下からの異音等の原因となったものです。




この重大インシデントは、事実関係を整理すると、様々な問題が潜んでいる
ことがわかります。
1.現場の作業管理の問題
2.新製品の製造立ち上げ上の問題
3.4M変更管理の問題
4.リスク評価の問題
5.設計FMEA/工程FMEAの問題

これらは、一般的な製造業では、よくありがちな問題と考えられます。

(出典)
◆「N700系新幹線車両台車枠の件」 川崎重工業株式会社 平成30年2月28日 
◆「鉄道重大インシデント調査報告書」 運輸安全委員会 平成31年3月28日

亀裂の説明.jpg



ここでは、亀裂発生原因について、台車を製造するメーカーにおける作業工程に
焦点を当てて分析を行います。

問題の車両の台車は700系からN700系に設計変更がなされた直後に作られたと
されるものです。
台車枠は厚さ8mmの鋼板をロの字型に折り曲げています。しかし、折り曲げの
精度が甘く、底面に膨らみが生じ、軸ばね座との間に大きな隙間が生じていま
した。これでは軸バネ座を側バリにスロット溶接を行う際に、すき間なくぴった
りと取り付けることができません。

そこで、現場作業者が側バリの下面の平面度を高めることを目的として、側バリ
下面をグラインダーで大きく削り、軸ばね座との隙間をなくしスロット溶接を
行いました。

グラインダー作業の結果、側バリの下面の板厚は設計上の厚さの条件である
「7mm以上」を下回り、最も薄い部分は4.7mmとなってしまいました。
疲労亀裂の急激な拡大に最も影響したと思われる製造上の問題は、このグライ
ンダー仕上げにより板厚が極端に薄くなったことによります。

また図1-10は、現場の作業者、管理者、事所係員(指示書作成担当)のやり
取りを示したものです。
やり取り.jpg

このやり取りを見ると、現場作業者は、側バリ下面と軸ばね座との隙間の修正方法
について問題に気づき、現場監督者に報告・相談していますが(②④)、現場監督者
は、口頭による情報の伝達、前例に基づいた思い込みによる作業指示(①③)を
行っており問題があることがわかります。

現場監督者は、事務所係員からの追加指示(⑦)に基づいて、側バリと軸ばね座の
隙間を厚み0.5mmのゲージで確認するよう口頭で指示を行っています(⑧)。
また追加作業指示書では、グラインダー仕上げは行ってはならないと記載されて
いるにもかかわらず、そのことは作業者へ伝えませんでした。

この作業ミスの問題は、単に作業現場の問題として捉えるだけではなく、現場を
含む台車メーカーの組織の問題、協力工場管理の問題が潜んでいると考えられます。

台車は700系からN700系に切り替わった際に、側バリのプレス加工メーカーおよび
工法の変更(熱間プレス→冷間プレス)を行っています。

しかし、その情報は台車メーカーの関係者の間で情報共有がされていません。4M
変更に伴う初期ロットでの確認が不十分であった上に、現場監督者は、過去の700系
の経験から思い込みが強く働いていたこともあり、根本的な要因や対策を検討せず
に現場の判断で作業が進められてしまったのです。

以上、事実関係を整理すると、様々な問題が潜んでいることがわかります。

1.現場の作業管理の問題
2.新製品の立ち上げ上の問題
3.4M変更管理の問題
4.リスク評価の問題
5.設計FMEA/工程FMEAの問題

次回へ続く
 (リスク評価、FMEAの問題について)
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 ★2017年に発生した新幹線のぞみの台車亀裂事故の原因は何だったのでしょうか?
  直接の原因は、台車製造メーカーの製造ミスによるものですが、FMEAを
  正しく実施していれば防ぐことが可能だったでしょうか?
   ・安全性設計の考え方が末端の作業者に伝わらなかった
   ・現場監督者が、現場や製品をよく確認しなかった
   ・指示書通りに溶接を行おうとしたがうまくできなかった
  様々な現場の問題が浮かびあがってきますが、設計には全く問題はなかった
  のでしょうか?皆さんと一緒に検証してみたいと思います。
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